2. 高齢者世帯は所得の6割が「年金」—土台の大きさを知る
退職後の収入の柱は公的年金です。どれだけ効いているのかを、厚生労働省の2025年(令和7年)国民生活基礎調査からみてみましょう。なお、これは先のJ-FLEC(貯蓄の調査)とは別の調査です。
2.1 1世帯当たり平均所得は全世帯575.2万円
2024年(令和6年)の1世帯当たり平均所得金額は、全世帯で575.2万円でした。内訳は稼働所得が426.2万円(うち雇用者所得397.5万円)、公的年金・恩給が111.6万円、財産所得が16.0万円です。
2.2 高齢者世帯は6割強が公的年金—老後資金の土台
これが高齢者世帯になると、総所得は336.1万円。そのうち公的年金・恩給が205.9万円を占め、稼働所得は87.1万円、財産所得は19.4万円です。総所得の6割強が年金という構成になっています。
参考までに、高齢者世帯以外の世帯は総所得700.7万円のうち稼働所得が604.1万円で、年金・恩給は62.2万円。働いて得る収入と年金の関係が、そのまま逆転しているのがわかります。
裏を返せば、高齢者世帯にとって年金は「収入の一部」ではなく「収入の土台」だということです。だからこそ、自分の年金見込み額を早めに知り、その土台で足りない分を貯蓄でどう補うかを考える順番が現実的です。60歳代の貯蓄(中央値1400万円)は、その補いのための原資といえます。
3. 編集部よりコメント
60歳代二人以上世帯の貯蓄は、平均2683万円・中央値1400万円でした。年金という土台の上に貯蓄を重ねるための3つのポイントを整理します。
一つ目は、世帯の年金見込み額を「ねんきんネット」で確かめることです。夫婦二人分を合わせていくらになるかがわかると、土台の大きさがはっきりします。
二つ目は、年金でまかなえる支出と、足りない分を分けることです。毎月の生活費から年金額を引き、不足する額を出せば、貯蓄から補うべき金額が見えてきます。
三つ目は、その不足分をもとに取り崩し計画を立てることです。月々の不足額×12カ月で年間の取り崩し額がわかり、貯蓄で何年分まかなえるかを試算できます。使う予定の遠いお金は、物価に負けにくい形で持つ選択肢もあります。
老後のお金の不安は、その多くが「土台の大きさを知らない」ことから生まれます。今回みたように、高齢者世帯は所得の6割強を公的年金が占めます。まずはご自身の年金見込み額を確かめ、毎月の生活費から差し引いて、不足額をはっきりさせることが出発点です。
そこまでできれば、貯蓄で何年分を補えるかが計算でき、漠然とした不安は具体的な計画に変わります。編集部としておすすめしたいのは、退職金や貯蓄のすべてをすぐ動かそうとせず、当面の生活費は預貯金で確保し、使う予定の遠いお金だけを物価に負けにくい形で持つという分け方です。60歳代は、年金という土台と、貯蓄という補いのバランスを設計する大切な時期。
まずは土台の大きさを知ることから、老後の家計づくりを始めてみてください。
4. まとめにかえて
今回は、60歳代二人以上世帯の平均貯蓄額(2683万円)と中央値(1400万円)を確認しました。平均が中央値を上回るのは一部の世帯が押し上げているためで、実感に近いのは中央値のほうです。
あわせて国民生活基礎調査から、高齢者世帯の総所得336.1万円のうち、公的年金・恩給が205.9万円と6割強を占めることをみました。年金は「収入の一部」ではなく「収入の土台」です。
今日からできることは3つです。まず、世帯の年金見込み額を「ねんきんネット」で確かめ、土台の大きさをつかむこと。次に、毎月の生活費から年金額を引き、足りない分をはっきりさせること。
そして、その不足分をもとに、貯蓄で何年分まかなえるかを試算し、取り崩しの計画を立てること。年金という土台を知れば、貯蓄で補う額も運用に回せる額も見えてきます。土台の大きさを確かめることから始めていきましょう。
参考資料
中本 智恵
