「美容室、また値上がりした気がする」。そう感じている人は少なくないのではないでしょうか。
その肌感覚は、統計にもはっきりと表れています。総務省の物価統計と厚生労働省の賃金統計をもとに、サービス価格の上昇と賃金の動きを確認していきましょう。
1. この記事の3つのポイント
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東京都のカット代平均は2025年5月4289円→2026年5月5004円 -
前年同月比で約16.7%の上昇 -
実質賃金は3か月連続でプラスとなったものの、物価上昇の吸収には至らず
2. 東京のカット代は1年で715円上昇
まずは具体的な数字を見ていきます。
総務省の『小売物価統計調査』が示すとおり、カット代の平均の価格(東京都)は次のように推移しました。
- 2025年5月:4289円
- 2026年5月:5004円
前年同月比で約16.7%程度上昇を見せています。金額にすると715円の値上がりです。
美容室に2か月に1回、年6回通うと仮定すると、年間のカット代は2万5734円から3万24円へ。4290円の負担増になります。年8回なら5720円の増加です。
1回あたりの金額差は数百円でも、年間で積み上がると無視できない金額になることがわかります。
2.1 なぜサービス価格の上昇が目立つのか
食品や日用品の値上げに比べて、美容室のようなサービスの価格改定は目立ちにくいものです。しかし近年、その上昇率が高まっています。
理由のひとつは、サービス業のコスト構造です。美容室の費用の大半は人件費と家賃であり、原材料の比率が小さい業種です。人手不足を背景に賃金水準が上がれば、それは直接的に価格へ反映されます。
もうひとつが、光熱費とシャンプー類などの資材費です。大量の温水を使う業態であるため、エネルギー価格の影響を受けやすい構造にあります。
そして、これまで価格を据え置いてきた反動もあります。長くデフレが続いた期間、多くのサロンが値上げを避けてきました。その分、一度に大きく改定されるケースが出ています。
3. 実質賃金は3か月連続プラスに
では、収入の側はどうなっているのでしょうか。
厚生労働省の『毎月勤労統計調査』(2026年3月分結果確報)によれば、物価上昇率の鈍化が実質賃金の改善につながり、実質賃金はプラス圏で推移。3か月連続でプラスとなりました。
実質賃金とは、名目の給与額から物価変動の影響を差し引いた指標です。給与が5%増えても物価が5%上がっていれば、実質賃金の伸びはゼロ。買えるものの量は変わらないという考え方です。
3か月連続でプラスということは、物価の上昇を賃金の伸びがわずかに上回った状態が続いているということになります。長く続いたマイナス圏からの転換という点では、明るい材料といえるでしょう。
3.1 それでも「追いついた」とは言い切れない
ただし、手放しで喜べる状況ではありません。
賃金上昇の兆しは見えつつあるものの、原油価格動向や円安・資源高を背景とした価格転嫁などを考慮すると、加速するサービス物価高を完全に吸収しているとは言い難く、家計を取り巻く環境は厳しい状況が続きそうです。
注意したいのは、実質賃金の計算に使われる物価指数が、消費全体を平均したものである点です。カット代の約16.7%という上昇率は、その平均を大きく上回っています。
つまり、美容室に頻繁に通う人にとっての「体感物価」は、統計上の平均よりも高くなります。実質賃金がプラスに転じても、生活実感が改善しないのはこのためです。
自分の支出構成の中で、値上がり率の高い品目が占める割合が大きいほど、統計との乖離は大きくなります。
4. 家計側でできる対応
サービス価格の上昇は、個人の努力で止められるものではありません。できるのは、支出全体のバランスを整えることです。
美容室に関していえば、次のような選択肢があります。
- 来店の間隔を少し延ばす(2か月に1回を10週に1回へ)
- カットとカラーの頻度を分ける
- 自宅でのケアを見直し、色持ち・形持ちを良くする
一方で、支出を削るだけが答えではありません。値上げ分をどこで吸収するかを決めておくほうが、納得感を持って続けられます。
固定費の見直しは、その有力な手段です。通信費、保険料、サブスクリプション費など、毎月自動的に引き落とされている費目を点検すると、まとまった節約の余地が見つかることがあります。
なお、資産形成の制度を活用する方法もありますが、どの手段が適しているかは家計の状況によって異なります。判断に迷う場合は、金融機関や専門の相談窓口に確認することをおすすめします。
4.1 実質賃金という指標の読み方
ニュースで頻繁に登場する「実質賃金」ですが、その意味を正確に押さえておくと、経済報道の理解が深まります。
実質賃金は、名目賃金(実際に支払われた給与額)を物価指数で割って算出します。式にすると「実質賃金=名目賃金÷物価」という関係です。
たとえば給与が3%増えても、物価が4%上がっていれば実質賃金はマイナス1%。手取りは増えたのに、買えるものは減っているという状態になります。
日本では長期にわたって実質賃金のマイナスが続いてきました。名目の給与は緩やかに増えていたものの、それ以上に物価が上昇したためです。
今回、3か月連続でプラスとなったのは、物価上昇率が鈍化したことが主因とされています。賃金が大きく伸びたというより、物価の伸びが落ち着いた結果という側面がある点は押さえておきたいところです。
5. まとめにかえて
今回は、物価統計と賃金統計からサービス価格の動きを確認しました。
- 東京都のカット代平均は2025年5月4289円→2026年5月5004円
- 前年同月比で約16.7%の上昇
- 実質賃金は3か月連続でプラスとなったものの、サービス物価高の吸収には至らず
値上がりを止めることはできませんが、自分の支出のどこにどれだけ影響しているかを把握しておくことはできます。まずは現状の確認から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
LIMO美容部
