お盆や夏休みの帰省で久しぶりに実家に帰り、「親も年を取ったな」「そろそろ実家の片付けを考えたほうがいいのかもしれない」と感じた方は少なくないでしょう。

総務省統計局の最新調査によると、世帯主が65歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄額は2564万円(中央値1777万円)にのぼり、実に36.3%が2500万円以上の貯蓄を保有しています。

しかし、その大切な資産を「どこに何があるか」家族が把握できているかは別問題です。子世代の41.4%が、親の入院や介護、相続の際に重要書類の保管場所が分からず困った経験を持っています。

9月1日の「防災の日」を控えるこの時期、終活や生前整理という重い言葉ではなく、「命と資産を守る防災」という前向きな切り口から、親子で実家の書類整理を進める具体的なステップを紹介します。

ココがポイント
  • 65歳以上世帯の36.3%が貯蓄2500万円以上を保有するが、子世代の41.4%は重要書類の保管場所が分からず困った経験あり。

  • 高齢者の24.4%が実家の防災・防犯に不安を感じるが、65〜69歳男性の28.2%は災害への備えを「特に何もしていない」。

  • 耐火金庫に書類を一元化する「置いてく防災」が、命を守る避難と将来の住み替え準備を同時に支える。

1. 高齢世帯の36.3%が貯蓄2500万円以上、それでも家族の41.4%が「保管場所が分からず困った」

まず認識すべきは、親世代の経済的な実態です。

総務省統計局が公表した「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」によると、世帯主が65歳以上の二人以上世帯における1世帯当たりの貯蓄状況は次の通りです。

65歳以上世帯の貯蓄額と2500万円以上世帯の割合1/3

65歳以上世帯の貯蓄額と2500万円以上世帯の割合

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」をもとにLIMO編集部作成

  • 平均貯蓄額:2564万円(中央値1777万円)
  • 貯蓄2500万円以上の世帯の割合:全体の36.3%(およそ3世帯に1世帯)

親世代は比較的豊かな資産を保有していますが、その管理体制には大きな死角があります。

マスターロック・セントリー日本株式会社が実施した調査(2026年8月公表、親と離れて暮らす親世代・子世代各174名を対象)によると、貴重品の保管状況は次のように分かれています。

  • 「複数の場所に分けて保管している」:48.9%(半数近くが分散保管)
  • 「一カ所にまとめて保管している」:30.5%

良かれと思って行う「分散保管」が、実は大きなリスクを生んでいます。

子世代の41.4%が、親の急な入院や介護、あるいは相続の際に「重要書類や情報の保管場所が分からず困った」と回答しました。

せっかくの資産も、必要な時に見つからなければ、家族が手続きを進められず途方に暮れることになってしまいます。

2. 実家の防災不安24.4%、老朽化29.5%——それでも動けない高齢者たち

資産だけでなく、「実家そのもの」の物理的な危険性も見過ごせません。

内閣府の「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」によれば、高齢者が感じる住まいの問題点(複数回答)は次の順となっています。

現在の住まいの問題点2/3

現在の住まいの問題点

出所:内閣府「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」をもとにLIMO編集部作成

  • 「住まいが古くなり、いたんでいる」:29.5%
  • 「地震、風水害、火災などの防災面や防犯面で不安がある」:24.4%(約4分の1が防災・防犯に不安)
  • 「断熱性や省エネ性能が不十分」:16.9%
  • 「家賃、税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」:15.5%
  • 「段差や階段等があり使いにくい」:12.7%

それにもかかわらず、災害への備えについては、65〜69歳の男性で28.2%、85歳以上でも28.0%が「特に何もしていない」と回答しており、高齢になるほど対策が後回しになっている実態が浮き彫りになっています。

2.1 住み替えをめぐる「世代間ギャップ」

防災面への不安から、高齢期を見据えて住み替えを検討する親世代も少なくありません。株式会社オースタンスの調査(2026年8月公表)では、住み替え検討層の53.8%が「将来の自分に合った生活に早めに慣れておきたい」という前向きな理由に賛同しています。

しかし、将来希望する住まいの形には、親子のライフステージの違いによる意識のズレが見られます。

  • 50代(子世代)が自身の将来に想定する住まい:「一般的なマンションや戸建て住宅」29.6%
  • 70代以上(親世代)が自身に希望する住まい:「サ高住や有料老人ホームなどのシニア系住まい」66.2%

このズレは、子が「親はまだ元気だから今の家で暮らせるだろう」と考える一方で、親自身はより現実的に介護や介助を見据えている可能性を示しています。

いずれ施設へ移り住むのであれば、古い家に耐火金庫を置く必要はないのでは、と思う方もいるかもしれません。しかし、それは逆です。

将来シニア向け住宅への契約や転居をスムーズに進めるには、親自身が「どの銀行にいくらあり、年金や保険がどうなっているか」を完全に把握していることが大前提です。

今のうちから最重要書類を一元化しておくことは、将来の住み替え手続きを滞りなく進めるための準備でもあるのです。

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

働き盛りの時に選んだマイホームは、バリアフリーを意識していないケースも多いでしょう。

床に段差がなくても、車いすが入れない、廊下が狭く歩行器で歩きにくいといった問題は、いざその場面になってから気づくことが多いのが実情です。

総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、65歳以上の世帯員がいる住宅のうち「一定のバリアフリー化」がされているのは45.4%、浴室やトイレなどまで含む「高度のバリアフリー化」は10.0%にとどまります。

2018年の調査からそれぞれ改善は見られるものの、半数以上の高齢世帯が十分なバリアフリー対応を欠いているのが実態です。

元気なうちには気づきにくいこの現実を、親がまだ健康なうちに親子で点検し、将来の暮らしやすさについて話し合っておくことが大切です。書類整理という小さな一歩は、こうした対話を始めるきっかけにもなります。