株価が下がったから会社の稼ぐ力が落ちた、とは限らない。逆もまた同じだ。トヨタ自動車<7203>の株価は2026年2月末に高い水準をつけたあと、6月末にかけて大きく沈んだ。この間、同社の資本効率は本当に悪化したのか。株価とは別の物差しを当てると、違う輪郭が出てくる。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
1. 2026年2月末の3,800円台から6月末の2,700円台へ、株価が描いた往復
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出所:各種資料をもとに筆者作成
2025年9月末の終値は2,800円台だった。そこから秋にかけて水準を切り上げ、10月末から12月末は3,100円台から3,300円台で推移している。
年が明けると上げの角度が増した。2026年1月末は3,500円台、2月末には3,800円台に乗せている。2025年9月末以降の月末終値では、この2月末が最も高い水準だ。
ところが、そこからの下げは速かった。3月末は3,100円台、4月末は3,000円台へ落ち、5月末もほぼ横ばい圏にとどまる。6月末には2,700円台まで沈み、2月末からの下げ幅は3割近くに達した。
その後は7月末に3,000円台へ戻し、2026年8月時点の直近終値も3,000円台にある。昨秋の出発点は上回るが、2月末の水準はまだ取り返せていない。
ボラティリティ(株価の振れ幅の大きさ)は明らかに高い。もっとも、この往復を決算だけで説明しようとすると無理が出る。相場全体の地合いや為替の見方が意識された可能性もあり、単一の材料には還元できない。
2. 台数は増えたのに利益は削られた2026年3月期
2026年3月期の営業収益は50兆6,849億円で前期比+5.5%。一方、営業利益は3兆7,662億円で▲21.5%、当期利益(IFRS)は3兆8,480億円で▲19.2%となった。典型的な増収減益である。
売れていないわけではない。連結販売台数は959万5千台と前期から2.5%増えている。ではなぜ利益が削られたのか。
会社によると、営業利益の主な増減要因は、営業面の努力が+7,100億円、為替変動の影響が▲1,950億円、原価改善の努力が▲1,200億円、そして諸経費の増減・低減努力が▲2兆300億円だった。
諸経費の一項目だけで、営業利益の減少額そのものを上回る。増収と営業面の努力で積み上げた分を、費用の増加が飲み込んだ姿だと読める。
もっとも、資金の入りまで細ったわけではない。2026年3月期の営業キャッシュ・フローは5兆4,729億円で、前期の3兆6,969億円から大きく積み上がった。
会計上の減益と、実際に手元へ入る現金の動きは必ずしも同じ方向を向かない。資本効率を考えるうえでは、この二つを重ねて見ておく必要がある。
3. 営業段階は減益、最終段階は+75.6%という2027年3月期1Qのねじれ
2027年3月期1Qになると、絵柄が変わる。営業収益は13兆5,254億円で+10.4%、営業利益は1兆634億円で▲8.8%。ところが親会社の所有者に帰属する四半期利益は1兆4,770億円と+75.6%まで伸びた。
営業段階では減益なのに、最終段階では大幅増益。この落差はどこから来ているのか。
営業利益の増減要因として会社が挙げるのは、為替変動の影響+3,450億円と、諸経費の増減・低減努力▲1,900億円などだ。事業別では自動車事業の営業利益が7,199億円で▲21.0%、金融事業が2,756億円で+24.0%。金融の増益は融資残高が増えたことなどによるという。
最終利益の伸びは、本業の外側で起きている。営業利益と当期利益が逆方向に動く期の数字は、そのまま資本効率の指標にも流れ込む。ここは押さえておきたい。
なお通期予想は営業収益54兆円、営業利益3兆4,000億円で▲9.7%、当期利益3兆2,500億円で▲15.5%。会社計画は減益を織り込んだままだ。