65歳を迎えて年金生活に入ると、公的年金が収入の中心になる人も多いでしょう。
月15万円の年金があれば、生活費をある程度まかなえそうに思えますが、実際には税金や社会保険料がかかるため、15万円をそのまま使えるわけではありません。
本記事では、65歳の単身者をモデルに、年金月額15万円から差し引かれる税金・社会保険料と、実際の手取り額を試算します。
あわせて、定年までに整理しておきたいお金について確認していきましょう。
なお、厚生年金の受給額に関する統計データは、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金の平均年金月額は15万289円。受給権者のうち月額15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%にのぼる
- 年金からは介護保険料・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)・所得税・住民税など、最大4つの項目が天引きされることがある
- 65歳・単身・年金月15万円のモデルケースで試算すると、実際の手取り額は月額約13万6800円という結果に
1. シニアが受け取っている「平均年金額」はいくら?
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者の平均年金月額は15万289円です。
この平均年金月額には、老齢基礎年金(国民年金)部分も含まれています。
ただし、実際に受け取れる年金額は、厚生年金に加入していた期間や現役時代の給与・賞与などによって異なるため、すべての人が平均額と同程度の年金を受け取れるわけではありません。
老後の家計を考える際は、平均額ではなく、自分が受け取れる金額を把握しておくことが大切です。
実際にどの程度の割合の受給者が月15万円以上を受け取っているのかについて、「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント 日本の公的年金制度の仕組みをおさらい!ライフイベント別の年金手続き(転職・退職・住所変更・死亡)も」から要点を引用して確認してみます。
厚生労働省年金局の資料によると、厚生年金の受給権者のうち、月額15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%にのぼります。
また、年金の見込額や平均額として示されるのは、基本的に税金や社会保険料が差し引かれる前の「額面」であり、実際に生活費として使える「手取り額」は、額面より少なくなります。
次章では、公的年金から差し引かれる主なお金について確認していきましょう。
2. 公的年金から引かれる主なお金は4つ
公的年金から差し引かれることがある主なお金は、次の4つです。
【年金から差し引かれることがあるお金】
- 介護保険料:社会保険料
- 健康保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料):社会保険料
- 所得税・復興特別所得税:税金
- 住民税・森林環境税:税金
65歳以上になると、介護保険料は健康保険料と分けて納めます。
健康保険については、75歳未満で国民健康保険に加入する場合は国民健康保険料、75歳以降は原則として後期高齢者医療保険料を負担します。
ただし、これらがすべての人に必ず年金から天引きされるわけではありません。年金額や所得、自治体、世帯の状況などによって、納付方法や負担額は異なります。
では、厚生年金の平均額に近い「月15万円」の場合、実際に差し引かれる税金・社会保険料および年金の手取り額はどのくらいになるのでしょうか。
3. 厚生年金「月15万円」の手取り額はいくら?
