2. 厚生年金の「3つの大きな恩恵」

「払って終わり」に見える厚生年金保険料ですが、実際には老後・万が一のケガや病気・死亡という3つの場面で、国民年金だけでは得られない保障が上乗せされています。

2.1 恩恵1|老後にもらえる金額が大きく増える

正直なところ、30〜40年後の老後にいくら増えると言われても、毎月約3.8万円(年約45.8万円)も引かれている現在の重さには見合わないと感じるのが普通です。

では、具体的に国民年金と比べてどれくらいの差が出るのでしょうか。

国民年金(老齢基礎年金)のみの場合、令和8年度の満額は月額70,608円です。これに対し、年収500万円で40年間厚生年金に加入した場合、報酬比例部分と基礎年金を合わせた老齢厚生年金の月額は約16万円になると試算されます。

国民年金のみと比べて、月あたり9万円前後、年間では100万円以上の差が生まれる計算です。

国民年金のみの場合と厚生年金に加入した場合の、老後の年金額の差を試算しています2/3

国民年金のみと厚生年金ありの年金額比較

出所:日本年金機構の資料をもとにLIMO編集部が試算・作成

2.2 恩恵2|障害年金の保障が手厚い

病気やケガで一定の障害状態になった場合、国民年金のみでは障害基礎年金の1級・2級しか対象になりません。厚生年金に加入していれば、2級に満たない軽い障害でも3級の障害厚生年金が支給されるほか、初診日から5年以内に治って軽い障害が残った場合には、一時金である障害手当金も支給対象になります。国民年金にはないこの3級・一時金の存在が、厚生年金ならではの手厚さです。

2.3 恩恵3|遺族への保障の対象が広い

一家の働き手が亡くなった場合の遺族年金にも差があります。遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」のみが対象で、子どもがいない配偶者は受け取れません。一方、遺族厚生年金は子どもの有無にかかわらず配偶者が対象になり得る仕組みで(夫の場合は妻の死亡時に55歳以上であることなど条件はあります)、保障の範囲がより広く設計されています。

厚生年金保険料を払うことで得られる3つの恩恵を整理しています3/3

厚生年金の3つの恩恵

出所:日本年金機構の資料をもとにLIMO編集部作成

和田 直子

「同じ保障を民間の保険で用意しようとすると、想像以上に保険料がかかる」というのが率直な印象です。終身にわたる年金支給に加えて、障害・死亡までまとめてカバーされている点は、厚生年金ならではの強みだと考えています。「高い・安い」だけでなく、「何を保障してくれているか」まで含めて評価してみてほしいところです。

3. 手取りを増やす・保険料を抑える2つの工夫

厚生年金保険料そのものを大きく減らすことは難しいものの、家計全体で見たときの手取りをリカバリーする工夫はあります。

3.1 iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する

iDeCoの掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。厚生年金保険料自体は控除の対象ではありませんが、iDeCoで積み立てながら所得税・住民税を軽減することで、天引きによる負担感を家計全体でリカバリーする効果が期待できます。

3.2 4~6月の残業を意識する

会社員の社会保険料のもとになる「標準報酬月額」は、原則として4~6月に支払われた報酬の平均から決まる「算定基礎届」の仕組みで、その年の9月から翌年8月までの保険料に反映されます。4~6月に残業代が多く発生すると標準報酬月額の等級が上がり、9月以降の厚生年金保険料や健康保険料が引き上げられる可能性があります。繁忙期がこの時期に集中しがちな方は、この仕組みを知っておくだけでも見え方が変わってきます。

4. まとめにかえて

年収500万円の会社員の場合、厚生年金保険料は本人負担だけで年間約45.8万円、会社負担と合わせると約91.5万円という試算になり、「高い」と感じるのは無理もない金額です。一方で、老後の受給額の上乗せ、障害年金の3級・一時金までのカバー、遺族厚生年金の広い対象範囲といった恩恵は、同等の保障を民間の保険で用意しようとすると相応の保険料がかかる内容でもあります。

「高いからやめたい」と考えるのではなく、iDeCoの活用や算定基礎届の仕組みを踏まえた働き方の調整など、できる範囲で家計全体のバランスを取っていく視点を持ってみてください。

参考資料

和田 直子