2026年度(令和8年度)の年金額が発表され、老後のお金をあらためて考えた方も多いのではないでしょうか。「年金は少し増えたけれど、物価の上がり方を思うと心もとない」—60〜70歳代なら、そう感じる場面もあるかと思います。

年金は老後の収入の柱ですが、それだけで暮らしを支えるのは簡単ではありません。だからこそ、同世代がどれくらい貯めているのかを知っておくことが、取り崩しの計画の出発点になります。

今回は、60〜70歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額と中央値を確認し、2026年度の年金額改定とあわせて、老後の家計の考え方をみていきます。

LIMO編集部貯蓄解説班

年金額の改定は毎年ニュースになりますが、大切なのは「増えた・減った」より、わが家の年金と支出の差がいくらかということです。その差を埋めるのが貯蓄の取り崩しです。まずは、年金でまかなえる部分と、貯蓄から補う部分を分けて考えてみましょう。

全体像がみえると、必要以上に不安にならずにすみます。

なお、年代別の貯蓄額や2026年度の年金額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
ココがポイント
  • 60歳代・二人以上世帯の貯蓄額は平均2683万円・中央値1400万円、70歳代は平均2416万円・中央値1178万円
  • 2026年度の年金額は、国民年金の満額が月7万608円、厚生年金の標準的な夫婦2人分が月23万7279円
  • 年金と支出の差が月3万円なら、20年間で約720万円。中央値と照らすと取り崩しのペースが見えてくる

1. 【60〜70歳代二人以上世帯の平均貯蓄額】中央値はいくらか?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額(平均・中央値)は次のとおりです。

※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

1.1 60歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

60歳代の貯蓄円グラフ1/2

60歳代の貯蓄円グラフ

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

金額帯ごとの割合は、「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認」から要点を引用して確認してみます。

  • 金融資産非保有:12.8%
  • 100万円未満:4.7%
  • 100~200万円未満:3.9%
  • 200~300万円未満:3.0%
  • 300~400万円未満:2.8%
  • 400~500万円未満:1.8%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:6.3%
  • 1000~1500万円未満:8.9%
  • 1500~2000万円未満:8.0%
  • 2000~3000万円未満:12.4%
  • 3000万円以上:27.2%
  • 無回答:2.0%
  • 平均が2683万円、中央値が1400万円となっています。

出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認

60歳代は平均2683万円・中央値1400万円。退職金が加わる時期で、2000万円以上が39.6%にのぼる一方、貯蓄のない世帯(非保有)も12.8%。平均・中央値ともにこれまでの年代から大きく伸びますが、平均が中央値を上回っており、世帯によるばらつきは依然として大きいことがうかがえます。

1.2 70歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

70歳代の貯蓄円グラフ2/2

70歳代の貯蓄円グラフ

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

70歳代についても、同じ記事から要点を引用して確認してみます。

  • 金融資産非保有:10.9%
  • 100万円未満:4.5%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:3.7%
  • 300~400万円未満:3.9%
  • 400~500万円未満:2.9%
  • 500~700万円未満:6.4%
  • 700~1000万円未満:6.7%
  • 1000~1500万円未満:11.1%
  • 1500~2000万円未満:6.7%
  • 2000~3000万円未満:12.3%
  • 3000万円以上:25.2%
  • 無回答:0.6%
  • 平均が2416万円、中央値が1178万円です。

出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認

70歳代は平均2416万円・中央値1178万円。2000万円以上が37.5%と高水準を保つ一方、貯蓄のない世帯も10.9%残ります。60歳代よりは平均がやや下がるものの中央値は高く、現役期から老後の入り口までにどれだけ準備できたかが、そのまま差になって表れる年代です。

LIMO編集部貯蓄解説班
60〜70歳代は、退職金などで平均が大きくなる一方、中央値との差も開きます。実感に近いのは中央値のほうです。次のページでは、2026年度の年金額改定と、老後の家計への影響をみていきます。

2. 2026年度の年金は「満額7万608円」—引き上げでも実感は伴いにくい

老後の収入の柱である公的年金は、毎年度改定されます。厚生労働省の発表によると、2026年度(令和8年度)の年金額は、国民年金(老齢基礎年金・1人分の満額)が月7万608円、厚生年金は標準的な夫婦2人分(夫婦の基礎年金を含むモデル)で月23万7279円です。

