中本 智恵

三菱UFJ銀行のリテール営業に長く携わっていたころ、年金受給が始まったお客様から「もう手続きは全部終わったから、あとは毎月振り込まれるだけですよね?」とおっしゃる方が本当に多くいました。制度の仕組みを正確にご存じなかったために、気づかないうちに受給が止まっていた──そんなケースを、私は窓口で何度も目にしてきました。

年金生活者支援給付金をすでに受け取っている方、あるいは受給を始めたばかりの方のなかには、「一度認定されたらそのままずっともらい続けられるのか」という点が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から申し上げると、この給付金は「恒久的な制度」です。支給要件を満たしている限り、毎年度継続して受け取ることができます。しかし、ここに一つの落とし穴があります。一度要件を外れてしまうと、再び要件を満たすようになっても、自動的に再開されるわけではないのです。改めて「認定請求」の手続きを自分で行わなければなりません。

この記事では、継続受給の条件と注意点、そして要件を失った後に必要となる再申請の手続きについてお伝えします。

1. この記事の3つのポイント

  •  年金生活者支援給付金は恒久制度。支給要件を満たす限り毎年度継続して受給できる
  •  所得・世帯状況の変化で要件を失うと給付は停止。「自動再開」はなく、復活には再申請が必要
  •  2026年度の基準額は月額5620円。前年度比+3.2%増で物価に連動して毎年見直される

2. 「年金生活者支援給付金」給付額

「年金生活者支援給付金」の給付額は、年度ごとに見直しがおこなわれます。

これは公的年金と同じく、前年の物価変動率等と連動するためです。では、今年度の金額はどれほどなのでしょうか。

2.1 年金生活者支援給付金「2026年度の給付額」はいくら?

年金生活者支援給付金の給付額1/1

年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度の「年金生活者支援給付金」の給付額は、前年度より+3.2%増の「5620円」となりました。

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

ただし老齢年金生活者支援給付金については、上記を基準額として、保険料納付済期間などをもとに実際の給付金額が計算されます。

中本 智恵

月額5620円というと「少ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし年間で換算すると約6万7440円。老齢基礎年金(満額・2026年度は月額約6万9000円)の約1カ月分に相当します。受給できる方にとっては、決して小さくない上乗せです。確実に受け続けられる状態を整えておくことが大切ではないでしょうか。

3. 「一度もらったらずっともらえる」は半分だけ正しい

よくいただく質問に「年金生活者支援給付金は1回だけしか受け取れませんか?」というものがあります。答えはノーです。この給付金は単発の給付ではなく、恒久的な制度として設けられています。支給要件を満たしている限り、毎年度継続して受け取ることができます。

ただし、ここで「半分だけ正しい」と申し上げたのには理由があります。継続して受給できるのはあくまでも「要件を満たしている間」だけだからです。

たとえば、お子さんやご兄弟との同居が始まり世帯の所得合計が変わったケース、あるいは不動産の売却益が生じて前年の所得が上がってしまったケース──こうした事情から支給要件を外れてしまうことは、実際によくあります。

そして、ここが最も重要なポイントです。一度要件を外れた後、再び要件を満たすようになっても、給付金は自動的には再開されません。「要件を取り戻した=また振り込まれる」というわけではないのです。

4. 要件を再び満たした場合「再申請」が必要になる理由

年金生活者支援給付金の支給は、日本年金機構への「認定請求」によって始まります。初回の受給開始時に手続きをされた記憶がある方も多いと思います。この認定は継続して要件を満たしている間は有効ですが、支給が一度停止した場合は、その認定も失効したとみなされます。

そのため、要件を失った後に再び要件を満たした場合は、あらためて認定請求の手続きを行う必要があります。手続きをしなければ、たとえ要件を満たしていても給付は再開されません。これが、この制度の見落とされやすい仕組みです。

手続きの窓口は、お近くの年金事務所または市区町村の窓口です。日本年金機構から届くお知らせを確認しながら、毎年の所得状況に気を配っておくことが、給付金を確実に受け取り続けるための第一歩と言えるでしょう。

今の仕事でマネーにまつわる記事について携わっている中で「公的給付は権利があっても申請しなければもらえない」という原則を改めて学び、銀行員時代に感じていたもどかしさの正体がよくわかった気がしました。知らなかったことで損をする、これは制度の問題であると同時に、情報にアクセスできたかどうかの差でもあります。

受給中の方はぜひ、毎年秋ごろに日本年金機構から届く「支給継続の確認通知」を見落とさないようにしてください。また、所得が増えた年・家族構成が変わった年は特に注意が必要です。「自分は今も要件を満たしているか」を一度確認する習慣を持つことが、給付金を安定的に受け取り続けるうえで、もっとも現実的な対策ではないかと考えます。

参考資料

中本 智恵