2. 《高額療養費制度》3つのポイント「自己負担」軽くなる可能性があるのはどんな人?

公的医療保険制度の持続可能性の確保するため、令和8年8月から高額療養費の上限額が変わりました。

2.1 医療費の自己負担「月額上限」の引き上げ

月単位の自己負担について、将来にわたり制度を維持するため、医療費の伸びや所得に応じて負担する仕組みに見直されています。

例えば「70歳未満」で「年収約370万円〜約770万円」の方の場合、8月以降は月額上限のベースが引き上げられ、100万円の治療を受けた際の自己負担上限額は約8.7万円から約9.3万円へと増額されました。

2.2 「年間上限」の新設でセーフティネット強化

長期にわたり治療が必要な方のセーフティネット機能の強化として、新たに年間の上限額が新設されました。月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費については、保険者から還付を受けることができます。

例えば「年収約370万円〜約770万円」の方の場合、これまで多数回該当に該当しなかったケースでも、年間の自己負担が見直し前の76.7万円から見直し後は53.0万円となり、年間約23.7万円の負担減となる例があります。年間上限額の新設により、以下の方は医療費負担が軽くなる場合があります。

  • これまで「多数回該当」に該当しなかった方
  • 見直しにより「多数回該当」の対象から外れる方
  • 現在、毎月高額療養費を利用している方
  • 極めて高額な医療を受けた方
村岸理美
月額上限の引き上げという負担増のニュースがある一方で、年間を通したセーフティネットはより手厚くなりました。ご自身の収入における具体的な上限額がどう変わるのか、一度ご自身で確認しておくことをおすすめします。

3. 《平均寿命》男性81.35歳・女性87.33歳、直面する治療長期化のリスク

簡易生命表において、0歳の平均余命は「平均寿命」と定義されています。厚生労働省が発表した「令和7(2025)年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.35年、女性の平均寿命は87.33年となりました。前年と比較して、男性は0.25年、女性は0.20年上回り、すべての年齢で平均余命が前年を超えています。

平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(令和7年)4/4

平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(令和7年)

出所:厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況1 主な年齢の平均余命」

平均寿命の前年との差を死因別に分析すると、男女共通して悪性新生物(がん)、心疾患(高血圧性を除く)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死亡率変化が、寿命を延ばす方向に大きく寄与していることがわかります。

医療技術の進歩によって重い病気にかかっても命を救えるケースが増え、長生きできる時代になったということです。

しかし、その一方で患者や家族が直面するのが、以下の2つの医療費リスクです。

  • 治療の長期化:がん治療や心疾患の経過観察、脳卒中後のリハビリなど、医療の進歩により生存期間が延びた分、療養期間が数ヶ月から数年に及ぶケースが増えています。
  • 医療費の高額化:長期にわたる通院治療や最新の先進医療の利用により、個人が支払う医療費の総額は膨らみがちです。
村岸理美
今回の高額療養費制度などのような社会保障制度を理解した上で、公的制度だけではカバーしきれない「治療長期化・高額化のリスク」に対してどう備えるべきか、ご自身の状況に合わせた対策を早めに検討していきたいですね。

4. まとめにかえて

高額療養費制度は、月額や年間の上限が設けられており、医療費の自己負担が膨らむことを防ぐ重要なセーフティネットです。しかし、決して万能ではありません。記事内で触れたように、差額ベッド代や先進医療費などは全額自己負担となります。また、制度が適用されたとしても、治療が長期化すれば毎月数万円の自己負担が積み重なり、さらに治療に伴う収入減少が家計を圧迫する現実もあります。

漠然とした不安から勧められるがまま手厚い保険に入るのではなく、まずは「公的制度でどこまでカバーされ、何が不足するのか」を客観的な事実に基づいて算段しましょう。

そのうえで、洗い出した不足分(自己負担額や減収分)に対し、ご自身の「貯蓄」で対応できるのか、それとも「民間の保険」を活用してリスクヘッジするべきなのかを比較検討することが、無駄のない現実的な備えにつながります。

参考資料

村岸 理美