新入社員研修は多くの会社にありますが、管理職になったときに研修を受けたという話は、あまり聞きません。実際のところ、企業はどの層にどれだけ研修を実施しているのでしょうか。

厚生労働省は毎年「能力開発基本調査」を実施しており、令和7年度の結果が2026年7月に公表されました。ここには、企業と事業所が実際に行った教育訓練の内訳が集計されています。

管理職層に研修を実施した事業所は49.0%で、新入社員向けの58.7%、中堅社員向けの57.4%を下回りました。一方、今後実施したい内容としては「マネジメント」が最も多く挙がっています。

この記事の3つのポイント
  • 管理職層に研修を実施した事業所は49.0%で、新入社員向けの58.7%を9.7ポイント下回りました。
  • 今後実施したい研修の内容は「マネジメント」が35.5%で最も多く、上位3つを管理職・中堅層向けが占めています。
  • 研修にかけた費用は労働者一人当たり2.0万円で、前回の1.5万円から0.5万円増えました。

1. 統計では、研修は「OFF-JT」として数えられています

能力開発基本調査でいうOFF-JTとは、業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練を指します。社内で人を集めて行う集合研修も、社外の教育訓練機関に社員を派遣する形も、どちらも含まれます。

この記事で「研修」と呼んでいるのは、このOFF-JTのことです。日常の仕事のなかで指導する計画的なOJTは別に集計されており、ここでは扱いません。

令和7年度調査によると、正社員または正社員以外に対してOFF-JTを実施した事業所は72.6%でした。実施していない事業所は27.4%です。

2. 管理職層に研修を実施した事業所は49.0%

【図表1】職層等別にみた、研修(OFF-JT)を実施した事業所の割合1/2

【図表1】職層等別にみた、研修(OFF-JT)を実施した事業所の割合

各種資料をもとにLIMO編集部作成

OFF-JTを実施した対象を職層等別にみると、正社員では新入社員が58.7%、中堅社員が57.4%、管理職層が49.0%でした。正社員以外は30.7%です。いずれも全事業所に対する割合で、複数回答のため合計は100%になりません。

管理職層は、新入社員より9.7ポイント、中堅社員より8.4ポイント低くなっています。おおよそ2社に1社という水準です。

研修を受ける機会は、職層が上がるほど増えるわけではないことが読み取れます。

3. 今後実施したい研修は「マネジメント」が最多

【図表2】実施した研修の内容と、今後実施したい研修の内容2/2

【図表2】実施した研修の内容と、今後実施したい研修の内容

各種資料をもとにLIMO編集部作成

OFF-JTを実施した事業所について、その内容をみると「新規採用者など初任層を対象とする研修」が75.7%で最も多く、「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」が49.3%、「マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)」が46.9%と続きます。

ここで目を引くのが「新たに管理職となった者を対象とする研修」で、44.3%でした。「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」の46.6%を下回っています。

一方、今後実施したい内容では並びが変わります。「マネジメント」が35.5%で最も多く、「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」35.2%、「新たに管理職となった者を対象とする研修」35.1%が続き、上位3つを管理職・中堅層向けが占めました。初任層向けは30.9%です。

ただし、この2つは別々の設問です。同じ事業所で実施が増えた、減ったという読み方はできません。

4. 研修にかけた費用は労働者一人当たり2.0万円

企業調査では、OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額は2.0万円でした。前回の1.5万円から0.5万円増えています。

ただしこれは、令和6年度の1年間に費用を支出した企業の平均額です。教育訓練費用を支出した企業そのものは54.4%で、支出のなかった企業は含まれていません。

また、実施したOFF-JTの教育訓練機関をみると「自社」が76.4%で最も多く、「民間教育訓練機関」は41.4%でした。多くは社内で行われています。

労働者一人当たり2.0万円という数字を見て、多いのか少ないのかを判断する前に、まず確かめたのは、これが何の平均なのかということでした。

資料には、費用を支出した企業の平均額だと書かれています。教育訓練費用を支出した企業は54.4%ですから、支出のなかった企業まで含めて計算すれば、平均はこれより下がることになります。世の中全体の水準をそのまま表した数字ではないわけです。

