共働きと片働きでは、現役期の世帯収入だけでなく、老後に受け取る年金の月額にも差が生まれます。どのくらい違うのかを具体的な金額で知りたいという方は多いのではないでしょうか。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業月報」(令和8年3月分)によると、いわゆる専業主婦(夫)などが該当する国民年金第3号被保険者は603万5805人で、前年同月比5.8%の減少となりました。一方で厚生年金保険の女子被保険者は増えており、共働きへの移行が数字にも表れています。

この記事では、月報に載っている標準報酬月額の平均を使って、共働き世帯と片働き世帯のモデルを組み、現役期の報酬差と老後の年金への影響を確認していきます。

この記事では、以下の記事の内容も引用・参考にしています。

【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
ココがポイント
  • 国民年金第3号被保険者は603万5805人で、前年同月比5.8%の減少
  • 標準報酬月額の平均は男子38万5406円、女子27万5130円
  • 共働き世帯モデルの世帯合計は66万536円、片働き世帯モデルは38万5406円

1. 国民年金第3号被保険者は603万5805人、前年から37万人減

まずは、共働き化を映し出している第3号被保険者の動きから見ていきます。

1.1 令和8年3月末で603万5805人

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報」(令和8年3月分)によると、国民年金第3号被保険者数は603万5805人でした。前年同月比では5.8%の減少で、人数にするとおよそ37万人減っています。

第3号被保険者は、厚生年金に加入している方に扶養されている配偶者が該当する区分です。自身で保険料を負担しなくても、老齢基礎年金を受け取るための加入期間として算入されます。

1.2 男女内訳は男13万7837人、女589万7968人

男女別に見ると、男性が13万7837人、女性が589万7968人で、女性がおよそ98%を占めています。

一方、厚生年金保険の被保険者数は4335万7069人で、このうち女子は1797万6776人です。女子被保険者は前年同月比2.4%の増加となっており、第3号被保険者の減少と対をなす動きになっています。

国民年金第3号被保険者数603万5805人の男女内訳と前年同月比1/2

国民年金第3号被保険者数603万5805人の男女内訳と前年同月比

出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月分)」をもとにLIMO編集部作成

2. 共働きと片働きで、世帯の標準報酬月額はどれだけ違うか

ここからは、月報に載っている標準報酬月額の平均を使って、2つの世帯モデルを組んで比べてみます。標準報酬月額は保険料と将来の年金額の計算に使われる金額で、老後の受給額を左右する土台にあたります。

2.1 共働き世帯モデルは世帯合計66万536円

月報によると、厚生年金保険の標準報酬月額の平均は男子38万5406円、女子27万5130円です。夫が男子平均、妻が女子平均で厚生年金に加入している共働き世帯を想定すると、世帯合計は66万536円になります。

この世帯では、老後に夫婦それぞれが老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることになります。

2.2 片働き世帯モデルは38万5406円

これに対し、夫が男子平均の標準報酬月額で、妻が第3号被保険者という片働き世帯では、世帯の標準報酬月額は夫の38万5406円だけです。妻が将来受け取るのは老齢基礎年金のみになります。

2つのモデルの差は月27万5130円です。この差が現役期を通じて続けば、老後に受け取る厚生年金の額にもそのまま反映されます。

共働き世帯モデルと片働き世帯モデルの世帯標準報酬月額の比較2/2

共働き世帯モデルと片働き世帯モデルの世帯標準報酬月額の比較

出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月分)」をもとにLIMO編集部作成

3. 標準報酬月額の男女差と、老後の受給額への波及

共働きが増えるのと並行して、報酬水準の男女差にも変化が見られます。

3.1 女子の標準報酬月額は前年比3.1%の伸び

標準報酬月額の平均は、男子が38万5406円で前年同月比2.3%の増加、女子が27万5130円で3.1%の増加でした。伸び率では女子が上回っており、差は少しずつ縮まっています。

それでも金額の差は月11万276円あります。この差が20年、30年と積み上がることで、老齢厚生年金の額にも開きが生じます。

3.2 加入期間の差は報酬差とは別に残ります

老齢厚生年金の額は、標準報酬の水準だけでなく加入期間の長さでも決まります。出産や育児で一時的に働き方を変えた期間があると、その分だけ加入期間の積み上がり方が変わります。

