2028年4月から、遺族厚生年金の仕組みが見直される予定です。遺族年金は、家族に万が一のことがあったときの生活を支える公的年金ですが、普段から詳しく確認している方は多くないかもしれません。
今回の見直しでは、特に「子どもがいない配偶者」が受け取る遺族厚生年金の扱いが変わります。一方で、すでに受給している方や、子どもを養育している期間の給付については変更はありません。
「遺族厚生年金が5年で終わる」という言葉だけを見ると不安になりますが、対象者や経過措置、継続給付の仕組みを分けて見ることが大切です。そこで今回の記事では、遺族厚生年金の見直しについて、押さえておくべきポイントを整理します。
1. 遺族厚生年金とは?まず押さえたい基本
遺族年金とは、厚生年金や国民年金に加入する方が亡くなった場合、要件を満たしていれば、その遺族の方が受け取ることができる年金のことです。
とくに遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している方などが亡くなったとき、一定の要件を満たす遺族が受け取れる年金です。会社員や公務員など、厚生年金に加入する方がいる家庭に関係する制度と考えるとわかりやすいでしょう。
遺族年金には、大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。遺族基礎年金は主に子どものいる配偶者や子どもを支える制度で、遺族厚生年金は厚生年金に加入していた方の死亡に関連する給付です。
2. 2028年4月の見直しで何が変わるのか
今回の見直しの中心は、18歳年度末までの子どもがいない配偶者の遺族厚生年金です。
これまで男女で扱いに差があった部分を見直し、一定の年齢層については、原則として5年間の有期給付にそろえる方向です。
大きく整理すると、次のようになります。
- 子どもがいない60歳未満の配偶者:原則5年間の有期給付
- 子どもがいない60歳以上の配偶者:現行どおり無期給付
- 18歳年度末までの子どもがいる方:子どもが18歳年度末(※)になるまでは現行どおり
- すでに遺族厚生年金を受給している方:今回の見直しの影響は受けない
※または障害の状態にある場合は20歳未満の方
現行の制度では、子どものいない若い夫は遺族厚生年金を受け取りにくい仕組みでしたが、見直し後は、60歳未満でも5年間の有期給付を受けられる対象になります。
一方、女性については、施行直後からすべての年代が一斉に変わるわけではありません。2028年度末時点で40歳未満の女性が、まず有期給付の対象になります。
30代女性の一部に影響が出る一方、2028年度に40歳以上になる女性は、今回の見直しによる影響を受けないとされています。
3. 影響を受けにくい人・当面変わらない人
制度改正と聞くと、「いま受け取っている年金が減るのでは」と不安に感じる方もいます。
しかし、次に挙げる方は、今回の見直しによる影響を受けない、または当面は現行どおりとされています。
- すでに遺族厚生年金を受給している方
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
- 18歳年度末までの子どもを養育している方
- 2028年度に40歳以上になる女性
子どもがいる世帯については、子どもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じ扱いです。
見直しの対象かどうかは、「亡くなった時点の年齢」「子どもの有無」「受給権が発生する時期」で変わるため、単純に年齢だけで判断しないようにしましょう。
4. 5年で終わるとは限らない?有期給付と継続給付
有期給付の対象になると、遺族厚生年金は原則5年間の給付になります。ただし、5年間だけに短くなる代わりに、有期給付加算が上乗せされ、受給額は現在の遺族厚生年金額の約1.3倍になる予定です。
また、5年経過後に必ず給付が打ち切られるわけではありません。
障害年金の受給権がある方や、収入が十分でない方には、一定の条件のもとで「継続給付」が用意されます。収入が増えると給付額は調整され、一定水準(概ね月額20~30万円)を超えると支給停止となる見込みです。
このように、継続給付は誰でも自動的に受け取れるものではありません。将来の働き方や収入、家計状況によって受給できるかどうかが変わるため、公的年金だけで生活設計を組むのではなく、預貯金、生命保険、就労収入なども含めて備える必要があります。
5. 子どもがいる世帯はどうなる?
子どもがいる世帯については、今回の見直しで支援が一律に削られるわけではありません。18歳年度末までの子どもがいる場合、その子どもが18歳年度末になるまでの給付内容は現行どおりです。
さらに、子どもが18歳年度末を迎えた後も、そこから5年間は増額された有期給付や継続給付の対象になります。子育てが終わった直後に家計が急変しないよう、一定の移行期間が設けられています。
また、遺族基礎年金の子どもに関する加算額は、年間約23.5万円から約28万円へ引き上げられる予定です。
子育て世帯に対しては、むしろ支援を厚くする方向も含まれています。
6. 見直しを踏まえて確認しておきたいこと
今回の記事では、遺族厚生年金の見直しについて、抑えておくべきポイントを整理しました。
遺族厚生年金の見直しについて、次の3点は確認しておきましょう。
- 自分や配偶者が厚生年金に加入しているか
- 万が一のとき、子どもの年齢が制度上どう扱われるか
- 遺族年金だけで生活費をまかなえるか
公的年金は大切なセーフティネットですが、生活費のすべてを補えるとは限りません。住宅ローン、教育費、老後資金、生命保険の保障額なども含めて、家計全体で確認しておくことが重要です。
今回の見直しは、男女差を解消して、子育て世帯や生活再建が必要な方への支援を組み替える内容です。ただし、制度の細かい要件は個別事情によって判断が分かれます。
不安がある場合は、年金事務所などに確認しておくと安心です。