3. 半数以上が暮らし向きを「苦しい」と答えている
ここまでは金額の話でした。では実際に暮らしている方は、いまの生活をどう感じているのでしょうか。
3.1 「大変苦しい」と「やや苦しい」で52.1%
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の生活意識は「大変苦しい」21.0%、「やや苦しい」31.1%、「普通」41.7%、「ややゆとりがある」5.4%、「大変ゆとりがある」0.8%でした。
ここでいう高齢者世帯とは、65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の者が加わった世帯を指します。
「大変苦しい」と「やや苦しい」を合わせると52.1%です。半数以上の世帯が、日々の生活に経済的な厳しさを感じていることになります。
3.2 「ゆとりがある」はわずか6.2%
一方で「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と答えた世帯は、合計しても6.2%にとどまります。経済的な余裕を実感できている世帯はごく一部です。
その中間にあたるのが41.7%の「普通」層です。「苦しい」層には及ばないものの「ゆとりがある」層を大きく上回っており、余裕があるとは言えないまでも堅実に暮らす一定数の世帯が、厚い中間層をつくっている様子がうかがえます。
4. 貯蓄額と実感が結びつかない理由
平均2416万円という数字と、52.1%が「苦しい」と答えている実感。この2つが噛み合わないのには理由があります。
4.1 平均を押し上げているのは上位の4分の1
分布に戻ると、3000万円以上の世帯が25.2%います。平均はこの層に引っ張られて上がるため、真ん中あたりの世帯の実感とはずれます。
中央値の1178万円で毎月4万2434円を取り崩すと、単純計算で23年ほどです。数字の上では足りているように見えても、医療費や介護費、住宅の修繕といった想定外の支出が入れば計算は変わってきます。
4.2 同じ70歳代でも状況は大きく違う
貯蓄額は退職金や現役時代の収入履歴、相続、健康状態などによって大きく異なります。年金の受給額も、現役時代の加入状況によって個人差があります。
貯蓄が少ない世帯にとっては、年金収入だけで生活を維持するのが難しい場合もあります。平均額と自分の状況を比べるより、自分がどの層にいるかを分布のなかで確かめるほうが、次の手を考えやすくなります。
5. まとめにかえて
70歳代・二人以上世帯の貯蓄は平均2416万円、中央値1178万円でした。3000万円以上が25.2%いる一方、金融資産を持たない世帯も10.9%あり、世帯間の差が大きいことが分かります。
65歳以上の夫婦のみ無職世帯はひと月4万2434円の赤字で、年間およそ51万円を貯蓄から取り崩す計算です。そして高齢者世帯の52.1%が、いまの暮らし向きを「苦しい」と答えています。
老後の安定には、世帯の状況に応じた生活設計が欠かせません。健康なうちに短時間の就労で収入を得る、家計の固定費を見直すといった対策を、早めに検討しておくと安心につながります。
参考資料
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」
中本 智恵