3. 平均値と中央値では、見えてくる姿が変わる

貯蓄の話でよく出てくる平均値と中央値は、同じ集団を見ていても数字が大きく違います。どちらを見ているのかで受ける印象が変わるため、分けて押さえておきます。

3.1 二人以上の世帯全体は平均2059万円、中央値1264万円

総務省統計局によると、二人以上の世帯の2025年平均の1世帯当たり貯蓄現在高は2059万円でした。前年に比べて75万円、3.8%の増加で、7年連続の増加となっています。

一方、貯蓄保有世帯の中央値は1264万円です。平均値と中央値の間には800万円近い開きがあります。

3.2 平均は貯蓄の多い世帯に引き上げられる

同じ調査では、貯蓄現在高が平均値の2059万円を下回る世帯が約3分の2を占めていることも示されています。つまり平均値は、多くの世帯にとって実感より高い数字になりやすいということです。

これは一部の貯蓄が多い世帯が平均を押し上げるためで、貯蓄に限らず所得や年収の統計でも同じことが起こります。自分の位置を確かめたいときは、中央値や階級別の分布のほうを見るほうが手がかりになります。

4. 単身世帯と夫婦世帯では、不足の大きさが違う

毎月どれだけ足りないかは、世帯の人数によっても変わります。65歳以上の無職世帯を、単身と夫婦のみで比べてみます。

4.1 高齢単身無職世帯は毎月2万9980円の不足

65歳以上の単身無職世帯の実収入は13万1456円、可処分所得は11万8465円でした。これに対して消費支出は14万8445円で、平均消費性向は125.3%となっています。

可処分所得と消費支出の差は2万9980円です。夫婦のみの無職世帯の4万2434円と比べると、月あたりの不足額そのものは小さくなっています。

4.2 世帯人員が違えば、必要な額も変わる

ただし、不足額が小さいことと家計に余裕があることは同じではありません。単身無職世帯は平均消費性向が125.3%と、夫婦のみの無職世帯の119.2%より高くなっています。

収入に対する支出の比率という意味では、単身世帯のほうが張っている形です。世帯の人数が違えば収入も支出も変わるため、他の世帯の数字をそのまま自分に当てはめないほうがよさそうです。

5. まとめにかえて

世帯主が65歳以上の世帯では、貯蓄現在高が2500万円以上の世帯が36.3%を占める一方で、300万円未満の世帯も14.9%ありました。貯蓄保有世帯の中央値は1777万円です。

同じ年代でも貯蓄の状況は幅があり、平均値ひとつで自分の位置を測るのは難しいことが分かります。まずは階級別の分布のなかで自分がどのあたりにいるのかを確かめてみてください。

そのうえで、毎月の収入と支出がどれだけ離れているかを合わせて見ると、これから何を準備すればよいかが具体的になります。数字が見えてくると、取り崩しの計画も立てやすくなります。

参考資料

中本 智恵