4. まず情報通知書を取り寄せるところから

分割するかどうかを決める前に、材料を手に入れる手続きがあります。

4.1 2人そろって請求する必要はない

年金分割のための情報提供請求は、当事者2人が共同で行っても、どちらか一方が単独で行っても構いません。相手の協力が得られなくても、自分だけで記録を確認できます。

4.2 離婚前に1人で請求すれば、相手には交付されない

交付先は状況によって変わります。日本年金機構は、一方が単独で請求した場合、すでに離婚等をしているときは請求者と元配偶者のそれぞれに交付し、離婚等をしていないときは請求者のみに交付するとしています。

つまり、離婚前の段階で1人で請求すれば、相手にその事実が伝わることはありません。話を切り出す前に数字だけ把握しておきたい、という使い方ができます。

5. 分割で年金がどれくらい動くかを見積もる

情報通知書で記録が分かったら、次は金額の見当をつける段階です。

5.1 目安は報酬比例部分の計算式から出せる

老齢厚生年金の報酬比例部分は、平均標準報酬額に1000分の5.481を掛け、さらに加入月数を掛けて年額を出します。分割で動くのはこの平均標準報酬額と加入月数の元になる記録です。

たとえば、婚姻期間20年のあいだ配偶者の平均標準報酬額が40万円だったとします。この20年分の報酬比例部分は40万円×5.481÷1000×240カ月で年約52万6000円、月にすると約4万3800円です。

按分割合を上限の50パーセントとし、分割を受ける側の婚姻期間中の記録がゼロだったと仮定すれば、動くのはこの半分にあたる月約2万1900円になります。婚姻期間や記録の状況で結果は変わるため、正確な見込額は年金事務所で確認してください。

5.2 分割される側の年金は、その分だけ減る

分割は記録の付け替えなので、分けた側の年金は同じ額だけ下がります。夫婦の合計が増えるわけではないという前提で、生活設計を組み直す必要があります。

6. 手続きの前に確かめておきたいこと

実際に動き出す前に、いくつか確認しておくと迷いにくくなります。

6.1 婚姻期間のうち、どこが3号分割の対象か

3号分割の対象は、平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間に限られます。それより前の期間や、自分も厚生年金に加入して働いていた期間は3号分割では動かないため、合意分割とあわせて考えることになります。

6.2 相手が障害厚生年金を受けている場合は対象外になることがある

日本年金機構は、分割される方が障害厚生年金の受給権者で、分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合、3号分割請求は認められないとしています。事前に確認しておきたい点です。

6.3 記録の分割と、受け取る時期は別の話

分割の手続きが済んでも、年金が受け取れるのは自分の受給開始年齢からです。分割したその月から入金が始まるわけではないので、当面の生活費を年金分割で埋めることはできません。

7. まとめにかえて

令和8年4月1日以後に離婚等をした場合、年金分割の請求期限は離婚等をした日の翌日から5年になりました。それより前に離婚等をした方は、従来どおり2年です。

分割には合意分割と3号分割の2種類があり、3号分割だけを請求するなら相手の合意はいりません。ただし分けられるのは厚生年金の記録だけで、老齢基礎年金には及ばず、分割を受けただけでは受給資格期間も満たしません。

まずは年金分割のための情報提供請求で記録を確認するところからです。離婚前に1人で請求すれば相手に交付されないので、話し合いを始める前の準備としても使えます。金額の見込みや対象期間の線引きは、年金事務所で個別に確認してください。

参考資料

和田 直子