4. 2割負担の対象拡大、結論は先送りに――介護保険制度の見直し動向

介護保険をめぐっては、自己負担割合が2割となる「一定以上所得者」の対象を広げるかどうかが、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会で継続的に議論されてきました。

仮に対象が拡大されれば、これまで1割負担だった人の一部が2割負担に切り替わる可能性があります。

ただし、2025年12月に部会がまとめた意見では、2割負担の対象拡大は結論が持ち越され、引き続きの検討課題として整理されたと報じられています。

制度改正の要否や実施時期はこの記事の時点で確定しておらず、今後の審議で方針が変わる可能性もあります。

介護保険部会の資料は厚生労働省のサイトで随時更新されるため、最新の議論状況は公式資料でご確認ください。

5. 「備えていない」6割超。介護資金と家計の貯蓄、実際のギャップ

制度がどう変わるにせよ、介護費用の一部を自己負担する構造そのものは変わりません。

では家計側の備えはどうでしょうか。老人ホーム検索サイト『LIFULL 介護』が2026年6月に実施した調査(親世代・子世代を対象、各300人前後)では、介護費用について「わからない」と答えた親世代が42.1%に上り、「備えていない」人はおよそ6割を占めました。

介護費用として2000万円以上を準備できていると答えた人は6.2%にとどまります。

同社の試算では、在宅介護1年+有料老人ホーム5年を想定した場合の総額は2295.6万円になるとしています。

5.1 では50歳代・60歳代の貯蓄事情は?

一方、家計全体の貯蓄状況を見ると、金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」(二人以上世帯調査)では、金融資産保有額の平均は1940万円である一方、中央値は720万円と大きな差があります。

※貯蓄額データについては「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」」を一部引用しています。

50歳代・二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

  • 金融資産非保有:18.2%
  • 100万円未満:6.5%
  • 100~200万円未満:6.4%
  • 200~300万円未満:4.1%
  • 300~400万円未満:3.5%
  • 400~500万円未満:2.2%
  • 500~700万円未満:6.7%
  • 700~1000万円未満:7.7%
  • 1000~1500万円未満:9.3%
  • 1500~2000万円未満:6.1%
  • 2000~3000万円未満:8.1%
  • 3000万円以上:18.8%
  • 無回答:2.2%
  • 平均:1908万円
  • 中央値:700万円

60歳代・二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

  • 金融資産非保有:12.8%
  • 100万円未満:4.7%
  • 100~200万円未満:3.9%
  • 200~300万円未満:3.0%
  • 300~400万円未満:2.8%
  • 400~500万円未満:1.8%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:6.3%
  • 1000~1500万円未満:8.9%
  • 1500~2000万円未満:8.0%
  • 2000~3000万円未満:12.4%
  • 3000万円以上:27.2%
  • 無回答:2.0%
  • 平均:2683万円
  • 中央値:1400万円

年代別に見ると、50歳代の二人以上世帯は平均1908万円・中央値700万円、60代の二人以上世帯は平均2683万円・中央値1400万円となっています。

平均値は資産の多い一部の世帯に引き上げられやすいため、中央値のほうが実態に近いとされています。

本文で試算した介護費用総額(約542万円)と照らし合わせると、中央値ベースでは決して余裕のある水準とは言えない世帯も少なくないでしょう。

6. まとめにかえて|「介護資金」は早めに数字で確認しておきたい

介護費用は月々の負担に加えて一時的な費用もかかり、平均だけで見ても総額500万円を超える規模になり得ます。

しかも自己負担割合は所得によって変わり、制度自体も見直しが議論され続けています。

まずは自分や親がどの負担割合に該当するのか、介護保険負担割合証などで確認し、家計の貯蓄が「平均」ではなく「中央値」に近い水準だとしたら何年分をまかなえるのかを、一度具体的な数字で棚卸ししておきたいところです。

判断に迷う場合は、お住まいの地域包括支援センターや自治体の窓口、厚生労働省が公表する最新資料を確認することをおすすめします。

7. 【筆者コメント】

熊谷 良子

筆者自身、認知症になった家族を老人ホームに入居させた経験があります。そのとき痛感したのは、介護費用は「いつから、いくらかかるか」が非常に見えにくいということです。

教育資金や住宅資金であれば、進学の時期や返済計画である程度コントロールできますが、介護は本人の状態次第で始まる時期も期間も変わり、人生の三大資金の中でも見通しを立てにくく、コントロールしづらい部類に入ります。

さらに厄介なのは、本人が認知症などで判断能力を失うと、金融機関の窓口で口座が凍結され、せっかく貯めてきた老後資金があっても、家族がすんなり引き出して使えるとは限らないケースがあることです。

こうした事態に備えるには、判断能力があるうちに家族信託を設定したり、金融機関の代理人カードを用意しておいたりすることが有効です。今はまだ介護と縁遠いと感じている「介護予備軍」の方にこそ、早めに知っておいてほしいと感じています。

参考資料