4. 二極化という言葉で片づけない
上と下に分かれているのは事実ですが、そこで終わらせると自分がどうすべきかが見えません。どの層にいるかで、取るべき手が変わります。
4.1 3000万円以上の層は使い方の設計が課題
25.2%を占める3000万円以上の層では、足りるかどうかより「どう渡すか」「どう使うか」が論点になります。相続の準備や、使わないまま残ってしまう資産の扱いです。
この層で多いのが、預貯金のまま置いておくケースです。物価が上がる局面では、動かさないこと自体が実質的な目減りにつながります。
4.2 500万円未満の層は取り崩しの速度が課題
31.0%を占める500万円未満の層では、年金でどこまで賄えるかが中心になります。手元の資産が生活費の何カ月分にあたるかを把握しておくことが先です。
この層では、資産を増やすことより支出の固定費を見直すほうが効きます。住居費・通信費・保険料は、一度下げると効果が毎月続きます。
5. 残高より「何カ月分か」で見る
筆者は銀行と信託銀行で、資産運用アドバイザーとして延べ1000名以上のお客様のご相談を受けてきました。70歳代の方とお話しするとき、いつも一緒に出していただくのが生活費の月額です。
5.1 同じ1000万円でも意味が変わる
手元に1000万円あっても、毎月5万円の不足なら約16年分、毎月10万円の不足なら約8年分です。金額そのものより、不足額との比で見たほうが実態に近くなります。
この計算をすると、「思ったより持つ」と分かる方と「想定より短い」と気づく方に分かれます。どちらにしても、そこから逆算して手を打てるようになります。
5.2 名義と置き場所を家族と共有しておく
70歳代のご相談で増えるのが、口座がどこにいくつあるか分からないというお話です。ご本人が把握していても、ご家族が知らないケースは珍しくありません。
金融機関名と口座の種類だけでも紙に書き出して、置き場所をご家族に伝えておく。それだけで、後から確認する側の負担がかなり変わります。金額を教える必要はありません。
6. 平均と中央値、世帯の種類を混ぜない
今回の数字を引用するときの注意点を挙げておきます。
6.1 平均と中央値のどちらの話かを明示する
70歳代の二人以上世帯は平均2416万円、中央値1178万円で、2倍以上の開きがあります。「70歳代の貯蓄は2400万円」とだけ書くと、実感とかけ離れた数字になります。
6.2 二人以上世帯と単身世帯を混ぜない
平均で927万円、中央値で678万円の差があります。世帯の形を書かずに金額だけを比べると、話がかみ合わなくなります。
6.3 この調査は貯蓄額であって、資産全体ではない
金融資産保有額には持ち家などの不動産は含まれません。持ち家がある世帯とない世帯では、同じ貯蓄額でも家計の余裕はまったく違います。
7. 確かめておきたい3つのこと
平均と比べるのではなく、自分の数字を出すところから始めましょう。
7.1 毎月の不足額を出す
年金の振込額から、毎月の生活費を引きます。差額が不足額です。手元の資産をこの金額で割れば、何カ月分あるかが分かります。
7.2 すぐ使える資金を分けておく
医療費や住宅の修繕など、数年に一度の大きな支出に備える分を普通預金で確保しておきます。ここを分けておくと、値動きのある商品を急いで売らずに済みます。
7.3 持ち家がある場合は選択肢を確認しておく
持ち家を活用する方法としてリバースモーゲージがありますが、年齢や物件の条件、金利の上昇、相続時の扱いなど確認すべき点が多くあります。利用を検討する場合は、金融機関やお住まいの自治体の窓口で条件をご確認ください。
8. まとめにかえて
70歳代の二人以上世帯の金融資産は平均2416万円、中央値1178万円でした。3000万円以上が25.2%、500万円未満が31.0%で、この2つの端で56.2%を占めます。
単身世帯では平均1489万円、中央値500万円まで下がり、500万円未満が47.0%と半数近くになります。世帯の形によって前提が大きく変わる年代です。
60歳代からは平均で267万円、中央値で222万円下がっていました。自分がどの位置にいるかを確かめて、毎月の不足額と並べてみてください。
参考資料
LIMO編集部貯蓄解説班