2. そもそも「ふるさと納税」とはどんな制度?
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄附をすると、寄附額のうち2000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。
控除には上限額があり、上限内で寄附をすれば、実質的な自己負担は2000円のみで、あわせて自治体からの返礼品も受け取れます。
控除の中心となるのは住民税です。寄附をした翌年度の住民税から、寄附金控除として差し引かれる仕組みになっているため、そもそも住民税を納めていない人は、控除を受ける対象自体が存在しないことになります。つまり「ふるさと納税で得をする」という仕組みは、住民税や所得税を納めていることが大前提なのです。
3. 年金はいくらから税金がかかる?非課税ラインを確認
年金にかかる税金は、年金額から「公的年金等控除」と「基礎控除」などを差し引いた金額に対して計算されます。
公的年金等控除の金額は年齢によって異なり、65歳以上の場合は最低110万円、65歳未満の場合は最低60万円です。
ここに基礎控除などを加味すると、年金収入のみの場合に税金がかかり始めるラインの目安は次のようになります。
※本記事の税額の基準は、令和8年(2026年)分の税制に基づいています。
令和8年分の所得税については、令和8年11月の年金支払いまでは改正前の基礎的控除額を用いて源泉徴収を行い、令和8年12月の年金支払い時に、改正後の所定の基礎的控除額を用いて計算した1年分の税額と、すでに源泉徴収した税額との精算を行います。
この精算により還付すべき金額が生じる場合には、原則として、その金額を還付します。
※以下の年金額はいずれも「1級地」(東京23区や大阪市など、生活費水準が高いとされる地域)を基準とした住民税の非課税ラインです。お住まいの自治体(2級地・3級地等)によっては、これより低い金額で住民税がかかり始める場合があります。正確な基準は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
- 65歳以上・単身:年金収入が155万円を超えると住民税、205万円を超えると所得税(源泉徴収)の対象となる
- 65歳以上・夫婦(年金のみ):世帯主の年金収入が211万円を超えると住民税、205万円を超えると所得税(源泉徴収)の対象となる
- 65歳未満・単身:年金収入が105万円を超えると住民税、155万円を超えると所得税(源泉徴収)の対象となる
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65歳未満・夫婦(年金のみ):世帯主の年金収入が171.3万円を超えると住民税、155万円を超えると所得税(源泉徴収)の対象となる
※所得税は、単身・夫婦問わず「受給者本人」の年金額が基準となるため、世帯主本人の所得税基準は単身の場合と同じ205万円/155万円となります
住民税の非課税ラインを下回っている場合、ふるさと納税をしても控除の対象となる住民税自体が発生しません。寄附をしても控除で戻ってくる分がなく、寄附金全額が実質的な負担になってしまう点には注意が必要です。逆に言えば、年金額が住民税の非課税ラインを上回り、実際に住民税を納めている方であれば、ふるさと納税による控除メリットを受けられる可能性があるということです。
4. 年金受給者がふるさと納税をする際の注意点
4.1 控除上限額は年金額に応じて事前に確認する
控除上限額は、年金額や年齢、家族構成によって細かく変わります。ふるさと納税のポータルサイトなどが提供している控除上限額シミュレーターを使い、実際の年金収入をもとに上限額を確認したうえで寄附額を決めましょう。上限額を超えて寄附をした場合、超えた部分は控除されず、そのまま自己負担になります。
4.2 ワンストップ特例と確定申告の関係に注意する
公的年金等の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下の方は、原則として確定申告が不要です。この場合、ふるさと納税先が5自治体以内であれば、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告をせずに寄附金控除を受けられます。
ただし、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請をしていても、その申請は無効になります。とはいえ、これは「ふるさと納税の控除自体を諦めなければならない」という意味ではありません。確定申告書にふるさと納税の寄附金控除もあわせて記載して申告し直せば、通常どおり控除を受けられます。ワンストップ特例が無効になった場合は、寄附金控除の記載を忘れずに確定申告を行うようにしましょう。
4.3 配偶者控除・扶養控除への影響を確認する
ふるさと納税による寄附金控除は、寄附をした本人の税額から控除されるものであり、年金収入そのものを減らす制度ではありません。そのため、配偶者控除や扶養控除の判定に使われる年金収入額(合計所得金額)には影響しません。もっとも、家族構成によって控除上限額の算出結果が変わるため、シミュレーターには正確な家族構成を入力するようにしましょう。
5. まとめ:年金額が非課税ラインを超えたら、上限額を確認して活用を
ふるさと納税は、住民税や所得税を納めている人にとって、自己負担2000円で返礼品を受け取れるお得な制度です。
しかし、年金額が住民税の非課税ライン(65歳以上・単身の場合は155万円程度)を下回っている場合は、控除の対象となる税金自体が発生しないため、メリットを受けられません。年金額が非課税ラインを超えている方は、まず控除上限額をシミュレーターで確認し、ワンストップ特例と確定申告の関係にも注意しながら活用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
- 日本年金機構「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」
- 総務省「ふるさと納税のしくみ」
和田 直子

