「今の働き方を続けられるか分からない」「パートなど非正規雇用になったら、将来の年金はどうなるのだろう」。40代になり、ライフスタイルや働き方の見直しを考えるタイミングで、こうした不安を口にする方は少なくありません。
実際、会社員から自営業やパートなどの働き方に変わると、加入する年金の種類が変わり、将来受け取れる年金額にも差が出てきます。今回は、厚生年金と国民年金の平均月額の違いや、働き方によって異なるiDeCoの掛金上限を確認したうえで、実際に40代の方から寄せられたご相談と、ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理からのアドバイスを紹介します。
- 厚生年金と国民年金の平均月額の差は、全体で月額約9万1000円
- iDeCoの掛金上限は被保険者区分によって異なり、自営業・非正規雇用等は月額6.8万円
- 2026年12月分からは掛金上限がさらに拡大予定。国民年金基金などの制度もあわせて備える
正社員から非正規雇用になると、年金はどう変わる?
会社員や公務員として厚生年金に加入している人(国民年金第2号被保険者等)と、自営業やパート・アルバイトなどで国民年金のみに加入している人(国民年金第1号被保険者等)とでは、将来受け取る年金の平均額に大きな差があります。
厚生労働省の統計によると、令和6年度末時点の厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は15万289円(男性16万9967円、女性11万1413円)です。これに対し、国民年金のみの平均年金月額は5万9310円(男性6万1595円、女性5万7582円)となっています。全体で比較すると、その差は月額約9万1000円、年額に換算すると約109万円にのぼります。
正社員から非正規雇用に働き方を変えると、厚生年金の加入期間が短くなり、将来の年金額はこの差に近づいていく可能性があります。「なんとなく減りそうで不安」という漠然とした感覚を、まずはこうした平均額の差として具体的に捉えておくことが、備えを考える第一歩になります。
国民年金だけになると、iDeCoの掛金上限も変わる
年金の受け取り方だけでなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)で上乗せできる金額も、加入している年金の種類によって変わります。
iDeCo公式サイトによると、国民年金第1号被保険者(自営業者やパート・アルバイトなどで厚生年金に加入していない人)の掛金上限は月額6.8万円(年額81.6万円)です。一方、会社員(第2号被保険者)の場合は、企業年金がなければ月額2.3万円(年額27.6万円)、企業型DCのみに加入していれば月額2万円(年額24万円)です。確定給付企業年金(DB)と企業型DCを併用している場合や公務員等は月額2万円(年額24万円)となっており、2024年12月の制度改正により、それまでの月額1.2万円(年額14.4万円)から引き上げられています。専業主婦・主夫等の第3号被保険者は月額2.3万円(年額27.6万円)です。
iDeCoの掛金上限(拠出限度額)2/2
出所:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」、厚生労働省「2024年12月からiDeCoの拠出限度額が1.2万円→2万円になります(国家公務員・地方公務員の皆さまへ)」をもとにLIMO編集部作成
興味深いのは、非正規雇用等で第1号被保険者になった場合、iDeCoの掛金上限はむしろ会社員時代より高くなるという点です。ただし、これはあくまで「上限」であり、実際にいくら拠出できるかは収入や家計の状況によって変わります。また、iDeCoは原則60歳になるまで引き出せない点にも注意が必要です。
上乗せの選択肢「国民年金基金」とは
国民年金第1号被保険者向けには、iDeCoのほかに「国民年金基金」という制度もあります。国民年金基金は、国民年金に上乗せして給付を受けられる公的な年金制度で、第1号被保険者や65歳未満の任意加入被保険者が加入できます。
ここで注意したいのが合算のルールです。iDeCoの第1号被保険者向け掛金上限(月額6.8万円)は、単独の上限額ではなく、国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料と合算した「共通の枠」になっています。そのため、国民年金基金にすでに加入している場合は、国民年金基金の掛金額とiDeCoの掛金額の合計が月額6.8万円を超えないよう、双方の金額を調整する必要があります。
2026年12月分からは掛金上限がさらに拡大予定
iDeCoの掛金上限は、確定拠出年金法等の改正を前提に、2026年12月分(2027年1月引き落とし分)からさらに引き上げられる予定です。第1号被保険者の上限は月額6.8万円から月額7.5万円(年額90万円)に引き上げられ、国民年金基金と合算する枠であることは変わりません。会社員・公務員等の第2号被保険者は、企業年金の有無や種類によって上限が分かれていたしくみが一本化され、企業年金等と合算して月額6.2万円になる見込みです。あわせて、iDeCoに加入できる年齢の上限も、現在の65歳未満から70歳未満まで広がる予定です。
これらの新しい上限額は、令和7年度税制改正大綱にもとづきすでに決定している内容ですが、2026年8月時点ではまだ施行されていません。本記事で紹介した6.8万円・2.3万円・2万円といった数字は、あくまで現時点(2026年8月)で適用されている上限額です。2026年12月分以降は新しい上限額に切り替わるため、掛金の見直しを検討する際は、いつの時点の上限額なのかを必ず確認するようにしましょう。
掛金額を見直すときは、必ずiDeCo公式サイトや加入している運営管理機関(金融機関等)で「今日時点で適用されている上限額」を確認したうえで手続きを進めるようにしましょう。

