5. 【10月から】年金の手取り額が変わる人・変わらない人も年金からの「天引き」で手取りはいくら減るのか

年金は「額面」がそのまま振り込まれるわけではありません。多くの方は、額面から介護保険料などが自動的に差し引かれた「手取り」を受け取っています。ここでは、誰から・何が引かれるのか、そしてなぜ10月に金額が変わるのかを整理します。

5.1 天引きされる人・引かれるお金の中身

天引き(特別徴収)の対象になるかどうかは、年齢と年金額、そして年金の種類で決まります。日本年金機構は、保険料(税)ごとに対象者の要件を次のように示しています。

介護保険料:65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。
国民健康保険料(税):65歳以上75歳未満の方(後期高齢者医療制度の該当者を除く)のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。
後期高齢者医療保険料:75歳以上の方もしくは65歳以上75歳未満で後期高齢者医療制度に該当する方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。
住民税および森林環境税:65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。

出所:日本年金機構「年金からの介護保険料などの特別徴収の対象となる人」

共通しているのは「65歳以上」「年間18万円以上」というラインです。年金が年18万円に届かない方は、この天引きの対象にはなりません。あわせて注目したいのが、年金の種類による違いです。介護保険料や医療の保険料は障害年金・遺族年金からも引かれますが、住民税は老齢(退職)年金だけが対象。障害年金と遺族年金は非課税のため、住民税は引かれません。同じ「年金」でも、どの年金を受け取っているかで手取りの目減り方は変わってきます。ご自身がどれに当てはまるか、まずは受け取っている年金の種類から確かめておきましょう。

5.2 10月に天引き額が変わるのはなぜ(仮徴収と本徴収)

天引きは、1年を通じて同じ額が引かれるわけではありません。厚生労働省の資料では、保険料の徴収は次のように整理されています。

特別徴収においては、4、6、8月の年金支払時に当該年度分の保険料(税)額を仮徴収することとしており、その額は前年度2月の年金支払時における本徴収額と同額とするとしている。
本徴収額は、当該年度分の確定保険料(税)額から仮徴収済みの金額を控除した額を、10/1~3/31までの年金支払回数で除した額となる。

出所:厚生労働省「介護、国保、後期高齢における保険料(税)の特別徴収について」

かみくだくと、4月・6月・8月は前年度2月と同じ額をとりあえず引いておく「仮徴収」。その年度の保険料が確定したあと、10月・12月・翌2月で不足分や余剰分を調整するのが「本徴収」です。だからこそ、基本的には10月に、振込額が変わる人が出てきます。10月の振込を見て「あれ」と思ったときは、まず天引きの内訳を確かめてみてください。

実際にいくら引かれているかは「年金振込通知書」で確認できます。金額に疑問があるときは、ひとりで悩まず、ねんきんダイヤル(0570-05-1165)やお住まいの市区町村に確認しましょう。

6. 編集部からのアドバイス|「額面」ではなく「手取り」で家計を設計する

宮野 茉莉子

老後の家計を考えるときに大切なのは、「額面」ではなく「手取り」で見ることです。

今回見たように、平均や都道府県ランキングはあくまで額面。そこから介護保険料や住民税などが引かれ、実際に使えるお金はもう一段下がります。

一方で、天引きされるお金は「自動」でも、その内訳は年金振込通知書で「見える化」できます。まずはご自身の通知書で、額面と手取りの差を一度確認してみてください。

現役世代の方は、地域差や平均に一喜一憂するより、自分の加入期間と働き方を把握し、必要に応じてiDeCoなどの上乗せも検討しておくと、将来の安心につながります。

7. まとめにかえて

厚生年金は、住む地域よりも「現役時代の働き方と加入期間」で受給額が決まり、さらに額面から天引きされて手取りになります。最後に、今日からできるアクションを3つ整理します。

  • ①自分の受給見込み額を確認する:ねんきんネットや年金振込通知書で、額面と手取りの両方をチェック。平均ではなく「自分の数字」で考えましょう。
  • ②手取りベースで家計を見直す:介護保険料や住民税などの天引きを踏まえ、実際に使えるお金で毎月の予算を組みます。10月は金額が変わる時期なので要チェック。
  • ③現役世代は「上乗せ」も検討する:厚生年金の地域差の正体は働き方と賃金。加入期間を延ばす、iDeCoや新NISAで自分年金を育てるなど、早めの備えが効いてきます。

参考資料

筒井 亮鳳