2027年3月期1Qの大幅増益は、どの部門から来たのか
2027年3月期1Qの数字は、直近の各期と比べても際立って大きい。
売上高は2,533億円で前年同期比+58.2%、営業利益は247億円で+281.0%、経常利益は325億円で+277.5%、親会社株主に帰属する純利益は234億円で+266.4%となった。
会社は、金属価格と為替の相場好転を背景に製錬部門を中心として大幅増益になったと説明している。需要面は概ね想定通りに推移したため、2027年3月期の通期予想は据え置いた。
部門別に見ると、伸びの偏りがはっきりする。製錬部門は売上高1,257億円で+69.4%、営業利益156億円で+697.1%、経常利益228億円で+527.7%である。
会社によると、貴金属銅事業で金や銀の平均価格が上昇して売上が増え、四半期末にかけて銀価格が下落したことに伴うヘッジ取引評価益も計上した。営業外損益では、海外亜鉛鉱山の持分法投資利益が金属価格の上昇とティサパ鉱山の生産回復により増加している。持分法投資利益は62億円で、前年同期の16億円から4倍近くに膨らんだ。
一方の環境・リサイクル部門は、売上高652億円で+33.1%、営業利益43億円で+9.1%、経常利益40億円で+12.4%と、伸び方が製錬とはまるで違う。相場で跳ねる部門と、処理量で積み上げる部門の性格差がそのまま出ている。
電子材料部門も動いた。売上高520億円で+129.7%、営業損益は前年同期の▲9億円から15億円へ転じている。会社はウエアラブル機器向けの近赤外LEDや受光素子の販売増、太陽光パネル向け銀粉の販売量回復、データ保存用テープ向け磁性粉の販売増を挙げている。
通期予想に対する進捗率は、営業利益で47%、経常利益と純利益ではともに41%になる。1Qとしては速いペースだが、会社は予想を動かしていない。
営業利益率は業種中央値以下、ROEは中央値超という組み合わせ
この会社を業種の中に置いてみると、少し妙な組み合わせが出てくる。
2026年3月期の営業利益率は4.6%で、非鉄金属の中央値6.5%を下回る。ここだけを見れば、業種の平均像に届かない収益性ということになる。
ところが純利益率は8.4%あり、中央値4.3%の倍近い。ROE(自己資本利益率)は14.6%で、中央値9.0%を大きく上回っている。
なぜ営業段階で負けて、最終段階で勝つのか。答えは営業利益の下にある。
2026年3月期の営業外収益は242億円あり、その中身は持分法投資利益や受取配当金が中心である。さらに特別利益が295億円積み上がり、税金等調整前当期純利益は781億円となった。営業利益341億円の2倍を超える。
会社は、経常利益が海外亜鉛鉱山の運営会社等の持分法利益の増加などにより+24.6%となり、純利益は4Q単体で投資有価証券売却益を計上したことなどにより+130.2%になったとしている。
非鉄金属は装置産業であり、本業の利益率が勝負を決めるという見方が一般的だ。だがこの会社の場合、鉱山への出資と保有資産が営業利益の下で毎期きちんと働いている。損益計算書のどの段階を見るかで、評価がまるで変わる会社である。
還元も薄くはない。2026年3月期の配当は1株368円、配当性向は35.1%、DOE(純資産配当率)は4.8%で、業種の中央値3.2%を上回っている。自己資本比率57.3%も中央値53.3%より厚い。
筆者コメント
回収の仕組みと、鉱山への出資。この二つを同時に見ると、この会社の設計思想が見えてくる。
どちらも、本業の製錬所へ原料と収益を運び込む装置である。片方は社会から集め、片方は地面から掘る。入口を二つ持つことで、どちらかが細っても製錬所は止まらない。
利益の出方も同じ構図になっている。営業段階では回収と加工が稼ぎ、営業外では出資先が稼ぐ。営業利益率だけで収益力を判定すると、後者を丸ごと見落とすことになる。
もっとも、この設計には代償もある。持分法や有価証券に依存する利益は、事業の巧拙よりも相場と会計処理のタイミングに揺さぶられやすい。実際、直近の純利益の伸びには売却益が効いている。
だから私は、この会社を見るときに営業利益と経常利益を必ず並べて置くことにしている。片方だけでは、循環という仕組みがどこまで利益として定着したのかが見えてこない。
参考資料
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石津 大希