4. 繰上げ受給を選ぶ前に知っておきたい注意点

繰上げ受給には、減額以外にもいくつか押さえておきたい注意点があります。

まず、繰上げ請求後は国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなります。

また、65歳になるまでの間は、繰上げた老齢年金と遺族厚生年金などを同時に受け取ることはできず、どちらか一方を選ぶことになります。加えて、繰上げ請求をした日以後は国民年金の寡婦年金が支給されなくなり(受給中の方は権利そのものがなくなります)、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金の請求もできなくなります。

65歳になるまでの間に雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付を受け取る場合は、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となることもあります(老齢基礎年金は停止されません)。

繰上げ受給を選ぶ前に確認したい注意点3/3

繰上げ受給を選ぶ前に確認したい注意点

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとにLIMO編集部作成

和田 直子
繰上げ受給は「早く受け取れる」というメリットだけで判断しがちですが、実際には寡婦年金や障害年金、遺族厚生年金との関係など、細かな制約がいくつも付いてきます。特に、まだ会社員として働いていて雇用保険の給付を受ける可能性がある方や、持病があり将来的に障害年金の請求を考えている方は、これらの制約が実際に自分に当てはまるかどうかを、請求前によく確認しておくことをおすすめします。

5. 実際に繰上げ受給を選んでいる人はどれくらいいる?

厚生労働省の統計によると、令和6年度末時点で、国民年金(基礎のみ・旧国年)の受給権者のうち繰上げ受給を選んでいる人の割合は23.2%となっています。

また、老齢基礎年金の受給者の平均年金月額を繰上げ・本来・繰下げの別でみると、繰上げは46,448円、本来(65歳受給開始)は60,503円となっており、繰上げを選んだ人の平均受給額は本来の受給開始より1万円以上少ない水準にとどまっています。

6. まとめ

年金の繰上げ受給は、65歳より早く年金を受け取れる一方で、その減額率は一生涯変わらず、請求後に取り消すこともできません。見込額が月10万円のケースでは、60歳で繰り上げると月額は76,000円まで下がり、この差は生涯にわたって続きます。寡婦年金や障害年金、遺族厚生年金との関係など、金額以外の注意点も少なくないため、早めに受け取りたい理由と、生涯続く減額とを照らし合わせたうえで判断することが大切です。

参考資料

和田 直子