3. 為替リスクとリターンのバランスを最適化する3つの戦略

3.1 戦略①:定額積立(ドルコスト平均法)で為替の波を自動で平準化する

毎月一定額を買い続ける定額積立は、購入のたびに為替レートが異なるため、結果的に購入時の為替レートが平均化されていきます。

円高のときには同じ金額でより多くのドル資産を買い、円安のときには少なめに買うことになるため、一時的な為替の急変動に一喜一憂しにくくなるのが利点です。新NISAのつみたて投資枠は、この積立の仕組みと相性がよい制度といえます。

3.2 戦略②:「為替ヘッジあり」は選ぶべき?メリット・デメリット

投資信託の中には、為替変動の影響を抑える「為替ヘッジあり」のタイプも存在します。

為替ヘッジありを選ぶと、為替差損によって資産が大きく目減りするリスクを抑えられる一方で、日米の金利差に応じたヘッジコストが継続的にかかります。

日米の金利差が大きい局面では、このコストが無視できない水準になることもあり、長期の資産形成を目的とする場合は、コストと安心感のどちらを優先するかを考えたうえで選ぶ必要があります。

3.3 戦略③:配当重視なら特定口座、値上がり益重視ならNISAの使い分け

ここまでの内容を踏まえると、口座選びの一つの目安が見えてきます。

配当収入を重視して米国の高配当株やETFに投資したい場合は、外国税額控除が使える特定口座での保有を検討する余地があります。一方、S&P500のように配当を出さず、長期的な値上がり益を中心に狙う投資信託であれば、NISA口座で保有するメリット(値上がり益・分配金の非課税)を最大限に活かしやすくなります。どちらが優れているというわけではなく、自分がその商品から何を得たいかによって、使い分けを考えることが大切です。

※ただし、外国税額控除は「その年の所得税額」を基準に控除できる上限額が決まる制度です(控除限度額=所得税額×国外所得金額/所得総額)。そのため、専業主婦(主夫)の方や扶養の範囲内で働く方など、そもそも納める所得税が少ない、またはゼロに近い方の場合は、確定申告をしても米国側の10%はほとんど戻ってきません。「特定口座なら税金が戻る」と一律には言えない点に注意が必要です。

川勝 隆登
NISAと課税口座、どちらか一方を選ぶ必要はありません。値上がり益を狙う商品はNISA、配当を積極的に受け取りたい商品は課税口座、というように商品の特性に応じて口座を使い分けることも、実務的には有効な選択肢の一つです。ただし外国税額控除は所得税額に応じた制度である点は、ご自身の状況に当てはめて確認しておくことをおすすめします。

4. まとめ:為替に一喜一憂せずS&P500の長期成長に乗ろう

新NISAでS&P500に投資すると、円建てであっても実質的には米ドル資産を持つことになり、為替の影響を避けることはできません。また、米国株の配当には現地で10%の税金がかかり、NISA口座ではこれを取り戻す手段がないという、意外と知られていない制約もあります。

さらに、受取方法の設定を誤ると国内側の非課税メリットまで失われてしまう点や、外国税額控除には所得に応じた上限がある点も、実務上は見落とされがちなポイントです。

しかし、これらはいずれも「仕組みを知っていれば対処できるリスク」です。為替リスクは長期の積立によって平準化しやすく、税金の論点は商品と口座の使い分け、そして受取方法の確認によって軽減できます。

リスクの正体を正しく理解しておけば、一時的な円高の捉え方も変わるでしょう。

【免責事項】

  • 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
  • 投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。

参考資料

川勝 隆登