3. 取り崩し方法は「定額」と「定率」で性質が異なる

資産の取り崩し方には、大きく分けて毎回一定の金額を取り崩す「定額取り崩し」と、資産残高に対して一定の割合を取り崩す「定率取り崩し」があります。それぞれの特徴を理解したうえで選ぶことが大切です。

定額取り崩しは、毎回の受取額が一定であるため、生活費の見通しを立てやすいというメリットがあります。一方で、相場が悪化して資産の評価額が下がっている局面でも同じ金額を取り崩すため、資産が目減りするペースが速まりやすいというデメリットがあります。先ほどのケースA・ケースBはいずれもこの定額取り崩しにあたります。

これに対して定率取り崩しは、資産残高に対して一定の割合(たとえば4%)を取り崩す方法です。資産が減れば取り崩す金額も自動的に減るため、資産そのものが完全に尽きるリスクを小さくできるという特徴があります。実際に、2000万円を年率3%で運用しながら毎年4%を定率で取り崩した場合の試算が下記です。

定率4%で取り崩す場合の資産残高と取り崩し額の推移2/2

定率4%で取り崩す場合の資産残高と取り崩し額の推移

出所:金融庁のNISA制度概要をもとにLIMO編集部試算

このケースでは、20年後(90歳時点)でも資産は1597万円残っており、資産そのものが尽きることはありません。ただし、初年度に82万円だった年間の取り崩し額は、20年後には67万円まで徐々に減っていきます。つまり、定率取り崩しは「資産が尽きにくい」という安心感がある一方で、「毎年受け取れる金額が少しずつ減っていく」という別の側面も持っていることを理解しておく必要があります。

和田 直子

「資産が尽きないから定率取り崩しの方が安心」と単純に言い切れるわけではありません。定額の方が毎月の生活設計は立てやすいですし、定率は受け取る金額が変動するという別のストレスもあります。

どちらか一方に決め切るのではなく、生活費の中で必ず必要な部分は定額で、余裕があれば使いたい部分は定率で、といったように組み合わせて取り崩す方法を検討している方もいらっしゃいます。

4. 70歳代からの新NISAとの付き合い方を考えるポイント

ここまでの内容を踏まえると、70歳代で新NISAを続けるかどうか、取り崩しをどう組み合わせるかを考える際には、次のような点を確認しておくとよいでしょう。

まず、生活費のうちどれくらいを年金収入でまかなえていて、不足分がどの程度あるのかを把握することが出発点になります。そのうえで、当面(5年〜10年程度)使う予定のない資金であれば運用を続ける余地がありますが、近い将来に使う予定が決まっている資金は、値動きのリスクを避けるために現金化しておく方が安心です。また、運用を続ける場合も、相場の下落局面が資産の寿命に与える影響は小さくないため、下落時にどこまで耐えられるかという心理的な許容度も考えておきたいところです。

新NISAを続けるべきか、取り崩しをどう組み合わせるべきかについて、絶対的な正解はありません。ご自身の資産状況や健康状態、家族構成によって最適な組み合わせは変わってくるため、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなど専門家にも相談しながら、無理のない資金計画を立てることをおすすめします。

5. まとめ

新NISAは非課税保有期間が無期限のため、70歳代になったからといって慌てて資産を現金化する必要はありません。

2000万円を年120万円ずつ取り崩す試算では、運用を続けた場合の方が資産の寿命は延びる結果になりましたが、これは一定の運用成果を仮定した試算であり、将来を保証するものではありません。定額取り崩しは生活費の見通しを立てやすい一方で資産が尽きるリスクがあり、定率取り崩しは資産が尽きにくい一方で受け取る金額が徐々に減っていくという、それぞれ異なる特徴があります。

ご自身の年金収入や資産状況を踏まえ、必要に応じて専門家にも相談しながら、無理のない取り崩し方法を検討していただければと思います。

参考資料

LIMO編集部NISA解説班