今回は、次の条件で手取り額を試算します。
- 65歳
- 単身世帯
- 公的年金は月15万円、年180万円
- 公的年金以外の所得はない
- 扶養親族はいない
- 東京都港区に居住
- 国民健康保険に加入
- 前年も年金収入のみ
- 2026年度の保険料率・2026年分の所得税制などを使用
国民健康保険料や介護保険料、住民税は、前年の所得や居住する自治体などによって金額が変わります。
そのため、今回の結果は全国共通の金額ではなく、一つの目安として確認してください。
まずは、国民健康保険料と介護保険料を試算していきましょう。
3.1 【社会保険料】国民健康保険料は年間約6万2100円
65歳以上で公的年金収入が年180万円の場合、公的年金等控除110万円を差し引いた所得は70万円です。
国民健康保険料の所得割を計算する際は、さらに基礎控除43万円を差し引くため、保険料の計算に使う賦課基準額は27万円となります。
【賦課基準額】180万円-110万円-43万円=27万円
2026年度の港区の国民健康保険料は、基礎分、後期高齢者支援金分、子ども・子育て支援金分の合計で決まります。
それぞれに、所得に応じた「所得割」と加入者数に応じた「均等割」があります。
【区分:所得割率/均等割額】
- 基礎分:7.51%/4万7600円
- 後期高齢者支援金分:2.80%/1万7600円
- 子ども・子育て支援金分:0.27%/1873円
今回のモデルでは、世帯所得が港区の均等割5割軽減の基準内に収まります。所得割と軽減後の均等割を合計すると、国民健康保険料は年間約6万2100円、月額換算では約5200円です。
なお、国民健康保険料は自治体ごとに料率や均等割額が異なるため、実際の金額は、居住する自治体の試算ページや納入通知書で確認しましょう。
3.2 【社会保険料】介護保険料は年間8万640円
65歳以上の介護保険料は、本人や世帯の住民税課税状況、前年の所得などによって決まります。
港区では、本人が住民税課税で合計所得金額が125万円未満の場合、第6段階に該当します。
今回のモデルでは合計所得金額が70万円となるため、第6段階に該当し、介護保険料は年間8万640円、月額換算では6720円です。
介護保険料は自治体によって異なるため、別の地域に住んでいる場合は金額が変わる点に留意しておきましょう。
3.3 【税金】所得税・復興特別所得税は0円
2026年分から、65歳以上の人で所得税の源泉徴収の対象となる年金額は205万円以上に引き上げられました。
今回のモデルは年金収入180万円であるため、年金から所得税・復興特別所得税が源泉徴収される対象にはなりません。
また、2026年分の所得税では基礎控除が見直され、合計所得金額132万円以下の場合の基礎控除は95万円となっています。
今回のモデルでは、公的年金等控除110万円を差し引いた年金所得が70万円です。ここから社会保険料控除約14万3000円と基礎控除95万円を差し引くと、所得税の課税所得は0円となります。
【所得税の課税所得】70万円-約14万3000円-95万円<0円
したがって、今回の条件では所得税・復興特別所得税は0円です。
なお、公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下など、一定の条件を満たす場合には、所得税等の確定申告が不要となる制度があります。ただし、これは税金そのものが免除される制度ではありません。また、住民税については別途申告が必要となる場合があります。
3.4 【税金】住民税・森林環境税は年間約1万5200円
65歳以上の単身者で収入が公的年金のみの場合、港区で住民税が非課税となる年金収入の目安は155万円以下です。
今回の年金収入は180万円であり、非課税となる目安を上回るため、住民税が課税されます。
住民税の所得割は、年金収入から公的年金等控除、社会保険料控除、基礎控除などを差し引いて計算します。
今回のモデルでは、年金収入180万円から公的年金等控除110万円を差し引いた所得は70万円です。ここから国民健康保険料と介護保険料の合計約14万3000円、基礎控除43万円を差し引くと、課税所得は約12万7000円となります。
【住民税の課税所得】70万円-約14万3000円-43万円=約12万7000円
この課税所得に対する所得割から調整控除を差し引き、均等割と森林環境税を加えると、住民税・森林環境税は年間約1万5200円となります。
なお、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、今回の試算では前年も年金収入のみで、年金収入が180万円だったと仮定しています。
4. 厚生年金「月15万円」の手取り額は約13万6800円
ここまでの試算結果をまとめると、次のとおりです。
今回のモデルでは、年金月額15万円に対し、税金と社会保険料の負担は年間約15万8000円、月平均では約1万3200円です。
そのため、年間180万円の年金から税金・社会保険料を差し引いた実質的な手取り額は年間約164万2000円、月額では約13万6800円となります。
ただし、この試算は、前年も年金収入のみだった65歳の単身者が東京都港区に住み、国民健康保険に加入しているケースを想定したものです。
自治体や世帯構成、控除の状況などによって、手取り額は前後する点に留意しておきましょう。






