4. 子どもに遺すのはアリ?「金アクセサリー相続」のリアル

現物の金を売らずに保有し続けた場合、次に考えておきたいのが相続の場面です。

4.1 現物相続の難しさ:「名義」がないため分けにくい

預貯金や有価証券と違い、金地金やアクセサリーには名義がありません。誰がどれだけ受け取るかを金額ベースで公平に分けにくく、思い出の品であることも重なって、相続人どうしのトラブルの種になりやすい財産のひとつです。

4.2 「現物ならバレない」は誤解、相続税の課税対象になる

金のアクセサリーや地金は、一般動産として相続税の課税対象になります。評価額は、原則として相続開始日(死亡日)における売買実例価額や、金販売業者の買取価格などをもとに算定されます。「価値の分かりにくいアクセサリーだから、申告しなくても分からないだろう」と考える方もいますが、これは誤解です。

なお、税務署への「支払調書」の提出義務があるのは、金地金・プラチナ地金・金貨・プラチナコインの売却や、純金積立の現金化など一部の品目に限られます。ネックレスや指輪といった貴金属ジュエリー・アクセサリーは、売却額が200万円を超えても、買取業者から支払調書が提出されることはありません。ただし、対象外だからといって申告義務がなくなるわけではなく、ジュエリーであっても売却益(利益)が年間50万円を超えれば、原則として総合課税の譲渡所得として確定申告が必要ですし、相続した財産としての申告義務も別途生じます。無申告のまま放置すれば、税務調査などをきっかけに把握され、追徴課税を受けるリスクがある点は品目にかかわらず変わりません。地金や金貨、純金積立で保有している分については、将来売却した際に支払調書を通じて税務署に把握される可能性がある点もあわせて押さえておきましょう。

4.3 生前整理という選択肢:贈与か、自身で使うか

相続時にトラブルになりやすい現物資産は、元気なうちに整理しておくのも賢い選択です。

ひとつは、年間110万円までの基礎控除(暦年課税)を活用し、少しずつ現金化して家族に贈与する方法です。ただし、亡くなる前の一定期間(最大7年間)に行われた贈与は相続財産に連動して課税対象となるルール(生前贈与加算)があるため、始めるなら「元気なうちの早めの着手」がカギとなります。

もうひとつは、無理に遺そうとせず、ご自身の旅費や医療費、セカンドライフを楽しむ費用として使ってしまう方法です。どちらが適しているかはご家庭の相続税リスクや状況によって異なるため、迷う場合は税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

和田 直子

「現物だから相続税の対象にならないのでは」と思う人は少なくないでしょう。実際には金地金やアクセサリーも立派な相続財産であり、評価額次第では申告漏れを指摘されるリスクもあります。金額が大きくなっている今だからこそ、売る・遺す・使うのいずれを選ぶにしても、一度ご自身の資産として棚卸ししてみることをおすすめします。

5. 賢いシニアの金の出口戦略

ここまでの内容を踏まえ、金の出口戦略として考えられる3つの選択肢を整理します。

5.1 選択肢1:売り切る

今の高値のうちに現金化し、老後資金に充てる方法です。年をまたいだ分割売却で税負担や保険料への影響を抑えられる一方、いったん売却すると、その後さらに金価格が上昇した場合の値上がり益は得られません。

5.2 選択肢2:所有し続ける

資産として保有を続ける方法です。将来的な値上がりも期待できますが、金そのものは配当や利息を生まない資産であり、保管や管理の手間、相場下落のリスクもあります。

5.3 選択肢3:子に譲る

生前贈与または相続によって次世代に引き継ぐ方法です。思い出の品を形として遺せる一方、現物ゆえの分けにくさや、評価額の申告漏れといったリスクには注意が必要です。

いずれの選択肢にも、メリットとデメリットの両方があります。金額が大きくなっている今だからこそ、税金・保険料・相続のそれぞれの観点から、ご自身やご家族にとって無理のない方法を選ぶことが大切です。

6. まとめ

金相場の高騰を受けて、タンスに眠っていたアクセサリーの価値はかつてないほど高まっています。

売却しても年金の支給額自体が減ることはありませんが、年間の譲渡益が50万円を超えると確定申告が必要になり、翌年の社会保険料や医療費の窓口負担割合に影響することがあります。また、現物・金CFD・金ETFなど保有形態によって税金の扱いは異なり、相続の場面でも金は立派な課税対象財産です。

売却や相続を検討する際は、この記事で紹介した内容を出発点としつつ、具体的な税額や保険料への影響については、税理士やお住まいの市区町村の窓口に確認することをおすすめします。

※本記事は2026年8月時点の税制・社会保険制度にもとづく一般的な内容であり、個別の税額・保険料を保証するものではありません。実際の申告や制度改正の適用時期については、税理士・社会保険労務士や税務署、お住まいの市区町村の窓口など、専門家・関連機関にご確認ください。

参考資料

和田 直子