4. 亡くなったあとに残る「未支給年金」請求しないと5年で消える
ひとり暮らしの方に、知っておいていただきたい制度があります。年金は亡くなった月分までが支払われますが、受け取る前に亡くなると、その分は自動では振り込まれません。遺族が請求して初めて受け取れるお金になります。おひとりで暮らしている方の場合、離れて住むご家族がこれを知らないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
4.1 請求できるのは生計を同じくしていた遺族|配偶者・子・父母の順に
年金は2カ月ごとの後払いなので、亡くなった時点で必ず受け取っていない分が残ります。この未払い分が「未支給年金」です。亡くなった日より後に振り込まれた年金のうち、亡くなった月分までが対象になります。
請求できるのは、亡くなった当時にその方と生計を同じくしていた遺族です。順位は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、そのほかの3親等内の親族と決まっています。先の順位の方がいる場合、後の順位の方は受け取れません。同じ順位の方が2人以上いるときは、そのうち1人が代表して請求します。
「生計を同じくしていた」という条件は、同居していた場合だけを指すわけではありません。別に暮らしていても、仕送りなどで生活を支え合っていたなら該当することがあります。離れて住んでいるからと諦めず、年金事務所で事情を伝えて確認してみてください。手続きは、年金受給権者死亡届と未支給年金の請求書が一体になった用紙で行います。
4.2 時効は5年|請求しないと権利そのものが消える
気をつけたいのが時効です。年金を受ける権利は、権利が発生してから5年を経過すると時効によって消滅します。未支給年金についても時効は5年で、起算日は受給権者の年金の支払日の翌月の初日です。
5年は長いように見えて、あっという間です。葬儀や相続の手続きに追われているうちに1年、2年と過ぎ、気づいたときには対象の期間が削られていく。しかも未支給年金は、請求しなければ誰も教えてくれません。年金の振込が止まったことに気づいて問い合わせたときに、初めて未払い分の存在を知る方もいます。
できる備えは2つあります。ひとつは、自分が年金をいつ・どの口座で受け取っているかを、信頼できるご家族に伝えておくこと。もうひとつは、家族が亡くなったときに年金事務所へ連絡する、という手順を家族の中で共有しておくことです。どちらもお金はかかりません。ひとり暮らしの方こそ、元気なうちに一度だけ話しておく価値があります。
5. 編集部からのアドバイス|不足額を把握して、家族に「年金のありか」を伝えておく
単身世帯の毎月2万9980円という不足は、平均の姿です。住まいが持ち家か賃貸かで、この数字は大きく動きます。まずはご自身の家計で差額を出すところから始めてください。
そのうえで打てる手は、収入を足す、固定費を下げる、受け取り方を変える、の3つです。60歳以降も働いて厚生年金に加入すれば年金は増えますし、受け取りを遅らせる繰下げという選択もあります。
そして、未支給年金の話はご家族と共有しておいてください。「うちは大した額じゃないから」とは思わず、共有しておきましょう。
おひとりで暮らしていると、こうした手続きの情報が誰にも引き継がれないままになりがちです。年金の種類と振込口座を1枚の紙に書いておくことからはじめてみるといいでしょう。
6. まとめにかえて
65歳以上の単身無職世帯は毎月2万9980円の不足。国民年金は満額でも月7万608円で、働き方によって年金額は倍以上変わります。あわせて知っておきたいのが、年金は2カ月ごとの後払いなので、亡くなったときには受け取っていない分が残るということです。最後に、今日からできるアクションを3つ整理します。
まず、自分の家計の不足額を出してみてください。年金の振込額と1カ月の支出を並べて差額を計算します。平均の2万9980円ではなく、自分の数字で考えることが出発点です。
つぎに、年金の見込み額を確認しておきましょう。ねんきんネットやねんきん定期便で、自分がどのライフコースに近いかを確かめます。足りない分をどう埋めるかは、金額が分かってから考えられます。
そして、家族に年金のありかを伝えておいてください。亡くなった月分までの年金は、生計を同じくしていた遺族が請求して初めて受け取れます。請求の時効は5年です。受け取っている年金の種類と振込口座、そして亡くなったときは年金事務所へ連絡することを共有しておきましょう。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
- 日本年金機構「年金の時効」
宮野 茉莉子

