公的年金を受け取っている人のもとには、例年9月ごろから「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」が順次送られてきます。
提出しないと配偶者控除などが受けられず、年金から差し引かれる所得税が多くなります。年金は額面がそのまま振り込まれるわけではなく、税金や社会保険料を引いた金額が手元に残ります。
この記事では、厚生年金と国民年金の仕組みの違いと、実際に「月15万円以上」を受け取っている人がどのくらいいるのかを、厚生労働省の最新統計をもとに確認していきます。
なお、公的年金の仕組みと厚生年金の受給額分布に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金の平均年金月額は15万289円。月15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%
- 厚生年金は老齢だけでなく、障害・遺族の保障も国民年金より範囲が広い
- 年金は額面がそのまま振り込まれるわけではなく、税金と社会保険料が差し引かれる
1. 公的年金の「2階建て」をおさらい。国民年金と厚生年金は何が違うのか
日本の公的年金は、建物の階層にたとえて説明されることが多い仕組みです。働き方によって加入する制度が変わり、将来の受取額にも差が生まれます。
まずは2つの制度の位置づけを確認します。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。自営業者やフリーランス、学生、無職の人は第1号被保険者として、全員が同じ額の保険料を納めます。
会社員に扶養されている配偶者は第3号被保険者となり、個別の保険料負担はありません。
1.2 2階部分:厚生年金
厚生年金保険の適用事業所に勤める会社員や公務員が加入します。第2号被保険者として国民年金に上乗せする形で加入するため、将来は基礎年金と厚生年金の2階建てで受け取ります。
保険料は給与や賞与の額に応じて変わり、会社と本人が半分ずつ負担する労使折半が特徴です。
1.3 保険料の負担と保障の範囲を比べる
2つの制度の違いは、保険料の決まり方だけではありません。備えられるリスクの範囲にも差があります。
- 保険料の金額:国民年金は定額で毎年度改定。厚生年金は標準報酬月額に応じて変動します
- 保険料の負担:国民年金は全額自己負担。厚生年金は労使折半です
- 保障の範囲:国民年金は老齢・障害(1級と2級)・遺族(子のいる配偶者等)。厚生年金は老齢に加えて、障害が1級から3級と障害手当金まで、遺族も対象範囲が広くなります
ここが見落とされやすい点です。厚生年金の保険料は老後の年金だけを買っているのではなく、働けなくなったときと、家族を残して亡くなったときの保障もあわせて負担しています。
2. 2026年度の年金額改定。モデルケースは月額いくらか
公的年金の額は、物価や賃金の動きに合わせて毎年度見直されます。マクロ経済スライドという調整の仕組みが働くため、伸び率は物価の上昇率を下回ることがあります。
厚生労働省が示す新規裁定者のモデルケースは次の水準です。
- 国民年金(老齢基礎年金)の満額:月額7万608円(1人分)
- 厚生年金の夫婦モデルケース:月額23万7279円
ただし、これは平均的な収入で40年間就業した会社員と専業主婦という前提の標準世帯です。共働き世帯や単身世帯、加入期間が短い人には当てはまりません。
また、年金は雑所得として課税の対象になります。額面がそのまま振り込まれるわけではなく、税金や社会保険料が差し引かれた金額が手元に残ります。
3. 国民年金+厚生年金で「月15万円以上」の人はどのくらいいるのか
モデルケースを見たところで、実際の受給者のデータを確認します。厚生労働省年金局の最新の集計から、平均額と分布の両方を見ていきます。
3.1 厚生年金の平均月額と受給額ごとの受給権者数
まず平均額です。国民年金部分を含んだ金額として公表されています。
- 全体 15万289円
- 男性 16万9967円
- 女性 11万1413円
男女で約6万円の差があります。厚生年金は加入期間と現役時代の報酬で決まるため、働いてきた期間の長さや働き方の違いがそのまま金額に表れます。
続いて、1万円刻みの分布です。
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
月15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%です。受給者のほぼ半数がこの水準に届いている一方で、残る半数は届いていないことになります。
くり返しになりますが、この金額は額面です。所得税、住民税、介護保険料、後期高齢者医療保険料などが差し引かれるため、手取りは数千円から1万円以上少なくなるのが一般的です。
自分の受取額を正確に知るには、毎年届く「年金振込通知書」を確認してください。オンラインの「ねんきんネット」でも、支給額と控除額、実際の振込額を確認できます。
年金だけで老後の生活費がまかなえるのかについては、こちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額・年金月額・1カ月の生活費をデータで見る
3.2 【試算】平均の15万289円に届くには、現役時代の報酬はいくら必要か
平均額を見て「自分はどのあたりだろう」と考えたときに、目安になるのが現役時代の報酬水準です。逆算してみます。
前提は、老齢基礎年金を満額の7万608円受け取り、厚生年金に40年間(480カ月)加入し、給付乗率は5.481/1000(平成15年4月以降の期間)で計算するものとします。
- 平均15万289円のうち、厚生年金部分に必要な額:15万289円-7万608円=月7万9681円
- 必要な平均標準報酬額:約36万3000円
- 検算:36万3000円×5.481/1000×480カ月=年95万5009円(月7万9584円)。基礎年金を足して月15万192円
【試算】平均の15万289円に届くには、現役時代の報酬はいくら必要か2/3
出所:LIMO編集部作成
平均標準報酬額は賞与も含めた月額換算の平均です。40年間ならして約36万3000円という水準が、平均に届くかどうかの分かれ目になります。
40年より加入期間が短ければ、必要な報酬水準はその分だけ上がります。育児や介護で働き方を変えた期間がある場合は、この点も踏まえて見込額を確認しておきたいところです。
なお、これは一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の年金額を保証するものではありません。
4. 厚生年金保険料はどう決まるのか。標準報酬月額と定時決定
毎月給与から引かれる厚生年金保険料は、基本給だけで決まるわけではありません。残業代や通勤手当、住宅手当などを含めた総支給額をもとに計算されます。
この総支給額を等級表に当てはめた金額が標準報酬月額です。ここに保険料率18.3%を掛け、会社と本人で半分ずつ負担します。
4.1 4月から6月の給与で1年間が決まる「定時決定」
標準報酬月額は毎年見直されます。4月・5月・6月の3カ月間に支払われた給与の平均をもとに決め直され、その年の9月から翌年8月までの各月に適用されます。これを定時決定といいます。
春先が繁忙期で残業代が多かった場合、秋以降に残業がなくなっても高い保険料が1年間続くことになります。
ただし、保険料が増えた分だけ将来の年金額も増えます。障害厚生年金や遺族厚生年金の計算にも反映されるため、目先の負担だけで判断せず、通年で考えたい部分です。

