5. 葬儀費用が必要な場合は「預貯金の払戻し制度」を活用しよう
入院費の精算や葬儀費用の支払いなど、どうしても故人のお金が必要な場合は、2019年7月に創設された「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」を利用しましょう。相続人全員の同意がなくても、法律で定められた範囲内で引き出すことが可能です。

払戻しできる金額は以下の計算式で算出されます。
相続開始時の預金額 × 3分の1 × 払戻しを受ける相続人の法定相続分(1金融機関あたり上限150万円)
(例)預金額600万円、相続人が子ども2人の場合
600万円 × 1/3 × 1/2 = 最大100万円まで引き出し可能
手続きには一般的に以下の書類が必要です。
- 被相続人(故人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 手続きを行う相続人の印鑑証明書と実印
「手続きが面倒」と感じるかもしれませんが、この一手間が「引き出せる」と「引き出してよい」の境界線です。多少の手間でも正式な手順を踏むことで、借金の相続や親族間のトラブルという大きなリスクを回避できます。
6. まとめ
大切な家族を亡くした直後に、冷静にお金の話を考えるのは容易ではありません。
それでも「とりあえず引き出しておこう」という判断が、相続放棄の選択肢を失わせたり、親族間に取り返しのつかない亀裂を生んだりするきっかけになることがあります。
まずは、この2点から始めてみてください。
- 郵便物・メール・スマートフォンのアプリを確認し、故人が利用していた金融サービスの全体像を把握する(ネット銀行や仮想通貨など、デジタル資産も調査の対象に含める)
- 当面の費用が必要な場合は、自己判断でATMから引き出すのではなく、銀行窓口で「払戻し制度」の活用を相談する
相続の手続きは、一つひとつ丁寧に進めていくことが、結果としてご家族全員を守ることにつながります。
参考資料
和田 直子