報酬の差が縮まっても加入期間の差が残れば、受給額の差はすぐには解消しません。世帯として老後を設計するときは、金額と期間の両方を見ておく必要があります。

和田 直子

資産運用のご相談では、ご夫婦のどちらか一方の年金額だけを見て判断されるケースが目立ちました。年金は世帯で受け取るものですから、まずは2人分の見込額を合算して確認することをおすすめします。不足額が見えてはじめて、どの制度で補うかを検討できます。

4. 【元銀行員の視点】年金は世帯合算で見ると判断しやすくなります

筆者は信託銀行で資産運用アドバイザーとして多くのお客様を担当してきました。老後資金のご相談で最初に確認していたのが、世帯としての年金見込額です。

4.1 2人分を足してはじめて不足額が見えます

共働きか片働きかにかかわらず、老後の生活費は世帯単位でかかります。片方の見込額だけを見て「足りない」と判断すると、必要以上に不安が大きくなりがちです。

夫婦それぞれのねんきんネットで見込額を出し、合算した金額といまの生活費を並べてみてください。差額がはっきりすれば、準備すべき金額も具体的になります。

4.2 片働き世帯は受給開始のタイミングも選択肢になります

世帯の年金額を増やす方法は、積み立てだけではありません。繰下げ受給を選べば1カ月あたり0.7%、最大で84%まで増額されます。

夫婦の年齢差や就労の見通しによっては、片方だけ繰り下げるという選び方もできます。世帯としてどう組み合わせるかを考える余地は、思ったより広く残されています。

5. 【落とし穴】共働きなら安心、とは限りません

世帯合計の報酬が高くても、個人ごとの受給額は働き方によって大きく変わります。

5.1 働いていても厚生年金に加入しているとは限りません

パートやアルバイトで働いている場合、勤務先の規模や労働時間によっては厚生年金に加入せず、第3号被保険者のままというケースがあります。

加入しているかどうかは給与明細で確認できます。厚生年金保険料の欄に天引きの記載があるかどうかを見てみてください。記載がなければ、将来受け取るのは老齢基礎年金のみになります。

5.2 加入要件は今後さらに広がります

2025年6月に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の社会保険の加入対象が広がります。企業規模要件は10年をかけて段階的に縮小・撤廃され、賃金要件は法律の公布から3年以内に撤廃される予定です。

厚生労働省は、賃金要件の撤廃時期について全国の最低賃金が1016円以上となることを見極めて判断するとしています。撤廃後は週の所定労働時間が20時間以上であることが要件として残ります。

6. 【対応策】働き方に応じた年金設計の組み立て方

世帯の形によって、力を入れるところは変わります。

6.1 共働き世帯は世帯合算の見込額から逆算する

夫婦それぞれが厚生年金に加入している世帯では、まず世帯合算の見込額を出します。そのうえで、現役期の生活水準に対してどの程度下がるのかを確認します。

下がり幅が小さいのであれば、無理に運用でリスクを取る必要はありません。手元資金の置き場所を整えるほうが優先度は高くなります。

6.2 片働き世帯は配偶者名義の準備も検討する

第3号被保険者である配偶者が将来受け取るのは老齢基礎年金のみです。世帯として余裕を持たせたい場合、配偶者名義でNISAのつみたて投資枠やiDeCoを使うことも選択肢になります。

掛金が全額所得控除になるのはiDeCoで、NISAに所得控除はありません。収入のない配偶者の場合は所得控除の効果が働かないため、運用益が非課税になるNISAのほうが使いやすい場面もあります。いずれも元本割れの可能性がある点はご留意ください。

6.3 パート勤務なら加入要件の変化を前提に働き方を見直す

適用拡大が進めば、これまで対象外だった勤務先でも厚生年金に加入することになります。保険料の負担は増えますが、その分だけ将来受け取る老齢厚生年金は積み上がります。

手取りが減ることだけを見て就業時間を抑えると、老後の受給額を自分から小さくしてしまうことにもなりかねません。目先の手取りと将来の年金の両方を並べて考えてみてください。

7. まとめにかえて

国民年金第3号被保険者は603万5805人まで減り、共働きへの移行が続いています。それでもなお600万人規模の方が、保険料の負担なく老齢基礎年金の加入期間を積み上げている状況です。

共働き世帯モデルと片働き世帯モデルの標準報酬月額の差は月27万5130円で、この差は老後の受給額にも波及します。ただし世帯としての備えは、年金だけで決まるわけではありません。

まずは夫婦2人分の年金見込額を合算し、生活費と並べてみることから始めてみてください。不足額が見えたうえで、受給開始時期の選び方や資産形成の方法を組み合わせていくのが現実的な進め方です。

参考資料

和田 直子