「ねんきん定期便」を見て、将来の年金の見込額を確認したことがある人は多いと思います。

仮にその金額を見て「これなら大丈夫そうだ」と安心してしまうのは、少し早いかもしれません。

年金額は物価や賃金の変動に応じて見直されますが、年金制度を長期的に維持するための仕組みによって、その伸びは物価の上昇ペースに追いつかないよう設計されているためです。

この記事では、厚生年金・国民年金の平均額と受給額の分布を確認したうえで、ねんきん定期便の見込額が月5万〜15万円だった場合の単身世帯を例に、老後30年間でどれくらいの資金が不足する可能性があるのかをシミュレーションします。物価が上昇し続けた場合の影響も含めて、老後資金をいくら準備すべきか考えるステップとして解説していきます。

 

この記事では以下の記事を一部引用しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

この記事の3つのポイント

  •  厚生年金は月10万円未満の受給者が20万円以上より多い(19.0%対18.8%)
  •  年金額は物価に追いつかず、実質的に目減りする可能性がある
  •  年金見込額が月15万円でも、物価上昇が続けば30年で386万円ほど不足する可能性も

公的年金「2階建て構造」1階・2階のしくみを整理

日本の公的年金制度は「2階建て」1/4

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

公的年金は、原則として偶数月の15日に2カ月分まとめて支給されます(15日が土日祝日の場合は直前の平日)。この年金は、「国民年金(基礎年金)」を1階部分、「厚生年金」を2階部分とする2階建て構造になっており、それぞれ加入対象や保険料の決まり方が異なります。

1階部分「国民年金」の基本

  • 加入対象:原則として、日本に住む20歳以上60歳未満の全員
  • 年金保険料:全員一律(※1)
  • 老後の受給額:40年間(480カ月)欠かさず納めれば満額受給(※2)
  • 被保険者:第1号~第3号(※3)

※1 国民年金保険料の月額:2026年度 1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2026年度 7万608円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者

2階部分「厚生年金」の基本

  • 加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした人が、国民年金に上乗せで加入
  • 年金保険料:収入に応じて決まる報酬比例制(※5)
  • 老後の受給額:年金加入期間や納付済保険料によって、個人差が出る
  • 被保険者:第1号~第4号(※6)

※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者

筒井 亮鳳
厚生年金の保険料が「収入に応じて決まる報酬比例制」であるという点は、見方を変えれば、現役時代の働き方や収入がそのまま将来の年金額に反映される制度だということです。国民年金のように保険料が一律であれば受給額の差も生まれにくいのですが、厚生年金は収入が高いほど保険料も年金額も増えていく構造になっています。今の収入や勤続年数の積み重ねが、老後の年金額をどれだけ左右するかを意識しておくと、将来の見通しも立てやすくなります。

厚生年金・国民年金、平均額はどれくらい?

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、それぞれの平均年金月額を確認します。

※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)2/4

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の平均月額(全体・男女別)

  • 男女全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。

国民年金の平均月額(全体・男女別)

  • 男女全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金は保険料が一律であるため、受給額の男女差も比較的小さく、男性が月6万円台、女性が月5万円台にとどまっています。国民年金だけで月10万円以上を受け取るのは、制度上ほぼ不可能といえるでしょう。

一方の厚生年金は、収入に比例して保険料が決まる分、受給額にも大きな個人差が生まれます。

厚生年金・国民年金それぞれの平均額(15万289円・5万9310円)を踏まえると、世帯に1人でも年金月額が20万円を超える人がいれば、年金収入だけで生活費の大部分をカバーできる可能性が高まります。

一方、国民年金のみで生活費全体を賄うのは現実的に難しく、1人あたり月10万円程度が、公的年金を軸に生活を組み立てられるかどうかの一つの目安になりそうです。

年金額「月10万円未満」と「月20万円以上」、どちらが多い?

厚生年金の受給額は、加入期間の長さとその間の収入によって大きな個人差が出ます。厚生年金(国民年金部分を含む)の年金月額分布を見ていきましょう。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数3/4

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金:受給額ごとの人数

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

この分布を集計すると、厚生年金(国民年金を含む)の受給権者(男女全体)は次のようになります。

  • 月額10万円未満:19.0%
  • 月額20万円以上:18.8%

高額受給者である「20万円以上」よりも、「10万円未満」の受給権者の方がわずかに多いという結果です。年金生活が始まってから慌てないよう、具体的な資金計画は余裕をもって立てておきたいところです。

【参考データ】厚生年金(男女全体)の受給額分布

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

これらの割合は、厚生年金(国民年金を含む)を受給している人に限ったデータです。ここに国民年金のみを受け取っている人を加えて全体で考えると、「月10万円未満」の割合はさらに増え、「月20万円以上」の割合はさらに減ることが推測されます。

筒井 亮鳳
厚生年金(国民年金を含む)を受給している人のうち、月10万円未満の方が19.0%、月20万円以上の方が18.8%と、月10万円未満の方がわずかに上回るというデータは、多くの方にとって意外に感じられるかもしれません。これに国民年金のみを受け取る方を合わせれば、受給額が10万円未満となる割合はさらに増えると考えられます。年金だけで生活費のすべてをまかなえる人は決して多くはないという前提で、老後資金を準備しておくことが大切です。