椿 慧理
筆者が銀行員として個人のお客様の資産運用や相続に関する相談に携わってきた中で、70代のお客様から最もよく聞いた言葉が「年金だけでは生活費が足りないのよね」というものでした。ある程度貯蓄があっても、毎月の収支が赤字になるという現実に不安を感じている方は少なくありません。

8月は年金の支給月です。年金収入のみで生活する方にとっては、2カ月に一度の大切な収入が振り込まれる時期となります。ある程度の貯蓄があったとしても、老後の毎月の家計収支が赤字となっている場合、将来に不安を感じる方は少なくありません。

本記事では、70歳代世帯の貯蓄額や年金受給額、家計収支の実態について、元銀行員の視点から分かりやすく解説します。

この記事の3つのポイント

  •  70歳代の平均貯蓄額「2416万円」の裏にある、より実態に近い「中央値」のリアルな数字
  •  厚生年金と国民年金における、70歳代の平均受給月額の具体的な差
  •  毎月約3万円の赤字となる70歳代家計の現実と、老後不安をなくすための具体的な解決策

1. 70歳代の平均貯蓄2416万円・中央値1178万円「一般的な実態に近いのは?」

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、70歳代の金融資産保有額は以下のとおりです。

  • 平均:2416万円
  • 中央値:1178万円

平均額の2416万円という数字を見ると、「これだけあれば老後の生活も問題がなさそう」と感じる方もいるかもしれません。しかし、中央値は1178万円と平均値を大きく下回っています。

平均値はまとまった資産を持つ一部の世帯によって引き上げられやすいことから、実態に近い数値としては中央値を参考にするとよいでしょう。

中央値の約1200万円という水準は、今後発生しうる医療費や介護費用、自宅のリフォームといったまとまった支出を考えると、やや不安が残る水準かもしれません。 

2. 70歳代の平均年金月額は約15万円!国民年金のみの場合「月6万円」

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、70代の平均年金月額は以下のとおりです。

<厚生年金保険(第1号)>

  • 70~74歳:14万7730円
  • 75~79歳:15万1377円

<国民年金>

  • 70~74歳:6万339円
  • 75~79歳:5万9346円

厚生年金は国民年金(基礎年金)を含む金額です。会社員や公務員として厚生年金に加入していた場合と、自営業者など国民年金のみの場合では、受取額に大きな差が生じていることが分かります。

国民年金のみの場合は月6万円前後の受給にとどまるため、生活費を年金だけでまかなうことはより難しい状況となります。