3. 手取りはいくら?額面との差と、受給額を左右する3つの選択

ここまで紹介してきた年金額は、あくまで額面です。この額面がそのまま銀行口座に振り込まれるわけではありません。

3.1 額面と手取りは違う

年金も一定の条件に該当すると、所得税や住民税、介護保険料、医療保険料などが差し引かれます。現役並みに働きながら年金を受け取っている場合は、年金と給与を合わせた所得によって税金や社会保険料の負担が変わることもあります。

そのため、「年金額が月5000円増えたから、使えるお金も5000円増える」とは限りません。

年金生活に入った方からは、「年金額が増えたのに、思ったほど手元に残らない」と戸惑う声を聞くことがあります。老後の家計を考えるときに大切なのは、通知書に記載された額面だけを見るのではなく、実際に銀行口座へ振り込まれる金額を確認することです。

これから老後資金を考える方も、「月〇万円の年金がもらえる」だけで生活費を計算するのではなく、税金や社会保険料が差し引かれた後に「実際に毎月いくら使えるのか」を基準に考えておくと安心です。

3.2 繰上げ・繰下げ受給で変わる受給額

会社員として40年間、同じ年収で働き続けたと仮定した場合、65歳から受け取れる厚生年金(基礎年金を含む)の目安は次の通りです。

  • 現役時代の平均年収300万円の場合:年金受給額(月額目安)約12万円(手取り約10万円)
  • 現役時代の平均年収500万円の場合:年金受給額(月額目安)約16万円(手取り約13万5000円)
  • 現役時代の平均年収700万円の場合:年金受給額(月額目安)約20万円(手取り約16万5000円)

※あくまで簡易的な目安であり、実際の受給額は加入期間やボーナスの有無、配偶者の有無によって変動します。

原則65歳から受け取る年金を、最短60歳から前倒しで受給できるのが「繰上げ受給」です。1ヶ月早めるごとに0.4%減額され、60歳で受け取ると最大24%の減額となります。この減額率は一生涯変わりません。

さらに注意したいのは、「国民年金の任意加入や追納ができなくなる」「事後重症による障害基礎(厚生)年金が請求できなくなる」「寡婦年金が受けられなくなる」という点です。一度繰上げ請求をすると、後から取り消すこともできません。

一方、年金の受け取り開始を66歳以降に遅らせるのが「繰下げ受給」です。1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額され、70歳で42%、75歳で最大84%増額されます。

しかし、額面が84%増えたとしても、所得税・住民税・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)・介護保険料も連動して高くなるため、実際の手取り額は額面の増加分ほどには増えないケースが多いでしょう。また、老齢厚生年金の繰下げ待機中は年金の受給権が停止されるため「加給年金」も支給されません。配偶者がいる世帯では、待機期間中に受け取れなくなる加給年金と、将来増額される年金額とのバランスを慎重に比較することが重要です。

3.3 働きながら受け取ると?在職老齢年金の年金カット

60歳以降も厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、「基本月額(年金)」と「総報酬月額相当額(給与+ボーナスの1/12)」の合計額が65万円を超えると、超過した分の半額が年金から支給停止(カット)されます。

在職老齢年金による年金カットの対象となるのは、厚生年金に加入して働いている場合です。厚生年金の加入要件に該当しない短時間のパート・アルバイトや、個人事業主として業務委託で働く場合には、どれだけ収入を得ても在職老齢年金による年金の支給停止はなく、年金は全額受け取れます。

4. 監修者からのコメント

熊谷 良子

本文では年代別の平均受給額をご紹介しましたが、これはあくまで全体の平均値です。ご自身の年金見込み額を正確に知りたい場合は、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」の活用をおすすめします。

ねんきんネットでは、これまでの年金加入記録の確認だけでなく、60歳や70歳など受給開始年齢を変えた場合の見込み額を試算できる機能があります。実際に繰上げ・繰下げをした場合の金額を数字で見比べられるため、「なんとなくのイメージ」ではなく、ご自身の状況に即した判断材料が得られます。

マイナンバーカードがあればオンラインで24時間いつでも試算でき、パソコンやスマートフォンから利用可能です。利用登録がまだの方や操作に不安がある方は、お近くの年金事務所の窓口でも同様の試算を依頼できます。

平均額はあくまで目安として捉えたうえで、具体的な老後の資金計画は、ねんきんネットなどで試算したご自身の見込み額をもとに立てることをおすすめします。