今年の夏、帰省中のお子さんやお孫さんから「テレビの音、大きくない?」「聞き返すことが増えたね」と指摘された年金エイジの方もいらっしゃるかもしれません。
いざ補聴器を検討しても、「10万〜30万円」という相場に驚き、購入をためらう方も多いでしょう。
年金生活でこの出費は小さくありませんが、実は条件を満たせば「医療費控除」で税金が戻り、自治体独自の「補聴器購入費助成」を受けられる場合もあります。
本記事では、年金受給者が知っておきたい医療費控除の要件と手続きの順序、そして自治体の補助制度の実態を整理します。
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補聴器は片耳10万〜30万円程度が相場だが、条件を満たせば医療費控除で税金の一部が還付される可能性がある
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医療費控除を受けるには「購入前」に補聴器相談医の診察が必須で、順番を誤ると医療費控除の対象外になってしまう
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障害者手帳がなくても、全国約622自治体(全体の35.6%)が独自に補聴器購入費助成を実施しており、上限額は3万万円程度が多い
1. 補聴器は10万〜30万円の壁 医療費控除で本当にお金は戻るのか
補聴器は障害者総合支援法の補装具費支給制度の対象になる重度の難聴を除き、基本的に全額自己負担での購入となり、片耳でも10万〜30万円程度が相場です。
年金生活者にとって、この金額は大きな負担に感じられるでしょう。
意外に知られていませんが、2018年(平成30年)から一定の条件を満たすことで、補聴器の購入費用が医療費控除の対象になりました。
国税庁が公表している情報によれば、年金受給者であっても所得税や住民税を納めている方は、確定申告によって税金が還付・軽減される可能性があります。
ただし、「購入して領収書を出せばよい」というわけではなく、厳格な要件と手続きの順序を守る必要があります。
- Step1:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する「補聴器相談医」を受診する
- Step2:医師に「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を作成してもらう
- Step3:診療情報提供書を持って補聴器を購入する
最大の注意点は、必ず「補聴器を購入する前」に補聴器相談医を受診しなければならないことです。
先に補聴器を買ってから後で医師に診療情報提供書を書いてもらう、という順番は認められず、医療費控除の対象外になってしまいます。
どの耳鼻咽喉科でもよいわけではなく、「補聴器相談医」の資格を持つ医師を探す必要がある点にも注意しましょう。
なお、医療費控除の要件そのものは購入先の店舗を法的に限定するものではありませんが、医師が交付する診療情報提供書は「認定補聴器専門店」または「認定補聴器技能者」宛ての書式になっており、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のQ&Aでは、宛先欄が空欄・不適切な場合や、宛先と異なる一般の販売店(家電量販店や眼鏡店など)で購入した場合に、医療費控除が認められない可能性があると案内されています。
トラブルを避けるためにも、書類の宛先である認定補聴器専門店(認定補聴器技能者が在籍する店舗)で購入するのが安全です。
控除される金額は、その年に支払った医療費(保険金や自治体補助を受けた場合はその額を差し引いた自己負担分)の合計から、10万円と総所得金額等の5%のいずれか少ない方を差し引いた額が対象になります(最高200万円)。
実際に戻る金額は所得税率によって変わるため、確定申告の際に税務署や確定申告書等作成コーナーで試算するとよいでしょう。
2. 障害者手帳がなくても使える 自治体独自の補聴器購入費助成
「うちは非課税世帯だから医療費控除は関係ない」「障害者手帳をもらうほど聞こえは悪くない」という方も、諦めるのはまだ早いかもしれません。
現在、多くの市区町村が、障害者手帳の対象にならない軽度〜中等度難聴の高齢者を対象に、独自の「補聴器購入費助成事業」を実施しています。
制度の内容は自治体によって異なりますが、一例として「横浜市難聴者補聴器購入費助成事業」の対象について見てみましょう。
申請日時点で横浜市に住民票がある50歳以上の方(今年度50歳となる方も含む)
市民税非課税世帯に属する方(生活保護法による保護を受けている世帯を含む)
両耳の聴力レベルが30デシベル以上で、補聴器を使う必要があると、耳鼻咽喉科補聴器相談医(※)から証明が得られる方
※聴力レベルは30デシベル未満だが、補聴器の必要性を認めると補聴器相談医が判断した場合も含む
身体障害者手帳(聴覚障害)を交付されていない方、または交付対象でない方
補聴器装用前、装用後アンケートに回答できる方
本事業以外の本市の助成により補聴器の購入費の支給を受けていない方
過去に本事業による助成金の交付決定を受けていない方
暴力団員でないこと
(※)補聴器相談医:一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から委嘱された耳鼻咽喉科専門医(中略)
助成額
上限:20,000円
※令和8年4月1日より前に購入されたものについては、助成の対象となりません。
※管理医療機器の補聴器の購入費が助成対象であり、医療機器認定を受けていない集音器や付属品のみ、修理やメンテナンス等の費用は助成対象外です。
※購入に要する費用と助成上限額(20,000円)のいずれか低い額を助成します。引用:横浜市「横浜市難聴者補聴器購入費助成事業のご案内」
これらの制度の多くは、購入前の申請が必須です。
補聴器店に行く前に、まずはお住まいの市区町村の「高齢者福祉課」や「地域包括支援センター」に、「高齢者向けの補聴器助成金はありますか」と問い合わせてみましょう。
なお、自治体から補助金を受け取った場合、その金額は医療費控除の対象額から差し引く必要がある点も覚えておいてください。
3. 筆者からのコメント
医療費控除は、実は本人だけでなく「生計を一にする配偶者やその他の親族」の医療費もまとめて申告できる制度です。
国税庁の案内(No.1120)によれば、家族の通院費や薬代なども合算できるため、単身で10万円の壁を超えられなくても、家族の医療費と合わせれば対象になるケースは少なくありません。
補聴器の領収書だけでなく、一年間の家族の医療費の領収書もまとめて保管しておくと安心です。
なお控除額の計算では自治体の補助金を差し引く必要があるため、購入前に窓口や税務署であわせて確認しておきましょう。


