5. 少ない年金をカバーする選択肢。受け取りを遅らせる「繰下げ受給」とは?

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繰下げ受給のイメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

ライフコースで受給額は変わりますが、受け取り開始を遅らせることでも年金額は増やせます。これを「繰下げ受給」といいます。

5.1 最大84%増(1カ月あたり0.7%)

65歳より遅らせると1カ月あたり0.7%ずつ増え、75歳まででは最大84.0%の増額です(昭和27年4月2日以後生まれ)。

5.2 注意したいポイント

加給年金・振替加算は繰下げの対象外で、待機している間は年金を受け取れません。長く待てるか、他の収入があるかも合わせて判断しましょう。

6. 年金額改定の疑問。なぜニュース通りの「1.9%増」にならない人がいるの?

「ニュースでは1.9%と言っていたのに、自分の年金はその通りに増えていない」——通知書を見て、そう感じた方もいるのではないでしょうか。計算を間違えられたのかと疑いたくなる場面です。

日本年金機構は、この点についてはっきり説明しています。直近の厚生年金被保険者期間の平均標準報酬額に乗じる再評価率が、他の被保険者期間にかかる再評価率と異なるなどの被保険者期間の有し方や、法律で定める年金額計算における端数処理により、前年度の年金額からの引上げ幅が国民年金(基礎年金)プラス1.9%、厚生年金(報酬比例部分)プラス2.0%とは異なる場合がある、としています。

理由は2つに整理できます。ひとつは再評価率です。加入していた期間ごとに用いる率が違うため、どの時期にどれだけ加入していたかによって、全体の伸び方が変わります。もうひとつは端数処理で、これは法律で定められた計算方法です。

裏を返せば、発表される改定率は「全体の目安」であって、一人ひとりの年金額の伸び率そのものではないということでしょう。加入の歴史が人それぞれである以上、増え方も人それぞれになります。

厚生労働省の資料では、令和8年度は物価変動率3.2%に対し名目手取り賃金変動率2.1%で、賃金変動率を用いて改定されました。ここからマクロ経済スライドの調整(国民年金0.2%、厚生年金0.1%)が差し引かれ、最終的な改定率が決まっています。

確かめ方は決まっています。率で計算するのではなく、年金額改定通知書と年金振込通知書に書かれた金額を見る。それがいちばん確かな自分の数字だと思います。

7. まとめ

ここまで、5つのライフコース別に年金の受給額のイメージを見てきました。

これまでの働き方や加入期間によって年金額に差が出るのは当然のことですが、今回ご紹介した金額はあくまで目安の一つに過ぎません。将来の生活設計を立てる上で最も大切なのは、「ご自身の場合」いくら受け取れるのかを正確に把握することです。

まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などを活用し、現時点での見込額を確認してみましょう。

もし想定より少ないと感じた場合でも、受け取り時期を遅らせる「繰下げ受給」などを含め、早めに対策を検討することで、自分に合った最適な年金の受け取り方を見つけることができるはずです。

8. 監修者からのコメント

熊谷 良子

老後のすべてを公的年金だけでカバーするのは簡単ではありません。

だからこそ、現役時代のうちに「自分が将来、実際にいくらもらえるのか」を正しく知ることが、安心な老後設計への確実な第一歩になります。

そのために最も手軽で重要なツールが、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」です。実は、年代によって見方が大きく異なります。

  • 50歳未満の方: 「これまでの加入実績(これまでに納めた分)」だけで計算されているため、額面が数万円程度と少なく見えて驚くかもしれません。しかし、これから働き続けることで将来もらえる額はどんどん増えていきますので、心配しなくて大丈夫です。
  • 50歳以上の方: 「今の働き方や年収のまま60歳まで会社員を続けた場合」の、より本番に近いリアルな受給見込額が記載されています。

スマートフォンのカメラで「ねんきん定期便」に付いているQRコードを読み取るだけで、わずか数秒で将来の受給額をグラフで試算できる「公的年金シミュレーター」も用意されています。

ぜひ一度、ハガキをお手元に用意して、ご自身の年金額を「見える化」することから始めてみましょう!

参考資料

池上 翠