50歳代に入ると、「あと10年ほどで定年」という現実味が少しずつ増してくるのではないでしょうか。子育てが一段落した家庭も多く、これまで教育費に回していたお金を、老後の準備に振り向けられる時期でもあります。

とはいえ、「老後にいくら必要なのか」「わが家の準備は足りているのか」は、なかなか見通しにくいものです。まずは同世代の貯蓄の目安を確認し、定年までにやっておきたいことを整理してみましょう。

今回は、50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額と中央値をみたうえで、退職前に確かめておきたいことを3つ紹介します。

宮野 茉莉子
50歳代は「あと10年ほどで定年」という言葉に、急に現実味を感じ始める方が多い年代です。証券会社で退職前のご夫婦のご相談を受けるたび、早めに準備を始めた方ほど、定年後を落ち着いて迎えていらっしゃいました。退職前に何を確認し、どう備えるかが老後資金には重要となります。

1. この記事を読んだらわかる3つのポイント

  •  定年が視野に入る50歳代夫婦の貯蓄(平均1908万円・中央値700万円)
  •  退職前に必ず確かめておきたい「年金・退職金・退職後の支出」
  •  保険・働き方・住宅ローン—定年までの10年でつける準備の優先順位

2. 【50歳代・二人以上世帯】平均貯蓄額と中央値はいくら?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(平均・中央値)は次のとおりです。

※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

2.1 50歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

  • 50歳代二人以上世帯:平均1908万円/中央値700万円

50歳代二人以上世帯の平均は1908万円、中央値は700万円です。平均で2000万円という数字が視野に入る一方、真ん中の世帯は700万円で、平均と中央値の間には1200万円ほどの開きがあります。まとまった蓄えのある世帯が平均を引き上げているためで、目安にするなら中央値のほうが実感に近いでしょう。

貯蓄のない世帯は18.2%、2000万円以上の世帯は26.9%(2000〜3000万円が8.1%、3000万円以上が18.8%)。定年を前に、しっかり備えた世帯と、そうでない世帯との差が広がっています。

3. 退職前に確かめておきたい3つのこと

50歳代は、老後が見えてくる時期です。定年を迎える前に確かめておきたいことを3つ挙げます。数字を具体的につかんでおくほど、退職後の見通しが立てやすくなります。

3.1 年金の見込み額

ねんきん定期便やねんきんネットで、夫婦それぞれが受け取れる年金額を確認しましょう。世帯で合わせていくらになるかが、老後の収入の土台になります。

なお、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、平均月額は国民年金で5万9310円、厚生年金で15万289円(※国民年金部分を含む)です。

3.2 退職金の有無と金額

勤務先の制度を確認し、いくら受け取れそうかをつかんでおきます。退職金は老後資金の柱になる一方、まとまった金額が入ることで使い道に迷いやすいお金でもあります。受け取り方(一時金か年金形式か)も含めて、早めに考えておきたいところです。

また、退職金を受け取ったときのお金の置き場所も考えておきましょう。運用を考えているのであれば、その運用方法、金融商品、運用期間、使用する金融機関などもあらかじめ調べておきたいものです。運用はリスクがあるので急にまとまったお金を運用するのは抵抗がある方も多いですから、少額からはじめて慣れておくのも一つでしょう。

3.3 退職後の毎月の支出の見当

いまの生活費をもとに、定年後に減る支出(通勤や仕事関連)と、増える支出(趣味や医療など)を見込んでおくと、年金で足りない分がどれくらいになりそうかが見えてきます。生活費の赤字はいくらか、毎月いくら貯蓄を取り崩すかなども考えておくと、より具体的に老後を考えたり、老後資金の対策をしたりしやすくなるでしょう。

この3つがそろえば、あと何年でいくら準備すればよいかの目安が立ちます。運用で備える場合は、元本割れのリスクがあり、金融商品や投資方法などによってリスクが異なるため、無理のない範囲で検討しましょう。

4. 金融機関出身のアドバイス

50歳代二人以上世帯の貯蓄は、平均1908万円・中央値700万円でした。2000万円以上の世帯が3割近くを占める一方、貯蓄のない世帯もあり、定年を前に備えの差がはっきりしてきています。

「年金・退職金・退職後の支出」の3つがつかめたら、次は家計を整えて準備をおこない番です。元証券会社社員として、50歳代の夫婦が今からできることをお伝えします。

まずは保険の見直しです。子どもが独立すると、大きな保障はいらなくなることが多いもの。保障を必要な額まで下げれば、浮いた保険料をそのまま老後資金に回せるでしょう。このように子どもが独立することによる「減らせる固定費」は50歳代のうちに確認し、減らすようにするといいでしょう。

そして夫婦で「60歳以降の働き方」を話し合っておくこと。再雇用で働き続けるのか、パートに切り替えるのか、完全にリタイアするのか—働く期間の長さによって、準備すべき貯蓄額は大きく変わります。方向性を早めに共有しておくと、計画が立てやすくなります。

退職金、年金、貯蓄、仕事による収入…と備えるべきことが多くなりますが、お盆や夏休みで時間をとりやすい今こそ、夫婦でじっくり考え、一つずつたしかめて対策をしていく時間を作ってみてくださいね。

宮野 茉莉子
定年までの10年は、老後資金の準備の総仕上げの時間です。固定費を減らしたり、老後資金を何で、どう備えていくか、使う際にはどう取り崩していくかを具体的に考えることが大切です。長期休暇が取りやすい今こそ、夫婦でお金の話をする時間を1回つくってみませんか。

参考資料

宮野 茉莉子