3. 勤続5年以下だと計算が変わる

2分の1を掛ける計算は、誰にでも当てはまるわけではありません。

3.1 役員等で5年以下なら半分にならない

特定役員退職手当等とは、役員等としての勤続年数が5年以下である人が受け取る退職手当等のうち、その勤続年数に対応するものをいいます。この場合、課税退職所得金額は収入金額から退職所得控除額を引いた額そのままで、2分の1を掛けません。

短い在任期間で多額の退職金を受け取る形を想定した扱いです。役員として就任した年数が判定の基準になります。

3.2 役員以外でも300万円が境目になる

短期退職手当等は、役員等以外として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下の場合に対応するものです。収入金額から退職所得控除額を引いた額が300万円以下であれば2分の1を掛けますが、300万円を超える部分については2分の1を掛けません。

この短期退職手当等の扱いは、令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等について適用されています。転職して間もない時期に退職金を受け取る場合は、確認しておきたいところです。

4. 出しそびれても取り戻せる

申告書を出さなかった場合でも、そのまま終わりではありません。

4.1 確定申告で精算できる

国税庁は、申告書の提出を受けていない場合には、退職手当等の受給者本人が確定申告をして、提出を受けている場合と同様の計算を行い、所得税および復興特別所得税の精算をすることになると説明しています。

つまり、多く差し引かれた分は確定申告で戻ってくるということです。ただし、戻るのは翌年の申告のあとになりますので、その間は手元の資金が減った状態が続きます。

4.2 申告書は勤務先に提出する

「退職所得の受給に関する申告書」は、退職手当等を支払う勤務先に提出します。支払者が所定の要件を満たす場合には、電磁的方法により提供することもできます。

多くの勤務先では退職手続きの書類一式に含まれていますが、必ずそうとは限りません。退職の手続きを進めるなかで、この書類が入っているかを確かめておくと安心です。

5. 受け取ったあとに考えたいこと

あわせて押さえておきたい点を挙げておきます。

5.1 死亡退職のときは相続税の対象になる

死亡退職により支払う退職手当等で相続税の課税の対象となるものは、所得税の課税の対象とならないため、所得税および復興特別所得税の源泉徴収は必要ありません。本人が受け取る場合とは、税の種類そのものが変わります。

在職中に亡くなった場合の退職金は、遺族が受け取ることになります。どちらの扱いになるのかで手続きの先も変わりますので、勤務先に確認することになります。

5.2 使い道は手取りを確かめてから決める

退職金の使い道は、住宅ローンの返済や資産運用など、受け取る前から考えている方が多いところです。ただし、その計画の土台になるのは額面ではなく手取りの額です。

まずは源泉徴収票で、実際にいくら差し引かれたのかを確かめてみてください。金額や計算の内容に迷うときは、税務署や国税局電話相談センターに相談できます。

6. まとめにかえて

退職手当等の源泉徴収は、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかで計算が変わります。提出がない場合は、支給額に20.42%を掛けた額が源泉徴収されます。

国税庁の例では、支給額800万円・勤続11年の場合の源泉徴収税額は9万1890円ですが、申告書がないと163万3600円になります。退職所得控除は勤続年数20年を境に1年あたりの額が上がり、一般退職手当等であれば課税されるのは差額の半分です。

出しそびれた場合でも、本人が確定申告をすれば精算できます。まずは退職の書類にこの申告書が含まれているかを確かめ、分からない点は勤務先や税務署に確認してみてください。

参考資料