厚生年金の標準的な夫婦2人分の金額については、「【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説」から要点を引用して確認してみます。

夫婦2人分の標準的な年金額は月額23万7279円となり、年金は2カ月ごとに支給されるため、1回あたりの振込額は47万4558円です。

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

2.1 2026年度の国民年金は満額月7万608円

金額としては前年度から引き上げられましたが、物価や賃金の伸びと比べると、実質の価値は目減りしやすい状況が続いています。年金の伸びを物価の上昇より緩やかに抑える仕組みが働くためで、「額面は増えても、買えるものは増えにくい」という感覚につながります。

厚生年金・国民年金の平均受給額や、年金から差し引かれるお金の内訳についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

2.2 年金だけに頼らない—老後資金の取り崩しと合わせる

ここで、先ほどの貯蓄額とあわせて考えてみましょう。仮に、年金だけでは毎月の生活費に届かない場合、その差額は貯蓄の取り崩しで補うことになります。たとえば月に3万円足りなければ、1年で約36万円、20年で約720万円。

60〜70歳代の中央値(1178万〜1400万円)と照らすと、取り崩しのペースは家計の大きなテーマだとわかります。仮に不足額が月5万円に増えれば、20年で約1200万円となり、中央値の水準をほぼ使い切る計算です。

大切なのは、年金額の増減に一喜一憂することよりも、「わが家の年金でいくらまかなえ、いくらを貯蓄から補うのか」を具体的な数字でつかんでおくことです。

3. 編集部からのアドバイス

60〜70歳代二人以上世帯の貯蓄は、平均で2416万〜2683万円、中央値で1178万〜1400万円でした。2026年度の年金は国民年金満額7万608円・厚生年金の標準夫婦23万7279円。ここから、老後の家計で押さえたい点を3つお伝えします。

一つ目は、ねんきん定期便やねんきんネットで、わが家が実際に受け取る年金額を確かめること。モデルの金額ではなく、自分の見込み額を起点にすると計画がぶれません。

二つ目は、年金と毎月の支出の差額を出し、貯蓄で何年分まかなえるかを試算すること。差額×12カ月で年間の取り崩し額がわかり、必要以上の不安を避けられます。

三つ目は、取り崩しながらでも一部を運用に回す発想を持つこと。すべてを預金に置くのではなく、使う予定の遠いお金は物価上昇に負けにくい形で持つと、目減りをやわらげられます。ただし運用商品には元本割れの可能性があるため、当面使う予定のあるお金は預貯金で確保しておくことが前提になります。

LIMO編集部貯蓄解説班

年金額の改定はニュースになりやすく、そのたびに不安が広がりがちです。ただ、額面が上がったか下がったかという情報だけでは、自分の家計にどう効くのかは分かりません。判断に必要なのは、平均やモデルの金額ではなく、わが家の見込み額と支出です。

老後の家計は、漠然とした不安が一番のストレスになります。ご自身の年金の見込み額を起点に、毎月の差額と、貯蓄で何年もつかを一度計算しておく。そのうえで、当面使わないお金は物価に負けにくい形で持っておく。手順としてはこの2つだけです。

数字にしてしまえば、不安の多くは具体的な計画に変わります。年金額の見込みは、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。制度の細かい要件については、年金事務所やお住まいの自治体の窓口にご相談ください。

4. まとめにかえて

今回は、60〜70歳代二人以上世帯の平均貯蓄額(2416万〜2683万円)と中央値(1178万〜1400万円)を確認しました。平均と中央値の差が大きく、世帯によるばらつきの目立つ年代です。実感に近いのは中央値のほうです。

あわせて2026年度の年金額(国民年金満額7万608円・厚生年金の標準的な夫婦23万7279円)をみました。金額は引き上げられましたが、物価の伸びを考えると実質は目減りしやすく、年金だけに頼らない備えが欠かせません。

今日からできることは3つです。まず、ねんきん定期便などで自分が受け取る年金の見込み額を確かめること。次に、年金と毎月の支出の差額を出し、貯蓄で何年分まかなえるかを試算すること。

そして、当面使わないお金は物価上昇に負けにくい形で持ち、目減りをやわらげること。年金額の増減に振り回されず、わが家の数字を起点に、落ち着いて老後の計画を整えていきましょう。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班