5. 自分の年金はいくらになるか。計算式で確かめる

公的年金は2階建てで、それぞれ計算の考え方が異なります。ここでは受給額のベースとなる式を確認します。

5.1 国民年金の計算

国民年金はシンプルで、「満額の年金額×納付した月数÷480カ月」が基本です。満額は毎年度改定され、年額でおよそ84万7300円、月額では7万608円です。

20歳から60歳までの480カ月をすべて納めきれば満額を受け取れます。

注意したいのは、学生納付特例や納付猶予を使ったまま追納していない期間です。受給資格の期間には数えられますが、年金額の計算では納付済み月数に入らないため、その分だけ受取額が下がります。

一方、正規の保険料免除を受けていた期間は、追納していなくても国庫負担分が反映されます。

5.2 厚生年金の計算

厚生年金は、現役時代の報酬と加入期間に比例して増える報酬比例の仕組みです。基本の式は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」となります。

平成15年3月以前の加入期間については、賞与を含まない平均標準報酬月額に7.125/1000を掛けて計算し、合算します。

平均標準報酬額とは、加入期間中の月給と賞与の総額を加入月数で割った平均です。生涯にわたってどれだけ稼いだかが、そのまま受給額に反映されます。

6. 働きながら受け取るときの注意点と、繰下げ受給の落とし穴

老齢厚生年金は原則65歳から受け取れますが、その後も働き続ける人が増えています。受け取り方によって金額が変わる仕組みを確認します。

6.1 働きながらもらうと止まることがある「在職老齢年金」

厚生年金に加入しながら受給する場合、老齢厚生年金の基本月額と、給与や賞与をもとにした総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額を超えると、超えた分の半額が止まります。令和8年度の支給停止調整額は月65万円です。

止まるのは老齢厚生年金の部分だけで、老齢基礎年金は全額支給されます。

6.2 繰下げ受給は最大84パーセント増だが、加給年金が止まる

受給開始を66歳から75歳まで遅らせると、1カ月あたり0.7パーセント増額され、75歳まで遅らせた場合は最大84パーセント増になります。この増額率は一生変わりません。

ただし、繰下げの待機中は配偶者の加給年金を受け取れなくなります。また、額面が増えれば所得税や住民税、社会保険料の負担も連動して増えるため、手取りは額面ほど増えません。

7. 転職・退職・死亡。ライフイベントごとに必要な年金の手続き

年金の手続きは自己申告が基本です。放置すると未納期間が生まれたり、受け取れるはずの権利を失ったりします。節目ごとに必要な手続きを整理します。

転職・退職時は、会社員から無職や自営業になる場合、退職日の翌日から14日以内に国民年金への切り替えが必要です。手続きを忘れると未納期間が生じ、放置すれば督促を経て財産の差し押さえに至ることもあります。

住所や氏名の変更は、日本年金機構にマイナンバーが登録されていれば原則として届出は不要です。未登録の場合、海外に転出する場合、住民票と異なる住所を送付先にする場合は別途届出が必要になります。

死亡時は、年金受給権者死亡届の提出とあわせて、未支給年金や遺族年金の請求を行います。期限を過ぎると権利が消滅したり、誤って振り込まれた年金を後から返還することになったりします。

7.1 【試算】夫に先立たれたとき、世帯の年金はいくらになるか

共働き夫婦で夫が亡くなった場合、遺族厚生年金がそのまま上乗せされるわけではありません。金額でどう動くのかを試算します。

前提は、夫婦とも65歳以上で、夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月10万円、妻の老齢厚生年金が月5万円、2人とも老齢基礎年金を満額の7万608円受け取っているケースとします。

65歳以上の遺族厚生年金は、「夫の報酬比例部分の4分の3」と「夫の報酬比例部分の2分の1+妻自身の老齢厚生年金の2分の1」を比べ、高いほうの額になります。このケースではどちらも月7万5000円です。

  • 夫が存命のときの世帯合計:(7万608円+10万円)+(7万608円+5万円)=月29万1216円
  • 妻自身の老齢厚生年金:月5万円は全額支給
  • 遺族厚生年金として上乗せされる差額:7万5000円-5万円=月2万5000円
  • 夫の死亡後の妻の年金:7万608円+5万円+2万5000円=月14万5608円

【試算】夫に先立たれたとき、世帯の年金はいくらになるか3/3

【試算】夫に先立たれたとき、世帯の年金はいくらになるか

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」をもとにLIMO編集部作成

世帯の年金収入は29万1216円から14万5608円へ、ちょうど半分になります。一方で、住まいにかかる費用や水道光熱費の基本料金は半分にはなりません。

妻自身の加入期間や報酬水準が高いほど、上乗せされる遺族厚生年金は小さくなります。共働き世帯ほど「上乗せは思ったより少ない」という結果になりやすい点は、知っておきたいところです。

