再生可能エネルギーと聞けば、多くの人は成長分野の話を思い浮かべる。ところが株価の値付けを見ると、成長株というより資産を抱えたインフラ会社に近い顔が出てくる。レノバ(9519)の直近1カ月は、その二つの顔がせめぎ合った期間だった。8月上旬に884円まで下げ、8月21日には960円まで戻している。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
- ①2027年3月期1Qは売上収益193億円で▲5.8%、営業利益10億円で▲68.4%。会社はバイオマス発電所の定期点検による運転停止を主因に挙げている
- ②株価は7月下旬の1,029円から8月上旬に884円まで下げたのち、8月21日は960円で前日比4%超の大幅高となった
- ③純有利子負債はEBITDAの8.8倍、親会社所有者帰属持分比率は21.1%。資本の厚みが増す一方でROEは3.1%まで下がっている
1. 1,029円から884円、そして960円。方向の定まらない1カ月
直近1カ月の終値をたどると、上下に振られた跡がはっきり残っている。
7月下旬は1,000円前後だった。7月27日には1,029円をつけ、これがこの1カ月で最も高い水準になる。
そこから水準が切り下がった。7月30日に928円、8月3日に904円。8月7日には884円まで下げ、1カ月で最も低い水準を記録している。
8月中旬は戻り歩調に入り、900円台から960円台で推移した。8月18日には964円まで戻したものの、翌8月19日は901円へ急落する場面もあった。
足元は8月20日が922円、8月21日が960円。当日は前日比で4%を超える大幅高となっている。
起点となる7月23日の977円と比べれば、1カ月を通しては小幅な下落にとどまる。ただ最も高い水準と最も低い水準の差は1割を超えた。
1カ月で見れば横ばい圏、当日だけを見れば大幅高。同じ株価が、時間軸を変えると正反対に見える局面だ。理由を一つに絞ることはできないが、方向感が定まっていないことは読み取れる。
2. PER25.5倍とPBR0.65倍が同時に成り立つ理由
直近時点のPER(株価収益率)は25.5倍、PBR(株価純資産倍率)は0.65倍である。
PERは会社が示す2027年3月期の1株当たり当期利益予想37.61円に対する水準だ。960円という株価は、その予想利益の25倍強を払う位置にある。
一方でPBRは0.65倍で、1倍を大きく下回る。純資産に対しては控えめな値段が付いているということだ。
PERが高くPBRが低いという組み合わせは、1株当たり純資産に対して利益が薄いときに現れる。
実際、2026年3月期のROE(自己資本利益率)は3.1%だった。電気・ガス業29社のROE中央値7.9%の半分以下である。
資産を厚く積み上げながら、その資産が生む会計上の利益は薄い。この構図が、そのまま値付けの前提になっている。
3. 1Q営業利益は▲68.4%、それでも会社は見込み通りと説明する
2027年3月期1Qの売上収益(IFRS)は193億円で、前年同期の205億円から▲5.8%となった。
営業利益は10億円で▲68.4%。前年同期は32億円だった。親会社の所有者に帰属する四半期利益は0.95億円で▲89.0%、前年同期の8億円から大きく減っている。
会社の説明によると、営業利益の減少はバイオマス発電所における定期点検による運転停止で▲11億円、合同会社軽米西ソーラーの運転停止で▲4億円、事業開発報酬の減少で▲3億円という内訳になる。
軽米西ソーラー発電所(出力48.0MW)は受変電設備の不具合により運転を停止し、補修工事を終えて2026年7月1日に通常操業を再開したという。
売上収益の側には押し上げ要因もあった。合同会社唐津バイオマスエナジーの運転開始と連結化で+15億円である。
そして通期の業績予想に変更はない。会社は各発電所の発電量が全体でほぼ計画通りに推移し、四半期利益は見込み通りに進捗したとしている。
定期点検の時期が四半期のどこに入るかで、この会社の四半期利益は大きく振れる。増減率だけを取り出して読むと、判断を誤りやすい業態だ。
4. 会社がEBITDAを重視すると説明する事情
この会社は業績指標としてEBITDA(金利・税金・償却前利益)を重視すると説明している。
理由も明示されている。再生可能エネルギー事業は多額の初期投資を必要とし、費用全体に占める償却費の割合が大きくなりやすいためだという。
1QのEBITDAは67億円で▲21.3%、EBITDAマージンは35.1%だった。前年同期は42.0%である。営業利益の▲68.4%に比べれば、減り方はずいぶん緩い。
2026年3月期の減価償却費及び償却費は177億円。同期の営業利益82億円の2倍を超える規模だ。
償却前で見るか償却後で見るかで、この会社の収益力の見え方は大きく変わる。
どちらが正しいという話ではない。ただ償却費は現金の支出を伴わない一方で、設備はいずれ更新の時期を迎える。EBITDAだけで完結させない見方も要るだろう。
5. 筆者コメント
業種の中での立ち位置に照らすと、この会社の数字はねじれて見える。
2026年3月期の営業利益率は9.5%で、電気・ガス業の中央値6.9%を上回る。売っている電気の利益率は、業種の真ん中より高いということだ。
ところがROEは3.1%で、業種中央値7.9%の半分以下にとどまる。営業段階では優位なのに、株主に戻る利益では劣後している。
この差はどこへ消えるのか。答えは営業利益の下にある。2026年3月期の支払利息は72億円で、営業利益82億円とほぼ同じ規模だ。
借入で発電所を建て、その利息が営業利益をほぼ食い切る。事業の巧拙とは別に、資本構成そのものが利益の行き先を決めている。
四半期の増減率よりも、営業利益が支払利息をどこまで上回るようになるかを追いたい局面だ。
