2026年6月に「ひとりぐらし研究所」が公表した「ひとり暮らしの老後意識調査2026」では、老後資金について「準備中だが不安」「未対策で不安」と答えた人が合わせて81.9%にのぼりました。

物価上昇が続き、暮らしの先行きが見えにくいいま、老後への不安はけっして他人事ではありません。

とくに、単身でご自身の将来を支える「おひとりさま」にとって、計画的な資産形成は切実なテーマです。

今回は、最新の統計データをもとにおひとりさまの貯蓄の実態を年代別にひも解きます。平均値ではなく、実感に近い「中央値」に注目しながら、現実的な立ち位置を確認していきましょう。

 

1. 筆者からのコメント

菅原 美優
この記事に出てくる「平均」と「中央値」は、見るべきポイントが違います。

平均は、ごく一部の資産家がいるだけで大きく跳ね上がります。一方の中央値は、実際にちょうど真ん中にいる人の金融資産額なので、多くの方の実感に近い数字です。

今回のデータでは、30歳代から60歳代まで、どの年代でも「貯蓄なし・100万円未満」の層がおよそ4割前後を占めています。裏を返せば、これは特別なことではなく、同じ年代の多くの方が同じような状況にいるということでもあります。

大切なのは、他の年代や他人の数字と比べて焦ることではなく、ご自身の年代のなかでいまどの位置にいるのかを、まずは正しく把握することです。

2. おひとりさまの貯蓄額はいくら?30歳代~60歳代の「平均」と「中央値」を徹底比較

それでは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」を基に、おひとりさまの年代別貯蓄額の最新データを確認していきましょう。

※補足:本調査における「金融資産」について
データ内にある「金融資産非保有」とは、運用や将来に備えて蓄えている資産がない状態を指します。日常的な出し入れや決済用に備えている預貯金(口座残高)は含まれていないため、必ずしも「貯金残高が完全にゼロ」という意味ではありません。

2.1 30歳代・おひとりさまの貯蓄額|中央値100万円、平均501万円との差は5倍

【一覧表】30歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)1/4

【一覧表】30歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:32.3%
  • 100万円未満:14.2%
  • 100~200万円未満:14.2%
  • 200~300万円未満:4.9%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.8%
  • 500~700万円未満:5.5%
  • 700~1000万円未満:3.1%
  • 1000~1500万円未満:5.5%
  • 1500~2000万円未満:4.3%
  • 2000~3000万円未満:2.5%
  • 3000万円以上:3.4%
  • 無回答:3.1%

◆平均と中央値

  • 平均:501万円
  • 中央値:100万円

平均501万円と中央値100万円という数字の開きは、一部の高額保有層が全体の数値を大きく押し上げていることを物語っています。

実際、金融資産を持たない層(32.3%)と100万円未満の層(14.2%)を合わせると、およそ2人に1人が貯蓄100万円以下にとどまる計算です。

その一方で3000万円以上を蓄えている層も3.4%存在しており、社会人になってまだ日が浅いこの年代にも、すでに資産の二極化の芽が見て取れます。

2.2 40歳代・おひとりさまの貯蓄額|中央値100万円は横ばい、平均は859万円に

【一覧表】40歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)2/4

【一覧表】40歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:32.1%
  • 100万円未満:15.1%
  • 100~200万円未満:7.1%
  • 200~300万円未満:5.9%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.2%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:4.6%
  • 1000~1500万円未満:6.2%
  • 1500~2000万円未満:1.2%
  • 2000~3000万円未満:2.8%
  • 3000万円以上:9.9%
  • 無回答:2.5%

◆平均と中央値

  • 平均:859万円
  • 中央値:100万円

平均額は859万円へと大きく伸びる一方、中央値は30歳代からほぼ横ばいの100万円にとどまりました。

平均と中央値の差は8倍超に開き、資産形成が進んだ層とそうでない層の分かれ目が、この年代でよりくっきりしてくることがわかります。

金融資産非保有・100万円未満を合わせた層は47.2%と半数近くを占め、他方で3000万円以上を持つ層も約1割(9.9%)に達しており、二極化はむしろ拡大しています。

2.3 50歳代・おひとりさまの貯蓄額|中央値120万円、資産100万円未満は45%超

【一覧表】50歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)3/4

【一覧表】50歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:35.2%
  • 100万円未満:10.1%
  • 100~200万円未満:7.4%
  • 200~300万円未満:4.6%
  • 300~400万円未満:2.7%
  • 400~500万円未満:3.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:4.6%
  • 1000~1500万円未満:6.0%
  • 1500~2000万円未満:3.3%
  • 2000~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:10.4%
  • 無回答:1.9%

