3. 60代に多い「物価が上がっていく中で、現金ばかりに偏っていて大丈夫なのか」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・川勝隆登が伝えたいこと

年金を65歳で受け取るか、それとも繰り下げて受給額を増やすべきか、迷うという声はよく聞かれます。繰り下げれば毎月の受給額は増えますが、受給開始までの生活費をどう賄うかや、インフレによって年金の実質的な価値が目減りしないかといった点を心配される方が多いようです。

3.1 60代に多いお悩み相談は「物価が上がっていく中で、現金ばかりに偏っていて大丈夫なのか」

60代のお客様
退職を視野に入れています。70歳からの年金受給を控える中で、今後の生活設計に不安を抱えています。まとまった預貯金はありますが、現在の仕事がいつまで続けられるか不確実な面があり、退職後の生活費や旅行資金が十分に足りるのか懸念しています。「物価が上がっていく中で、現金ばかりに偏っていて大丈夫なのか。何か対策をしなければいけないと感じている」というのが、最初の率直な悩みです。年金の繰り下げ受給を予定していますが、それまでの期間の生活資金への不安と、物価上昇による資産の目減りという二つの課題に直面し、どのように準備を進めればよいか迷っています。

3.2 【ファイナンシャルアドバイザー・川勝隆登が回答】インフレと受給時期を見据えた資産準備

川勝 隆登
損得だけで正解を決めつける前に、インフレへの備えを固め、受給開始までのキャッシュフローを確保し、自身で管理できるシンプルな運用方法を選んでいくことが、安心できる老後設計の出発点になります。今後もインフレが進めば、より生活が苦しくなる可能性がありますので、そうなる前に早いタイミングから対策しておきたいところです。また、お仕事による収入がある今だからこそ、年金生活に向けて資金を効率よく貯めていくことが必要です。一方で運用資産を管理するのも手間がかかるため、安心して続けていくためにシンプルな運用を選んで行くことも意識していきたいですね。

3.3 ポイント1:インフレリスクへの対応を考える

まず見直したいのは、インフレリスクへの対応です。年金を繰り下げて額面を増やしたとしても、物価上昇が続けば実質的な購買力は目減りしてしまいます。この方も当初は現金の目減りに漠然とした不安を抱えていましたが、「インフレに対応するためには、価値が下がっていく資産ではなく、価値を保てる資産を持っておくことが必要だ」と気づいたように、資産の一部をインフレに強い外貨建て資産などに分散することは、年金生活の購買力を守るうえで大切な視点になります。

3.4 ポイント2:受給開始までの生活資金を確保する

そのうえで、受給開始までの生活資金をどう確保するかが重要になります。預貯金を取り崩すだけでは、資産が減っていくことへの精神的な負担が大きくなりがちです。この方は、「毎年収入が得られるタイプの債券を組み合わせたい」という理解のもと、定期的なキャッシュフローを得る方針へと踏み出しました。資産を大きく増やすことよりも、「手数料などの影響も考慮して、実質的な利回りが良いものを選びたい」という気づきの通り、コストを抑えながら安定した収入源を作ることが、退職後の安心につながります。

3.5 ポイント3:仕組みが分かりやすいシンプルな運用を選ぶ

また、複雑な商品に頼るのではなく、仕組みが分かりやすいものを選ぶことも欠かせません。その後は、自身で納得できるシンプルな運用方針を続けており、「選ぶポイントがシンプルになり、これなら自分でも判断できそうです」という言葉のように、退職後の資産管理は、自身でコントロールできるルールを持っておくことが、長く運用を続けるための鍵となります。

年金の受給開始時期をいつにするかという問題は、単なる損益分岐点の計算だけで決まるものではありません。損得だけで正解を決めつける前に、インフレへの備え、受給開始までのキャッシュフローの確保、そして自身で管理できるシンプルな運用方法を一つずつ整理してみることが、安心できる老後設計の出発点になります。

参考資料

川勝 隆登