この試算も一定の前提を置いた目安であり、実際の受給額を保証するものではありません。加入記録によって結果は変わります。

8. 私的年金はどう変わる?2026年12月からの改正ポイント

公的年金だけでは老後資金が不足しかねないという前提のもと、国は自助努力を後押しする制度の拡充を進めています。ここでは押さえておきたい改正を確認します。

8.1 iDeCoの加入可能年齢が70歳未満に

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、掛金が全額所得控除の対象になる制度です。現行の加入可能年齢は原則65歳未満ですが、2026年12月1日から70歳未満に引き上げられます。

60歳以降も働き続ける人が増えるなかで、掛金を出せる期間が延びることになります。

8.2 拠出限度額の引き上げ

同じ2026年12月1日から、拠出限度額も引き上げられます。厚生労働省の資料によると、自営業者などの第1号加入者は月6万8000円から7万5000円へ、会社員などの第2号加入者は月6万2000円へ引き上げられます。

2026年12月分の掛金は2027年1月の引き落とし分から反映されます。企業年金の加入状況によって扱いが変わるため、勤務先の制度とあわせて確認が必要です。

8.3 企業年金の運用の見える化

企業年金については、加入者が自分の運用状況やリターンを把握できるよう、運用成績の見える化を進める方針が示されています。

なお、施行時期や対象範囲は今後の政省令などで詳細が示される部分があります。実際の手続きにあたっては、勤務先の担当部署や運営管理機関の最新の案内をご確認ください。

9. 共働きで貯蓄が進んでいる40歳代に多い「何から手をつければいいか分からない」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が伝えたいこと

年収が高く、順調に貯蓄ができているご家庭であっても、いざ本格的な資産運用を始めようとすると、何から手をつければよいか迷ってしまうことがあります。日々の仕事や生活が忙しく、まとまった資金が銀行口座に眠ったままになっているという方も少なくありません。

9.1 40歳代の共働き世帯に多いお悩み相談は「保険と資産運用を同時に考えるのは難しい」

40歳代のお客様
まとまった預貯金があり、毎月の家計からも一定の余剰資金は生み出せていますが、投資の経験はほとんどありません。将来の教育資金や老後のことが不安で、最初はさまざまな保険商品を検討していました。ですが、提案されたプランは毎月の負担が大きく、「保険と資産運用を同時に考えるのは難しい」というのが、正直な気持ちです。手元の資金を守りながら、将来に向けて効率よく資産を育てていくには、どのような計画を立てればいいのか、よく分かりません。

このように、資金は準備できていても、保険と資産運用のどちらから考えればよいのか決めきれず、口座に置いたままになっている方は少なくありません。

背景にあるのは、保険と運用を一つの計画にまとめようとして、判断が複雑になってしまうことです。保障の内容と運用の期待リターンを同じ土俵で比べようとすると、どちらの検討も進みにくくなります。

こうした場合は、まず2つを切り分けて、それぞれ別の物差しで考えることから始めると整理しやすくなります。

9.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が回答】資金を目的別に整理し、守りながら育てる配分を考える

橋本 優理

基本的な考え方として、資産運用は資産運用、保険は保険として別軸で検討していくのが合理的です。まずは今ある資産や今後の収入をどのように増やしていくか、世帯全体でリスクヘッジをするためにどれだけ資産の器を分けておくかが大切です。

「預貯金だけ(円資産だけ)」「アメリカ株だけ」と資産を限定してしまうよりも、さまざまな地域や企業に分散しておくほうがリスクを軽減できます。

そのうえで、「突然の入院で貯蓄を取り崩したくない」「がんや三大疾病になって長期的に医療費が必要になると困る」などの経済的なリスクになる要因を整理し、ピンポイントで保険で備えておくと良いでしょう。

資産運用と保険は、家計を守るうえでどちらも大切です。だからこそ、それぞれを別軸で分けて検討することで整理しやすくなります。

9.3 ポイント1:まとまった資金と毎月の余剰資金を目的別に分ける

まず見直したいのは、手元にある資金の性質を整理することです。何年も預金口座に置いたままにしておくより、金利や運用を活用して少しでも増やせないかを考えてみましょう。手元のまとまった資金と、毎月生み出される余剰資金を混同せず、それぞれに合った置き場所を考えることが、資産運用計画の第一歩となります。金額の大きさよりも、「いつ使う予定のお金か」で分けるのがポイントです。