◆平均と中央値

  • 平均:999万円
  • 中央値:120万円

平均999万円に対し、中央値は120万円。40歳代からの伸びを比べると、平均は約140万円増えたのに対し、中央値はわずか20万円しか動いていません。

定年が現実味を帯びてくるこの年代でも、金融資産非保有・100万円未満の層は45%超と、依然として半数近くを占めます。

一方で3000万円以上を保有する層は10.4%とさらに増えており、一部の層が平均値を押し上げる構図がより濃く出ています。

2.4 60歳代・おひとりさまの貯蓄額|中央値300万円に上昇も、平均との差はなお4倍超

【一覧表】60歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)4/4

【一覧表】60歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:30.4%
  • 100万円未満:9.1%
  • 100~200万円未満:4.3%
  • 200~300万円未満:2.4%
  • 300~400万円未満:4.5%
  • 400~500万円未満:3.1%
  • 500~700万円未満:6.0%
  • 700~1000万円未満:4.8%
  • 1000~1500万円未満:8.1%
  • 1500~2000万円未満:4.1%
  • 2000~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:15.6%
  • 無回答:2.2%

◆平均と中央値

  • 平均:1364万円
  • 中央値:300万円

60歳代になると平均は1364万円、中央値は300万円まで上昇します。退職金や相続によって資産が積み上がる時期に入った様子がうかがえますが、平均と中央値の差は依然として4倍以上残ったままです。

3000万円以上を持つ層は15.6%まで増え、全体の平均を大きく押し上げる一方、資産非保有・100万円未満の層も約4割を占め、二極化の構図は本格的な老後を目前にしても解消されていません。

なお、総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では実収入25万4395円に対し、税金や社会保険料を含む実支出は29万6829円(うち消費支出は26万3979円)で、毎月4万2434円の不足が生じています。

同じ調査の65歳以上の単身無職世帯を見ると、実収入13万1456円に対し実支出は16万1435円(消費支出14万8445円+非消費支出1万2990円)で、毎月約3万円(2万9980円)の不足という結果でした。夫婦世帯の不足額(4万2434円)を1人あたりに換算すると2万1217円になるのに対し、単身世帯の不足額は約3万円。1人あたりで比べると、おひとりさまの方が家計の負担は重くなる傾向がうかがえます。この調査には、介護施設の入居費や大きな医療費といった臨時の支出は含まれていないため、実際に必要となる備えはこれ以上に膨らむ可能性がある点にも注意が必要です。

60歳代以降は貯蓄を取り崩す段階に入るからこそ、資産寿命をどう延ばすかが重要な課題になります。

3. 筆者からのコメント

菅原 美優
60歳代以降は、これまで積み立ててきた資産を「取り崩していく」局面に入ります。

ここで見落とされがちなのが、2024年からの新NISA制度では非課税保有期間が無期限化され、退職後も非課税のまま運用を続けながら、必要な分だけを取り崩していく選択肢が広がったという点です。

一括で解約する必要はなく、生活費に足りない分だけを少しずつ引き出せば、残りの資産は非課税のまま運用を続けられます。iDeCoも受け取り開始時期を70歳代まで先延ばしできるため、公的年金とのタイミングをずらして受け取ることも選択肢に入ります。

おひとりさまの場合、取り崩しのペースを誰かと相談しにくい分、早めに「毎月いくらまでなら取り崩せるか」の目安を決めておくと、老後の家計管理がぐっと楽になります。

4. まとめ:他人との比較ではなく、自身の現状把握から始めよう

本記事では、30歳代~60歳代のおひとりさま世帯の平均貯蓄額について確認していきました。

今回紹介したデータは、あくまでご自身の客観的な立ち位置を知るための、一つの「参考値」を示すものにすぎません。

ご自身のライフスタイルに合った資産と負債のバランスを整えることが、将来への家計の安定や老後の安心感につながります。

たとえば、貯蓄は多くてもまだ多額の住宅ローン返済などが残っている方と、手元の預貯金は少なくてもローンをすでに完済している方とでは、実際の資産状況の意味合いは大きく異なります。

だからこそ、「負債」と「総資産」のバランスを鑑みて、総合的な視点で見ていくことが大切になります。

まずは、預貯金だけでなくローンなどの負債も含めて、今の家計の現状確認をすることから始めてみてはいかがでしょうか。

そこからそれぞれのライフスタイルに合った無理のない資産形成の形を、ご自身のペースで少しずつ見つけていきましょう。

熊谷 良子

今回とりあげた数字を見て、「自分は平均より少ない」と落ち込む必要はありません。

本記事で見てきたように、平均値はごく一部の資産を多く持つ層によって大きく押し上げられており、実際にはどの年代でも中央値の方が多くの方の実感に近い数字です。中央値前後、あるいはそれ以下であっても、それは特別なことではなく、同じ年代の多くの方が置かれている状況とそう変わりません。

大切なのは、平均という一つの数字に振り回されることではなく、資産と負債の両面からご自身の家計を見て、無理のないペースで備えを進めていくことです。 

参考資料

菅原 美優