4. 年金は「申請主義」、もらい忘れと空白期間に注意
年金を受け取るときにまず知っておきたいのが、受給開始年齢になっても年金は自動的には振り込まれないという点です。
日本の年金制度は「申請主義」が基本のため、自分自身で請求手続きを行わなければ受給は始まりません。受給開始年齢が近づくと、原則約3カ月前に日本年金機構から「年金請求書」が届くため、必要書類をそろえて提出を忘れないようにしましょう。
原則65歳から受け取る老齢年金は、受給開始を66歳から75歳までの間に遅らせる「繰下げ受給」を選ぶこともできます。
受給開始を1カ月先送りするごとに年金額は0.7%増額され、75歳まで繰り下げた場合には最大84%の増額となります。繰下げを検討している人には、66歳から74歳の間、毎年誕生月に「繰下げ見込額のお知らせ」が送られます(※共済組合等への加入期間がある方などは対象外となり、66歳・70歳時点でのみ送付される例外があります)。
ただし、原則65歳から受け取りが始まる老齢年金に対し、60歳で定年を迎える場合は5年の「空白期間」が生じる点にも注意が必要です。
4.1 60歳から65歳までの生活費をどうつなぐ?
60歳で定年を迎えた場合、原則として老齢年金を受け取り始める65歳まで、年金収入のない期間が生じます。再雇用や再就職で働き続ければ給与を生活費に充てられますが、仕事を辞めて貯蓄を取り崩す場合は、年金を受け取る前から老後資金が減っていくことになります。
毎月20万円の生活費が必要な場合、1年間で240万円、5年間では1200万円にのぼります。「65歳から年金が入るから大丈夫」と考えるだけでは、この空白期間の資金繰りを見落としてしまいます。
60歳以降も働く予定なら、再雇用後の給与や貯蓄の取り崩し方まで含めて、65歳までの資金繰りを具体的に考えておきたいところです。
5. 8月から届く「公金受取口座」の意向確認書、便乗詐欺に注意
年金を受け取り始めた後も、新たな手続きの案内が届くことがあります。
法改正により、年金を受け取っている口座の情報をデジタル庁に提供し、将来的に給付金などを受け取る際に利用できる「公金受取口座」として登録できるようになりました。2026年8月からは、登録に同意するかどうかを確認する意向確認書が順次送付されています。
対象者と送付スケジュール
送付対象となるのは「2026年4月15日時点で65歳以上で、年金を受給している方」です。ただし、公金受取口座をすでに登録している方、令和8年4月に年金が支払われなかった方(全額支給停止・振込不能)、国外居住者、共済組合等のみの受給者、令和7年6月以降の年金請求で登録意思表示済みの方などは対象から外れます。
8月には手続きの詳細が公表され、問い合わせ用の「意向確認書照会専用フリーダイヤル」も8月4日から開設されました。マイナンバーに関する一般的な問い合わせは「マイナンバー総合フリーダイヤル」でも確認できますが、市区町村や年金事務所の窓口ではこの件への対応は行っていません。
意向確認書は2026年8月から2027年2月(予定)にかけて、対象者へ簡易書留で順次届けられます。
便乗詐欺に警戒を
今回の手続きで特に気をつけたいのが、制度の開始時期に便乗した詐欺です。「手続きを代わりに行う」「登録に手数料がかかる」などと持ちかけ、ATMを操作させたり口座番号・暗証番号を聞き出そうとする詐欺には十分注意しましょう。
公的機関が電話で暗証番号を尋ねたり、ATMでの操作を求めたりすることはありません。不審な連絡だと感じた場合は、その場で対応を続けずに電話を切り、家族や警察などに相談してください。
6. まとめにかえて|年金の受け取り方と次の支給日を、早めに確認しておこう
公的年金は、セカンドライフの暮らしを支える重要な収入源です。
次回の支給日である10月15日や、2026年度の改定後の受給額を確認するとともに、「ねんきん定期便」を活用してこれからの生活に必要な資金計画を立てておくことが大切です。
また、2026年8月から順次届いている「公金受取口座登録の意向確認書」についても、発送スケジュールや対象者を正しく把握し、便乗詐欺にも十分注意しましょう。
公的制度の仕組みを正しく知り、必要な手続きを一つずつ確認しながら、安心できるセカンドライフに備えていきましょう。
7. 【監修者コメント】
公金受取口座の登録は義務ではなく、あくまで同意するかどうかを確認する手続きです。
デジタル庁によれば、この口座を登録しておくと、年金や高額療養費、所得税の還付金など160種類以上の給付金等を受け取る際に、口座情報の記入や通帳のコピー添付が不要になります。実際に一部自治体では、給付金の振込までの期間が最大で約4カ月短縮された事例も報告されています。
一方で、口座情報が行政に一元的に管理されることでもあるため、内容をよく理解したうえで同意・不同意を判断することが大切です。意向確認書が届いたら送付元や記載内容を確認し、不明な点は専用フリーダイヤルに問い合わせましょう。
分からないまま署名や返送をせず、家族に相談したうえで落ち着いて対応することが、便乗詐欺の被害を防ぐ一番の近道です。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 日本年金機構「令和8年8月から年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書をお送りします」
- デジタル庁ニュース「公金受取口座の特例制度が2026年8月スタート。年金受給者の給付金等の受取が簡単に」
池上 翠

