社名から連想するのは、たいてい金属の塊のほうだろう。私もDOWAホールディングス(5714)を、亜鉛や銅を精錬して売る会社として理解していた。鉱山があり、製錬所があり、地金が出てくる。だが2026年3月期のセグメント情報を開くと、その絵は半分しか合っていない。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

ココがポイント
  • ①2026年3月期の環境・リサイクル部門は、売上構成比14.9%で部門経常利益の3割強を稼いだ
  • ②同部門の売上の半分以上はグループ外に出ず、自社の製錬所へ原料として渡っている
  • ③2027年3月期1Qは経常利益が前年同期比+277.5%となり、通期予想は据え置かれた

売上構成比15%の部門が、利益の3割を稼いでいる

DOWAホールディングスの業種区分は非鉄金属である。ラベルとしては何も間違っていない。

同社の報告セグメントは、製錬、金属加工、環境・リサイクル、電子材料、熱処理の5つで構成される。名前の並びを見ても、やはり金属の会社に見える。

ところが2026年3月期の数字を部門ごとに置き直すと、印象が変わる。環境・リサイクル部門の外部顧客への売上高は1,111億円で、連結売上高7,454億円に対する構成比は14.9%にとどまる。

それなのに経常利益は165億円あり、その他を含めた部門経常利益の合計507億円の3割強を占めている。売上で15%の部門が、利益では3割を担っている計算だ。

比較のために並べると、製錬部門は外部売上3,521億円で経常利益196億円、金属加工部門は外部売上1,472億円で経常利益97億円である。売上の規模でいえば環境・リサイクルは3番手だが、利益では2番手に立っている。

廃棄物を受け入れ、使用済みの電子機器や自動車の排ガス浄化触媒から金属を取り戻す。この地味に見える工程が、いま同社の利益の柱の一つになっている。

回収した原料の行き先は、自社の製錬所だった

もう一歩踏み込むと、この部門の位置づけがはっきりする。

環境・リサイクル部門の売上には、外部顧客への1,111億円のほかに、グループ内の他部門へ渡したセグメント間の内部売上高が1,160億円ある。合計2,271億円のうち、半分以上がグループの外へ出ていない。

行き先は、同社の製錬所である。

会社の説明によると、2027年3月期1Qのリサイクル事業では家電リサイクルの処理量が増え、グループ製錬所向けのリサイクル原料の集荷量も増加した。製錬部門の側でも、PGM(白金族金属)事業で使用済み自動車排ガス浄化触媒の集荷量が増えたとしている。

環境・リサイクル部門が集めた廃棄物や使用済み機器が、製錬部門の原料になる。鉱石を掘って製錬するのではなく、社会に出回った製品を回収して製錬する。その流れが金額として計上され、部門の間を行き来しているわけだ。

中期計画2027で会社が掲げるテーマは「循環のクオリティを追求する。」である。基本戦略には「価値の創出」と並んで「変動の抑制・期待の醸成」が置かれている。資源価格に振られる商売の弱点を、回収という仕組みで抑えにいく意思として読み取れる。

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出所:DOWAホールディングス株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:DOWAホールディングス株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

部門別の経常利益を並べると、2026年3月期は製錬が196億円で最大、次が環境・リサイクルの165億円、金属加工97億円、熱処理27億円、電子材料11億円と続く。

利益の1位と2位を、鉱石と廃棄物という正反対の入口を持つ2部門が占めている。しかもこの2つは社内で競合していない。片方の出口が、もう片方の入口になっているからだ。

非鉄金属メーカーというラベルは正しい。ただ、金属をどこから調達しているかという一点で、この会社は同じラベルの他社とかなり違う場所に立っている。

1カ月で3割上げた株価と、11倍に届かないPER

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価は、この1カ月で大きく水準を切り上げた。

2026年7月30日の終値7,990円が、この期間で最も低い水準だった。そこから8月にかけてほぼ一本調子で上昇し、8月26日には10,450円と期間中で最も高い終値をつけている。

8月28日の終値は10,395円。7月30日からは3割の上昇である。前日の10,385円からは+0.1%と、この日の動き自体はほぼ横ばいだった。

途中には段差もあった。8月19日の9,266円から8月21日の10,120円まで、2営業日で1割近く水準を戻している。

背景を一つに絞ることはできない。ただ、2027年3月期1Qの経常利益が前年同期比+277.5%と大きく伸びたこと、そして会社の説明にあるとおり金や銀、白金族金属といった貴金属の平均価格が上昇したことが意識された可能性は高い。貴金属相場に連動しやすい銘柄として買われた面はあるだろう。

一方で、バリュエーションは高い位置にない。8月28日時点のPER(株価収益率)は10.79倍、PBR(株価純資産倍率)は1.34倍である。株価が3割上げたあとでも、PERは11倍に届いていない。

利益の伸びが株価の上げに追いついている、あるいは追い越しているということでもある。

筆者コメント

部門別の数字を眺めると、この会社が原料の入口を二つ持っていることが見えてくる。

鉱山から来る原料と、社会から戻ってくる原料。前者は資源価格と鉱山の稼働に左右され、後者は廃棄物の排出量と回収網に左右される。二つの入口は、動く理由がそもそも違う。

理由が違うということは、同時には細りにくいということでもある。金属価格が下がる局面でも廃棄物は出続けるし、家電も自動車も更新されていく。

この構造は、貴金属相場が上がった局面ではかえって見えにくくなる。相場で伸びた製錬部門の数字が大きすぎて、回収の側の安定感が霞んでしまうからだ。

だが相場が反転したとき、株主が確かめることになるのは、おそらく製錬の利益率ではなく、環境・リサイクル部門がどれだけ利益を残せているかのほうだろう。上げ相場の最中にこそ、この部門の数字を控えておくことをおすすめしたい。