4. 「年金だけでは足りない」高齢者世帯の家計の実態

では、実際に年金を受け取っている世帯の家計は、どれくらい厳しいのでしょうか。

厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯(65歳以上のみで構成される世帯)のうち、生活意識を「苦しい」と答えた世帯は55.8%にのぼります。

4.1 では実際の家計収支はどうなっているのか

※家計収支・貯蓄データについては「【ふつうのシニア】「年金だけでは赤字続きです…」70歳代の平均貯蓄額と中央値・生活費・年金月額はいくら? 65歳以上・高齢者世帯の55.8%が「生活が苦しい」と回答」を一部引用しています。

70〜74歳の家計収支

  • 消費支出:月28万5844円
  • 収支の差(赤字):月約3万7000円

75歳以上の家計収支

  • 消費支出:月24万8460円
  • 収支の差(赤字):月約2万7000円

高齢者世帯の55.8%が生活を「苦しい」と感じ、70歳代の家計は年齢層を問わず月2万〜4万円規模の赤字が生じているのが実態です。

5. 「平均」だけでは見えない、70歳代の貯蓄格差

毎月の赤字を埋める役割を果たすのが、それまでに積み上げてきた貯蓄です。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によれば、70歳代の貯蓄額は平均2416万円ですが、中央値は1178万円にとどまります。

3/3


<!--td {border: 1px solid #cccccc;}br {mso-data-placement:same-cell;}-->

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 平均値:2416万円
  • 中央値:1178万円

平均値が中央値の2倍以上になっているのは、一部の資産家世帯が平均を押し上げているためで、多くの世帯は中央値に近い貯蓄額にとどまっていると考えられます。

公的年金の受給額は現役時代の働き方でほぼ決まっており、あとから大きく増やすことは簡単ではありません。

その分、現役時代からの貯蓄や資産形成が、老後の家計を左右する要素として大きくなっています。

6. 監修者からのコメント

熊谷 良子

70歳代の貯蓄格差を見ると、「平均だけを見て安心する」ことの危うさが分かります。

公的年金の受給額を後から大きく増やすことは難しいですが、現役時代からの資産形成であれば、時間を味方につけられます。

2024年からの新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠を合わせて年間360万円まで投資でき、非課税で保有できる期間も無期限化されました。

iDeCoも掛金が全額所得控除の対象になるなど、NISAとは異なる税制上のメリットがあります。

少額からでも新NISAやiDeCoの仕組みを理解し、無理のない範囲で老後資金づくりを始めておくことが、将来の家計の選択肢を広げることにつながります。
 

7. まとめにかえて|年金額の「現在地」を知ることから始める老後設計

2026年度の年金額改定は、国民年金・厚生年金ともにプラス改定となりましたが、実際の受給額は年収や勤続年数、働き方によって大きく変わります。

まずは「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」で、自分自身の見込み受給額を確認することが、老後の家計を考える出発点になります。

そのうえで、公的年金だけに頼らず、NISAやiDeCoといった制度も含めて、無理のない範囲で資産形成を検討することが、老後の選択肢を広げることにつながるでしょう。

まずは自分の年金額と家計の数字を、正しく把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

池上 翠