9.4 ポイント2:守りの資産と育てる資産の役割を分けて考える

そのうえで、まとまった資金は手堅い債券などで運用し、毎月の余剰資金はNISAで積立投資をするなど、目的とリスク許容度に合わせて使い分けるという考え方があります。一度に大きな金額をリスク資産に投じるのではなく、守りながら手堅く増やす部分と、長期的な成長を期待する部分を切り分けることで、相場の変動に対する心理的な負担を和らげることができます。

9.5 ポイント3:積立投資の中身も複数の地域・資産に分散する

また、毎月の積立投資におけるポートフォリオの組み方も重要なポイントです。一つの商品に絞るのではなく、複数の地域や資産に分散し、それぞれの動きを見ながら長期で運用していく。積立投資の中身についても、自分なりに納得できる組み合わせを見つけることが大切になります。

9.6 ポイント4:投資先への関心を持ち続けて長期運用を続ける

最近は世界中の株式に幅広く投資する単一の商品が人気を集めていますが、それだけが唯一の選択肢というわけではありません。先進国や新興国、あるいは国内の株式など、複数の投資信託をあえて組み合わせることで、どの地域が成長しているのかを確認しながら運用を続ける楽しみも生まれます。自分自身が投資先に関心を持ち続けることは、相場が下落した際にも運用をやめずに長期投資を継続するうえで、とても大切な視点になります。

資産運用には、誰にでも当てはまる万能な答えがあるわけではありません。一つの正解があると決めつける前に、まとまった資金の置き場所と、毎月の積立投資の組み合わせを一つずつ整理してみることが、ご自身に合った資産形成の出発点になります。なお、投資信託や債券には元本割れの可能性があるため、近いうちに使う予定のあるお金は預貯金で確保しておくことが前提です。

10. まとめにかえて

厚生年金の平均年金月額は15万289円で、男性は16万9967円、女性は11万1413円でした。月15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%で、受給者のほぼ半数がこの水準に届いていません。

そして、この金額はいずれも額面です。税金と社会保険料が差し引かれるため、実際に使えるお金はこれより少なくなります。

厚生年金は老後の収入というだけでなく、障害や死亡に備える保障も含んだ制度です。まずは「ねんきんネット」や年金振込通知書で自分の数字を確認し、そのうえで足りない部分をどう補うかを考えていきましょう。

11. よくある質問(FAQ)

最後に、厚生年金についてよく寄せられる質問を3つ取り上げます。

11.1 Q1.厚生年金とは簡単に言うと何ですか

A.会社員や公務員が加入する公的年金です。基礎年金に上乗せして給付され、保険料は会社と本人で半分ずつ負担します。老齢だけでなく、障害と遺族の保障も含まれます。

11.2 Q2.厚生年金保険料はどのように計算しますか

A.残業代や手当を含む毎月の給与を等級表に当てはめた標準報酬月額に、18.3パーセントの保険料率を掛け、会社と本人で半分ずつ負担します。賞与からも同じ考え方で差し引かれます。

11.3 Q3.パートで扶養を外れて厚生年金に入るとどうなりますか

A.将来の老齢厚生年金が増え、障害厚生年金や遺族厚生年金といった保障も手厚くなります。一方で保険料が給与から差し引かれるため、当面の手取りは減ります。手取りの減少だけで判断せず、保障が増える点も含めて比べてみてください。

橋本 優理

厚生年金には障害厚生年金と遺族厚生年金があり、国民年金だけの場合より対象範囲が広くなっています。ここを知らないまま民間の保険を組むと、同じリスクに二重で備えることになりがちです。

とくに死亡保障は、遺族厚生年金の上乗せがどのくらいになるかで必要額が変わります。記事の試算で見たように、共働きで妻自身の老齢厚生年金がある場合、上乗せされるのは差額だけです。夫の年金の4分の3がまるごと増える、という前提で保障を組むと過小になります。

就業不能への備えも同じ考え方です。障害厚生年金は3級と障害手当金まで対象になりますが、等級に該当しなければ支給されません。認定されない状態で働けない期間をどうするかが、民間の保険で埋める部分になります。

なお、公的年金の受給者に例年9月ごろ届く扶養親族等申告書は、提出しないと配偶者控除などが適用されず、源泉徴収される所得税が増えます。手続きひとつで手取りが変わる場面は少なくありません。判断に迷うときは、年金事務所やファイナンシャルアドバイザーに相談してみてください。

参考資料

橋本 優理