4. 厚生年金・国民年金の男女差と受給額分布

60歳~90歳以上のすべての受給権者における「平均年金月額」と「受給額分布」についても見ていきます。

4.1 「厚生年金」男女別平均年金月額・受給額分布

厚生年金の平均額(全年齢)10/11

厚生年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金の金額を含む

受給額分布(1万円刻み・抜粋)

  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人(最多)
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金では、全体の平均年金月額は15万289円という結果でした。男女の平均を比較すると、男性16万9967円、女性11万1413円で、6万円近い開きが見られます。

4.2 「国民年金」男女別平均年金月額・受給額分布

国民年金の平均額(全年齢)11/11

国民年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

受給額分布(1万円刻み・抜粋)

  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人(最多)
  • 7万円以上~:299万7738人

国民年金の平均年金月額は全体で5万円台です。男性は6万円台、女性は5万円台と4000円ほどですが男女差が見られます。「6万円以上~7万円未満」が最も厚い受給層となっており、多くの人が満額に近い年金額を受け取っていることが読み取れます。

4.3 63歳の年金額のままライフプラン表を放置すると、65歳以降とどれだけズレる?

先ほどの厚生年金の1歳刻みデータをよく見ると、63歳の平均月額は6万8758円ですが、65歳になると14万9862円へと大きく跳ね上がっています。これは、65歳から老齢厚生年金の本来支給が始まる人が多いためです。もし63歳時点の年金額を前提にライフプラン表を作ったまま、この跳ね上がりを反映せず放置していたらどうなるでしょうか。

【63歳時点の年金月額(前提)】
6万8758円

【65歳以降の実際の年金月額】
14万9862円

【月額の差】
14万9862円 - 6万8758円 = 8万1104円

【65歳から85歳までの20年間の累計差】
8万1104円 × 12カ月 × 20年 = 約1946万円

たった1つの前提を更新し忘れただけで、老後の収入見込みに約1946万円もの差が生まれる可能性があるということです。もちろん、これは63歳時点のデータをそのまま65歳以降に当てはめてしまうという極端なケースですが、「昔作った試算をそのまま使い続ける」ことのリスクの大きさが分かります。

4.4 積立の前提がずれていた場合、10年後の資産額はどう変わる?

年金の見込額だけでなく、積立の実績が当初の前提とずれていくケースも見ておきましょう。5年前に「毎月3万円を年利3%で30年間積み立てる」という前提でライフプラン表を作ったものの、実際には毎月2万円しか積み立てられていなかった場合を試算します。

【当初の前提:毎月3万円・30年間・年利3%】
30年後の想定額:約1748万円

【実際:毎月2万円・30年間・年利3%】
30年後の想定額:約1165万円

【差額】
約1748万円 - 約1165万円 = 約583万円

積立額を月1万円下方修正しただけで、30年後の想定額には約583万円もの差が生まれます。この差は、5年に一度でも見直していれば早い段階で気づけたはずのものです。なお、これは一定の利回りが続くと仮定した試算であり、投資信託などの運用には元本割れの可能性があります。

徳田 椋
1歳刻みのデータを見るだけでも、年金額は前提を1つ間違えるだけで大きくずれることが分かります。ライフプラン表は「一度作って終わり」ではなく、年に一度、前提を確認する習慣にしていただければと思います。

監修者コメント

村岸 理美

今回の1歳刻みデータで注目していただきたいのは、63歳から65歳にかけて厚生年金の平均月額が大きく跳ね上がっている点です。これは支給開始年齢の違いによるものですが、こうした「制度上の節目」を見落としたままライフプラン表を更新しないでいると、記事中の試算のように老後の収入見込みが大きくずれてしまいます。

積立の実績についても同様です。当初の想定と実際の積立額にずれが生じていないか、年に一度は確認する習慣を持つことをおすすめします。5年、10年と放置すればするほど、ずれは大きくなり、修正も難しくなります。

ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、見直しは「作り直し」である必要はないということです。ねんきん定期便が届く時期など、毎年決まったタイミングで前提の数字だけを差し替える。この小さな習慣が、老後の資金計画の精度を大きく左右します。

5. ライフプラン表、作ったきりになっていませんか。ファイナンシャルアドバイザー・徳田椋が伝える「毎年見直す」習慣のつくり方

日頃のご相談では、以前ライフプラン表を作ったきり見ていない、という方に多くお会いします。作った時点では正しくても、前提が変われば数字も変わるため、更新されない表は判断の材料になりにくくなります。ここからは、40代・50代の方によくあるご相談の事例をもとに、ファイナンシャルアドバイザーの徳田椋さんに伺った考え方をご紹介します。

5.1 「あの数字が今も当てはまるのか」、確かめられていますか。40代・50代に多いお悩み

一度シミュレーションをして安心すると、次に見返す機会がないまま数年が過ぎます。その間に収入も家族の状況も変わり、当時の前提は現実と離れていきます。相談の場では、次のような声を耳にします。

50代のお客様
以前、老後の資金について試算してもらったことがあります。そのときは安心したのですが、それ以来見返していません。あの数字が今も当てはまるのかどうか、自分では確かめようがないのです。

見直しは大がかりな作り直しではありません。変わった前提だけを差し替える作業です。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・徳田椋が回答】見直しの手間を小さくすれば、習慣は続きます

徳田 椋
「前に一度作ったから大丈夫」と決めつける前に、更新する時期をあらかじめ決めておくことも大切です。前回と変わった前提だけを差し替え、ずれの原因まで確かめることで、ライフプラン表は毎年の判断に使える形へと保たれていきます。
最新の現状を確認することで、今後の計画や資産運用の最適化をすることが出来ます。

5.3 ポイント1:更新する時期、あらかじめ決めていますか。

一つ目は、更新する時期を決めておくことです。ねんきん定期便が届く時期など、毎年必ず訪れるきっかけに合わせておきます。日付を決めておけば、思い出したときにやるより確実に続きます。

5.4 ポイント2:「変わったところだけ」を直す形になっていますか。

二つ目は、変わったところだけを直すことです。収入、支出、資産残高、年金の見込額。前年と違う箇所だけを入れ替えれば、作り直す必要はありません。差が小さいことを確認するだけでも意味があります。

5.5 ポイント3:ずれの原因まで、確かめていますか。

三つ目は、ずれの原因を確認することです。想定より資産が増えていない、あるいは支出が想定を超えている。その理由まで見ておくと、翌年の見通しの精度が上がり、早めに手を打てます。資産の増減には値動きや手数料の影響も含まれますので、金額の差だけでなく背景まで確認しておくと判断しやすくなります。

なお、シミュレーションは一定の前提に基づく試算であり、前提の置き方が変われば結果も変わります。年金の見込額は加入状況や制度改正によって変わりますので、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所でご確認ください。受給額や要件は加入歴や収入により一人ひとり異なるため、ご自身の条件については年金事務所等で個別にご確認ください。運用商品には値動きがあり、元本割れの可能性や手数料の負担も伴います。見直しの手間を小さく保つことが、ライフプラン表を毎年の判断に使える状態へとつないでいきます。

6. まとめ|見直しは作り直しではなく、前提の差し替え

厚生年金は63歳の6万8758円から65歳の14万9862円へと、支給開始年齢を境に大きく跳ね上がります。今回の試算では、この変化を反映せずライフプラン表を放置すると、20年間で約1946万円もの見積もり誤差になりうることを確認しました。積立額の想定が月1万円ずれるだけでも、30年後には約583万円の差が生まれます。

ライフプラン表の見直しは、一から作り直す必要はありません。ねんきん定期便が届く時期など、毎年決まったタイミングを決めて、変わった前提だけを差し替える。この小さな習慣が、老後の資金計画の精度を左右します。

参考資料

徳田 椋