4. 【元銀行員の視点】給付付き税額控除の受け取りは、振込先の口座情報が要になる

ここからは、銀行にいた頃の経験を踏まえて、基本方針の記述を読み解いていきます。

基本方針には、公金受取口座について「現状5割程度にとどまる登録率の向上を国として強力に推進し、本制度の受給に際してその利用を原則としていく」と書かれています。

口座情報の正確性の確保などの機能強化にも、継続的に取り組むとされています。

振込先の口座情報は、思っているよりも古くなりやすいものです。

結婚などで名字が変わったまま届出をしていない、支店の統合で店番号が変わっている、長く動かしていない口座がそのままになっている、といったことが起こります。

名義や口座番号が一致しないと振込ができず、確認のやりとりが発生します。受け取る側にとっては、その分だけ入金が遅れることになります。

普段使っている口座の名義や住所が最新のものになっているかを確かめておくと、制度が動き出したときに慌てずに済みます。

5. 【将来の課題】給付付き税額控除と、預金の利子所得をどう扱うか

基本方針の後半には、預金に関わる記述もあります。

将来的な方向性として、金融所得については、医療保険における金融所得の勘案に向けた取組が進んでいることも踏まえ、制度を精緻化する中で対応するとされています。

そのうえで、預金の利子所得も本来は検討すべき所得に含まれると考え、制度を段階的に精緻化していく中で勘案できるよう、遠くない将来の課題として検討していくと書かれています。

資産保有による経済力を勘案することも、将来の課題として挙げられました。

預貯金の利子は、受け取るときに20.315%が源泉徴収される源泉分離課税です。ほかの所得と合算されないため、確定申告の場面にも表れません。

金利が上がって受け取る利子の額が増えている今、こうした所得をどう扱うのかが論点になっている、という流れです。

ただし、これはあくまで将来の検討課題として書かれているもので、令和11年度の導入時点の仕組みではありません。

6. 【落とし穴】給付付き税額控除の給付額も対象ラインも、まだ決まっていない

ここまで読むと、いくら受け取れるのかが気になるところです。

基本方針では、給付に係る閾値となる所得水準も給付額も、恒久財源の確保と併せて検討するとされており、具体的な数字は示されていません。

制度の執行についても、国と地方の役割分担を検討する段階です。方針の決定後に国と地方の間で丁寧な協議を行ったうえで、制度導入のために必要な法制上の措置を可及的速やかに講ずるとされています。

つまり現時点では、申請の受付が始まっている制度ではありません。手続きの方法や必要な書類も、これから決まっていきます。

税制や給付の制度は、法案の内容や国会での審議によって変わることがあります。確定した内容は、内閣官房や財務省が公表する最新の資料で確認してください。

7. 給付付き税額控除で今できるのは、自分の所得と口座を確かめておくこと

給付付き税額控除の制度導入の基本方針は令和8年8月5日に閣議決定され、本格導入は令和11年度とされました。

対象は個人単位で単身者も含み、一定の勤労性の所得と税・社会保険料の負担がある人です。給付額は所得に応じて逓増し、その後は定額、一定額を超えると逓減します。

不安になる必要はありません。まずはご自身の所得の内訳と、給与や年金が振り込まれている口座の登録内容を確かめておくところから始めてみてください。

所得の区分や申告の要否で迷う場合は税務署に、口座の届出内容は取引先の金融機関の窓口に確認できます。制度そのものの最新情報は、内閣官房の公表資料で確かめるのが確実です。

参考資料

中本 智恵