「年金は65歳から受け取るべきか、それとも繰り下げて増やすべきか」——60代を迎える頃、多くの方が一度は考える悩みです。
繰り下げれば毎月の受給額は増えますが、受給開始までの生活費をどう確保するか、何歳まで生きれば得になるのかなど、判断に迷う要素は少なくありません。
この記事では、60代の年金受給額の実態データと、繰り下げ受給の増額率・損益分岐点のしくみを確認したうえで、実際にこの悩みを抱えていた方への、ファイナンシャルアドバイザーからのアドバイスをご紹介します。
- 65歳以降の平均年金月額は厚生年金約15万円・国民年金約6万円
- 繰下げ受給の増額率は1カ月あたり0.7%、75歳まで繰り下げると最大84%増
- 損益分岐点の目安は「受給開始年齢+約12年」(70歳受給なら82歳ごろ)
1. 60代の年金、平均受給額はどう変わる?
まずは、実際に60代でどれくらいの年金を受け取っているのか、年齢別のデータで確認してみましょう。
63歳・64歳の厚生年金の平均額が周囲の年齢より低くなっているのは、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられてきた影響です。
この年齢層の受給者の多くは、基礎年金を含まない報酬比例部分のみを受け取っているため、平均額が低めに出ています。
65歳になると、老齢基礎年金を含めた本来の年金額に切り替わり、平均月額は厚生年金で約15万円、国民年金で約6万円の水準に上がります。
2. 繰り下げ受給で年金額はどれだけ増える?
2.1 増額率は1カ月あたり0.7%
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、65歳で受け取らずに66歳以降75歳まで繰り下げることができます。
繰り下げた期間に応じて年金額が増額され、その増額率は生涯変わりません。
増額率は「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」で計算され、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%になります。
2.2 「何歳まで生きれば得か」——損益分岐点の考え方
繰り下げによって毎月の受給額は増えますが、受給開始が遅くなる分、その間は年金を受け取れません。
そのため、65歳から受け取り始めた場合と、繰り下げて受け取り始めた場合とで、受取総額がどこかの時点で逆転します。この逆転するタイミングが「損益分岐点」です。
1カ月あたりの増額率0.7%は年間にすると8.4%にあたり、この増加分だけで計算すると、繰り下げを開始した年齢からおよそ12年後に、65歳受給の受取総額を上回る計算になります。
例えば70歳まで繰り下げた場合(増額率42.0%)は82歳ごろ、75歳まで繰り下げた場合(増額率84.0%)は87歳ごろが、それぞれ損益分岐点の目安になります。
ただし、この目安は実際の受給額や税・社会保険料の影響を考慮していない単純計算です。