同じことは実施率の側にも言えそうです。この調査で分かるのは、実施したかどうかまでです。一人あたり何回受けたのか、1回が半日だったのか2日間だったのかまでは、事業所の集計からは追えません。半日の研修も2日間の研修も、実施した1件として同じように数えられます。

金額が上がったこと自体は事実ですが、その中身がどう変わったのかまでは、別の数字を見ないと分からないところがあります。

中沢 新

5. 企業規模で32.4ポイントの差があります

正社員に対してOFF-JTを実施した事業所の割合を企業規模別にみると、30〜49人が53.0%、50〜99人が65.5%、100〜299人が79.6%、300〜999人が85.2%、1,000人以上が85.4%でした。

最も小さい30〜49人と、1,000人以上との差は32.4ポイントです。規模が大きくなるほど割合が高くなる形がはっきり出ています。

研修を受けられるかどうかは、本人の意欲より先に、勤め先の規模によって決まっている面があるといえそうです。

6. 受講者の96.0%が「役に立った」と答えています

個人調査では、令和6年度にOFF-JTを受講した労働者は全体で37.3%、正社員では44.5%でした。そのうち、受講したOFF-JTが役に立ったとした人は96.0%にのぼります。

役に立ったとした人にその内容を聞くと、正社員では「現在の仕事の幅が広がった」が50.1%で最も多く、「仕事に対するモチベーションが向上した」38.8%、「現在の仕事の課題が解決できた」32.9%と続きます。

一方で「賃金(賞与・給与)の引上げにつながった」は3.5%、「役職等の昇進・昇格につながった」は3.1%にとどまりました。役に立ったという実感は、処遇そのものではなく、目の前の仕事の変化に向けられているようです。

7. 8割の事業所が人材育成に問題を抱えています

能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとした事業所は80.1%でした。

問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」が59.5%で最も多く、「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%と続きます。

指導する側にあたるのは、多くの場合は管理職です。その管理職自身が研修を受けた事業所は49.0%にとどまっているという構図になります。なお、強いストレスを感じている40代では、昇進・昇格などの役割の変化を要因に挙げた人が22.6%と、全年代で最も高くなっています。

仕事に強いストレスを感じる人は67.5%。最多は「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%、40代は「昇進・昇格」が22.6%
仕事に強いストレスを感じる人は67.5%。最多は「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%、40代は「昇進・昇格」が22.6%

8. まとめにかえて

企業が実際に行っている研修を、統計の側から見てきました。

  • 管理職層に研修を実施した事業所は49.0%で、新入社員向けの58.7%を下回りました
  • 今後実施したい内容は「マネジメント」35.5%が最多で、上位3つを管理職・中堅層向けが占めます
  • 研修費用は労働者一人当たり2.0万円。ただし費用を支出した企業の平均額です
  • 企業規模30〜49人と1,000人以上では、実施率に32.4ポイントの差があります

実施済みの内容では初任層向けが突出し、今後実施したい内容では管理職・中堅層向けが上位に並びます。研修の重心が動こうとしている一方で、実際に管理職層まで届いている事業所は半数弱にとどまっています。

ここで挙げたのは全国の集計値であり、業種や規模によって実態は変わります。自社の制度がどうなっているかは、勤務先の人事部門や就業規則で確認してください。

9. 【執筆者コメント】「役に立った」の中身

受講した研修が役に立ったとした人が96.0%という数字は、最初は高すぎるように感じました。ところが内訳を見ると、納得できるところがあります。

最も多いのは「現在の仕事の幅が広がった」で50.1%。一方で「賃金の引上げにつながった」は3.5%、「役職等の昇進・昇格につながった」は3.1%にとどまります。役に立ったかどうかは、処遇ではなく、目の前の仕事が動いたかどうかで判断されているように読めます。

管理職として働いている立場からすると、この結果はむしろ自然なのかもしれません。研修を受けたから昇進する、という筋道のほうが、実務からは遠い気がします。

もっとも、そう言いながら、自分が最後に受けた研修で何を持ち帰ったのかを思い出そうとすると、内容よりも先に、配られた資料をどこに置いたのかのほうが浮かびます。

参考資料

中沢 新