6. 資本合計1,998億円のうち672億円が非支配持分という構造
この会社の資本を分解すると、独特な形が見えてくる。
2027年3月期1Q末の資本合計は1,998億円。そのうち親会社の所有者に帰属する持分が1,326億円、非支配持分が672億円である。3分の1が親会社以外の株主に帰属している。
理由は連結の作り方にある。2026年3月期末時点の連結子会社は26社にのぼる。
発電所や蓄電所ごとに事業会社を立て、共同出資者と組んで建設する形だ。出資比率は51%から100%まで幅がある。
有価証券報告書では、各社との関係が「経営管理支援」「スポンサーサポート契約の締結」「担保の提供」と記されている。匿名組合出資の形も複数含まれる。
発電所を1つ増やすたびに連結の資産と負債が膨らみ、非支配持分も増えていく。
1Qの四半期利益1億円台のうち、親会社の所有者に帰属したのは0.95億円で、残りは非支配持分に回った。連結の利益がそのまま親会社の株主に届くわけではない。
7. 資本の厚みとROEが逆を向いた5期
会社が重視すると説明する財務指標を確認しておきたい。
1Q末の資本比率は31.8%で前期末は30.4%、親会社所有者帰属持分比率は21.1%で前期末は20.1%、純有利子負債をEBITDAで割った倍率は8.8倍で前期末は8.4倍だった。
持分比率の5期の並びを見ると、2022年3月期が10.8%、以降14.2%、14.6%、16.8%、そして2026年3月期が20.1%。着実に厚みを増している。
同じ5期のROEは6.7%、7.2%、16.0%、3.4%、3.1%。持分比率とは逆の方向を向いている。
分母が厚くなれば、同じ利益でもROEは下がる。ただこの5期は分子の側も伸びていない。当期利益は15億円、26億円、88億円、26億円、33億円と行き来している。
その間に総資産は2,962億円から6,114億円へ2倍以上、売上収益は292億円から876億円へ3倍になった。資産と売上は大きく伸びたが、株主に帰属する利益は横ばい圏にとどまる。
7.1 レノバの負債はどこにどれだけあるのか
1Q末の内訳を見ると、非流動の社債及び借入金が2,974億円、流動の借入金が316億円である。親会社の所有者に帰属する持分1,326億円に対して、はるかに大きい。
電気・ガス業の自己資本比率中央値は40.8%で、下位4分の1の境目は24.5%。レノバの21.1%はその境目も下回る。
同じ業種のD/E比率の中央値は0.96倍だ。この会社の負債の使い方は、業種の中でも際立って重い側にある。
一方で1Q末には引出制限付預金が645億円ある。プロジェクトファイナンスの仕組み上、返済や維持管理のために拘束される現金が積み上がるためだ。
手元の現金及び現金同等物202億円と合わせて考えると、見た目の現金と自由に使える現金は同じではない。
8. 配当0円という選択が示す優先順位
2026年3月期の1株当たり配当は0円で、2027年3月期の予想も0円である。
キャッシュ・フローの向きもそれと整合している。2026年3月期は営業活動が282億円の収入、投資活動が▲117億円、財務活動が▲174億円だった。
2027年3月期1Qは営業活動が44億円の収入、投資活動が▲24億円、財務活動が▲49億円である。稼いだ現金が返済と設備に向かう形が続いている。
会社は蓄電事業でも案件を積み上げている。2026年8月時点で運転中および建設着手済みの蓄電事業の設備出力は452MWに達したという。太陽光によるコーポレートPPAの契約設備容量は206MW、バイオマス発電では3発電所で145.4MWになる。
還元よりも成長投資に資源を振り向ける段階にある会社だと読み取れる。無借金経営を良しとする一般的な感覚とは正反対で、負債を最大限に使って資産を積む戦略である。
その巧拙は、金利環境と発電量の安定度で決まる。どちらも会社が完全に制御できる変数ではない。
9. 筆者コメント
資本と資産の関係が変わろうとしているのが、この5期のレノバの姿だ。
親会社所有者帰属持分比率は10%台から20%台へ切り上がった。負債で建てた発電所が稼ぎ始め、資本が少しずつ厚くなってきたということだろう。
一方で、その厚みがROEを押し下げる側にも働いている。分母が増えるのに分子が追いつかない。会計上の利益がまだ薄いからだ。
私が気になるのは、この会社の投資の良し悪しが、単年の会計上の利益では測りにくい点である。発電所は運転開始から長期にわたって収入を生む。償却は前半に重く効き、後半は軽くなる。
同じ資産が、期によってまったく違う顔で損益計算書に出てくるわけだ。四半期の増減率が読者を惑わせやすい業態と言える。
だからこそ、会社が自ら挙げている純有利子負債とEBITDAの倍率のように、期をまたいで並べられる指標にも目を向けることをおすすめしたい。
参考資料
10.1 免責事項
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石津 大希
