3. 見落としやすい住民税非課税の優遇措置4つ
住民税非課税世帯には、国民健康保険料の軽減や政府の物価高対策の給付金受給などさまざまな優遇措置があります。この記事では、そのなかでも見落としやすいものを4つ紹介します。
3.1 高額療養費の自己負担上限が低くなる
高額療養費制度は、1カ月の医療費の自己負担額が所得区分ごとに決められている上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
2026年8月診療分から制度が見直され、住民税非課税区分の自己負担限度額は以下のようになりました。
70歳未満
- 月額上限:3万6900円
- 年間上限:29万円
70歳以上
- 月額上限:2万5700円
- 年間上限:29万円
70歳以上(所得一定額以下)
- 月額上限:1万5700円
- 年間上限:18万円
自己負担限度額がほかの所得区分に比べて低く設定されているため、通院や入院を繰り返しても、安心して医療を受けられるようになっています。
3.2 介護施設の食費・居住費が軽減される
介護保険施設やショートステイを利用すると、介護サービス費とは別に食費や居住費がかかります。
しかし、世帯全員が住民税非課税で、年金収入や所得、預貯金などの要件を満たす場合「介護保険負担限度額認定」によって負担が軽くなる可能性があります。
医療保険と介護保険の両方で費用負担が生じた場合は「高額医療・高額介護合算制度」により、限度額を超えた分が払い戻されます。
介護の可能性が高まる年金受給者にとっては、よく確かめておきたい制度といえるでしょう。
3.3 高等教育の修学支援を受けられる可能性がある
高等教育の修学支援新制度では、家計や学業などの要件を満たす学生に対し、返還不要の給付奨学金や授業料・入学金の減免を行います。
住民税非課税世帯の場合は、以下の金額が支給・減免されます。
給付型奨学金
- 国公立
自宅通学:35万円
宅外通学:80万円 - 私立
自宅通学:46万円
自宅外通学:91万円
免除・減額
- 国公立
授業料:54万円
入学金:28万円 - 私立
授業料:70万円
入学金:26万円
なお、2025年度からは、多子世帯の授業料・入学金減免の所得制限が撤廃されています。住民税が課税されている世帯でも、子どもの人数などの要件を満たせば対象になる場合があり、非課税世帯のみの優遇措置ではなくなっています。
3.4 老齢年金生活者支援給付金を受け取れる可能性がある
65歳以上で老齢基礎年金を受け取っている人は、要件を満たせば老齢年金生活者支援給付金を受け取れる可能性があります。条件は以下のとおりです。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受け取っている
- 世帯全員の市町村民税が非課税である
- 本人の年金収入とその他の所得が、昭和31年4月2日以後に生まれた人は809,000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた人は806,700円以下である
2026年度の給付基準額は月5620円です。実際の給付額は、国民年金保険料の納付済期間や免除期間などに応じて計算されます。
次章では、住民税非課税を狙う必要性について解説します。
4. 【FP見解】住民税非課税を「狙う」必要性は?
多くの優遇措置があることから「住民税が非課税になるよう、あえて収入を抑えたほうがよいのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、優遇措置を受けることだけを目的に、働く時間や年金額を抑える必要性は低いです。
収入を減らせば住民税が非課税になる可能性があり、社会保険料の軽減や医療費・介護費の負担緩和を受けられることがあります。
しかし、手元に残るお金が少ない分家計の管理は厳しくなります。また、勤務先で厚生年金保険に加入できなかった場合は、将来受け取る年金額が少なくなる可能性もあるでしょう。
加えて、社会保険料はあくまで一部が軽減されるのみで、住民税・所得税のように一切かからなくなるわけではありません。
非課税の基準を意識して収入を調整したい場合は、世帯全体の手取り額から日々の支出を賄えるかどうか、今一度確かめてみるとよいです。
非課税かどうかで変わるのは税額だけではありません。国民健康保険料の軽減判定、介護保険料の段階、医療や介護の自己負担上限まで連動して動きます。だからこそ「非課税を狙う」という発想が生まれやすいのだと思います。
ただし、非課税になって軽くなるのは負担の一部です。収入そのものが減れば、手元に残るお金は当然少なくなります。厚生年金に加入せずに働き方を調整した場合は、将来の年金額にも影響します。目先の軽減と、生涯で受け取る金額の両方を並べて考える必要があります。
現実的な順番としては、まず自分の世帯が今どちら側にいるのかを確認することです。課税・非課税の判定は前年の所得に基づくため、今年の収入が変わっても反映されるのは翌年度以降です。判定基準は自治体によって異なりますので、具体的な金額や優遇措置の適用可否は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
5. まとめ
住民税は、所得が一定額以下であれば非課税になる場合があります。
給与収入
- 単身世帯:110万円
- 夫婦世帯:166万円
年金収入(65歳以上)
- 単身世帯:155万円
- 夫婦世帯:211万円
また、高額療養費制度が使いやすくなったり、高等教育の修学支援新制度が利用できたりといった優遇措置もあります。
ただし、いずれも所定の要件を満たしたり手続きをする必要があったりするため、利用したい制度がある場合は個別に条件等を確かめておくとよいでしょう。
参考資料
- 総務省「個人住民税」
- 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
- 東京都主税局「個人都民税(東京都主税局)」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
- 厚生労働省「サービスにかかる利用料」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度~返還不要の支援が受けられます!~」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度
- 「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう 年金155万・給与110万が分かれ目?
石上 ユウキ
