2. 年金の「繰上げ」と「繰下げ」、実際はどちらが多い?

年金は原則65歳から受け取りますが、早めに受け取る「繰上げ」と、受給開始を遅らせる「繰下げ」という選択肢があります。では、実際にはどちらを利用している人が多いのでしょうか。

国民年金 受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移1/1

国民年金 受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

令和6年度末の国民年金受給権者では、次のようになっています。

  • 繰上げ(早めに受け取る):347万9097人(全体の10.1%)
  • 原則通り(65歳から受ける):3003万5137人(全体の87.3%)
  • 繰下げ(遅らせて受ける):88万1433人(全体の2.6%)

現時点では、受給を遅らせる人よりも、早めに受け取る人の方が多いことがわかります。ただし、過去5年間の推移を見ると、繰上げを選ぶ人の割合は少しずつ減り、繰下げを選ぶ人が徐々に増えている傾向にあります。

2.1 「繰上げ」のメリットと注意点

繰上げ受給の減額イメージ

【グラフで分かる】繰上げ受給の減額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとにLIMO編集部作成

繰上げ受給のメリットは、60歳から65歳になるまでの間に年金を早く受け取り始められることです。一方、昭和37年4月2日以降生まれの場合、繰上げると1カ月につき0.4%ずつ年金額が減り、60歳から受給すると最大24%減額されます。

減額された年金額は生涯変わらず、一度繰上げを請求すると取り消すこともできません。また、繰上げ請求後は国民年金への任意加入や保険料の追納ができなくなるなどの注意点もあります。

2.2 「繰下げ」のメリットと注意点

繰下げ受給の増額イメージ

【グラフで分かる】繰下げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとに筆者作成

繰下げ受給では、65歳で年金を受け取らず、原則66歳から75歳までの間に受給開始を遅らせることができます。
年金額は1カ月遅らせるごとに0.7%増え、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%となり、その増額率は生涯変わりません。

一方、受給開始までの生活費は給与や貯蓄などでまかなう必要があるため、「増えるから繰下げた方がよい」と一概にはいえません。年金をいつから受け取るかは、毎月の生活費や貯蓄、働く期間なども踏まえて、自分に合った時期を考えることが大切です。

3. まとめにかえて

今回は、厚生年金・国民年金の最新の平均受給額や、繰上げ・繰下げ受給の利用状況について解説しました。年金の受け取り時期にはそれぞれメリットと注意点があり、体調や家計、働き方などによって最適な選択は異なります。

年金をいつから受け取るべきか、迷ってしまう方も多いはずです。ここでは、損得だけではない、ライフスタイルに合わせた選び方の3つのポイントをお伝えします。

3.1 1. 繰上げ受給」は病気や介護に直面した際の心強い選択肢

繰上げ受給の最大のメリットは、60歳から早く年金を受け取り始められることです。一方で、早く受け取るほど年金額は減額され(最大24%減)、その減額率は生涯変わりません。

「減るから損だ」と言われがちですが、決してそうではありません。ご自身やご家族の病気、介護などで今の生活費が必要な場合、無理をせずに繰上げを利用することで、手元の生活を安定させることができます。

3.2 2. 「繰下げ受給」は待機期間の生活費確保がカギ

繰下げ受給では、受け取りを1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%増え、75歳まで遅らせると最大84%も増額されます。増えた年金額は一生涯続きます。

長生きの備えとして非常に魅力的ですが、受給を待っている間の生活費は、給与や貯蓄でまかなう必要があります。健康で長く働ける方や、十分な貯蓄がある方に向いている選択肢です。

3.3 3. 正解は一つではない!自分と家族のペースを最優先に

年金の受け取り方に「誰にでも当てはまる正解」はありません。「長く働けるから繰下げる」「少しでも早く受け取って、趣味や家族との時間を楽しむ」など、ご自身の体調、家族の状況、現在の働き方を踏まえて、無理のない時期を選ぶことが何よりも大切です。

年金制度は、私たちの老後を支える大切なセーフティネットです。まずは毎年届く「ねんきん定期便」を確認し、ご自身のライフプランに合った受け取り方を、ご家族と一緒に少しずつ考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料

村岸 理美