和田 直子

最近、スーパーのレジで「え、こんなに?」と驚くことが増えました。かごの中身は先月と大して変わっていないのに、支払い金額はじわりと上がっている。その感覚、多くの方が共感されるのではないでしょうか。

そんな中、政府が動き始めました。飲食料品の消費税を「実質ゼロ」にするためのロードマップが、2026年7月に開かれた国の会議で示されました。複雑な制度の話ですが、「いつ、何が変わるのか」だけでも把握しておくと、家計の見通しが少し立てやすくなります。

2026年7月22日、内閣官房の「給付付き税額控除等に関する実務者会議」が中間とりまとめ案を公表しました。

飲食料品の消費税を「実質ゼロ」にすることを目指す内容で、令和9年(2027年)4月からの経過措置と、令和11年(2029年)からの本格導入という2段階の構成になっています。

政策の詳細はやや複雑ですが、「いつ・何が・どう変わるのか」に絞って整理します。世論や現場からの懸念についても、あわせて確認しておきましょう。

1. 3つのポイントの見出し

  •  令和9年4月から2年間の「つなぎ」措置として、飲食料品の消費税を現行8%から1%に引き下げ。同時に中低所得の現役勤労者へ給付を先行導入し、合わせて「実質消費税ゼロ」を目指す
  •  令和11年度からは本格的な「所得に連動したきめ細かな給付」に移行。配偶者の所得や16〜18歳の子も対象に加え、本当に支援が必要な世帯へより手厚く給付する
  •  SNS・世論には「減税分が価格に反映されるのか」「システム対応コストが値上げに転嫁されないか」など複数の懸念も。今後の動向に注目が集まっている

2. そもそも「給付付き税額控除」とは何か

最初に「給付付き税額控除」という制度の考え方を押さえておく必要があります。

これは、所得に応じて税負担を軽くしたり、必要な方に直接お金を給付したりする仕組みです。

一律の消費税引き下げと異なり、「本当に困っている世帯へ手厚く届ける」ことを目指す制度です。

高所得者ほど恩恵が大きくなってしまう一律減税の課題を補う狙いがあります。

ただし、この仕組みを正確に機能させるには、個人や世帯の所得・家族構成のデータを公的機関が把握できる環境が必要です。

その準備にはまだ時間がかかることから「令和11年度に本格導入」というスケジュールになっています。

3. 令和9〜10年度:2年間の「つなぎ」措置とは

本格導入まで待てない…そこで設けられたのが、2年間の経過措置(つなぎ)です。

「税率引き下げ」と「先行給付」の2本立てで、飲食料品の消費税を実質ゼロにすることを目指します。

和田 直子

「実質ゼロ」というのは、税率1%引き下げと給付を足せば帳消しになる、という計算です。ただ、「減税されたお金が本当に価格に反映されるのか」という点は、消費者にとってずっと気になるところではないでしょうか。

銀行員時代、為替や金融政策の変化が日常の家計にどう波及するかを見てきた経験から思うのは、「制度が整っても、実感として届くかどうかは別の問題」ということです。この2年間、消費者の目線で価格の動きをきちんと見ていくことが大切だと感じています。

3.1 ①飲食料品の消費税を1%に引き下げ

令和9年4月1日から2年間、現在8%(軽減税率適用)の飲食料品にかかる消費税率を1%に引き下げます。

物価高への早期対応が主な目的です。

3.2 ②中低所得の現役勤労者に「先行給付」を導入

同時に、現時点で公的機関が保有する所得情報を活用し、中低所得の現役勤労者を対象とした給付を令和9年度から先行導入します。消費税1%相当分の範囲内での給付で、「働き控え」の問題にも対応する狙いがあります。

ただし、この段階ではデータの整備が追いついていないため、以下のような経過的な措置がとられます。

  • 配偶者の所得は給付判定に含まない(世帯合算の勘案なし)
  • 子どもの加算は15歳以下のみ対象(16〜18歳は本格導入時から追加)

この2つを組み合わせることで、全体として飲食料品にかかる消費税の「実質ゼロ化」を実現するとしています。

4. 令和11年度〜:本格導入で何が変わるか

2年間の「つなぎ」を経て、令和11年度からはより精度の高い制度へ移行します。

本格導入時には、配偶者の所得も給付判定に加味され、16〜18歳の子どもも加算対象になります。これにより、世帯全体の状況を正確に反映した「きめ細かな給付」が実現する見通しです。

一方で、消費税率の1%引き下げは終了します。「実質ゼロ」の恩恵をより手厚い給付によって実現する形に切り替わります。

5. SNSや世論の声に見える3つの「モヤモヤ」

この方針に対して、SNSや有識者の議論には肯定的な受け止め方がある一方で、気になる論点もいくつか浮かび上がっています。

5.1 ①「2年間だけ」の税率変更、現場対応コストはどこへいく?

最も多く聞かれる声が、「2年間のためにシステムを変えて、また戻すのか」というものです。

スーパーや飲食店のレジシステム、会計ソフトの改修コストは、特に中小規模の事業者には小さくない負担です。

「対応コストが最終的に値上げに転嫁されては、減税の意味が薄れる」という懸念は、とりまとめ案自体も認識しており、事業者支援のための予算措置を検討するとしています。

5.2 ②「実質ゼロ」の恩恵が消費者に届くか

減税分がそのまま商品価格に反映されるかどうかは、事業者の経営状況や市場環境に左右されます。

仕入れコストの高騰が続く中で、「減税分を価格に反映するより原価吸収に充てざるを得ない」という事業者も出てくる可能性は否定できません。

「安くなったと実感できるかどうか」が、この制度への国民の納得感を左右するポイントになりそうです。

5.3 ③先行給付の「大雑把さ」への違和感

令和9年度の先行給付は、データ整備の遅れから「配偶者の所得を勘案しない」「15歳以下のみ加算」というミニマムな内容になっています。

「世帯で見ると高収入なのに、片方の所得だけで判定されて給付対象になるケースが出るのでは」という公平性への疑問や、「最も教育費がかかる16〜18歳が先行期間中に対象外」という子育て世帯からの違和感は、今後の議論で避けられないテーマになるでしょう。

6. 「複雑な制度」より「届いている実感」が大切ではないでしょうか

物価高が長引く中で、家計への直接的なサポートに向けて制度が動き始めたこと自体は、前向きな変化だと感じています。

ただ、今回のロードマップを見て率直に思うのは、「令和9年に1%にして、令和11年にまた別の制度に変える」という構造の複雑さです。

国民の立場からすると、「自分は給付の対象になるのか」「本当に家計が楽になるのか」が一番知りたいことのはずです。

スーパーのレジが安くなるのか、口座にお金が入るのか。

そのシンプルな実感が伴わなければ、どれだけ丁寧な制度設計でも、生活者の心には届きにくいかもしれません。

令和11年の本格導入時に「あの2年間は一体何だったのか」と言われないよう、今後の情報を継続的にチェックしておきましょう。

特に、自分の所得や世帯構成が給付の対象に当たるかどうかは、令和9年度が近づく頃に政府から詳細が公表される見通しです。制度の詳細が固まった段階で、改めてご自身の状況と照らし合わせてみてください。

参考資料

和田 直子