4. 口座凍結前の預金引き出しが招く3つのリスク

相続財産の全体像が見えてきたところで、もう一つ必ず知っておいていただきたいことがあります。

銀行に死亡の事実を伝える前に、故人の預金を引き出してしまうことの危険性です。

「キャッシュカードと暗証番号は知っているし、葬儀費用も必要だから」と考える方もいるかもしれません。しかし「物理的に引き出せる」ことと「法的に引き出してよい」ことは、まったく別の話です。

まず確認しておきたいのが、口座が凍結されるタイミングです。「役所に死亡届を出すと自動的に凍結される」と思っている方も多いのですが、そうではありません。

凍結されるのは金融機関が名義人の死亡を把握した時点。現状、役所と金融機関の間で死亡情報が自動連携される仕組みはなく、このタイムラグによって物理的には引き出せる状況が生まれます。

では、なぜ引き出してしまうことが問題なのでしょうか。主に3つのリスクがあります。

  • 借金も含めて相続することになる可能性:故人の口座から預金を引き出す行為は、法的に「単純承認」と解釈されることがあります。単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産(負債)もすべて引き継ぐという意思表示とみなされること。後から多額の借金が発覚しても、相続放棄が認められなくなる可能性が高くなります。「親に借金はないはず」と思っていても、誰にも打ち明けられなかった負債が後から出てきた、というケースは珍しくありません
  • 他の相続人から「使い込み」を疑われる:ATMの取引記録は長期間保存されます。葬儀費用に充てたとしても、領収書などで使途を証明できなければ、他の相続人との間で深刻なトラブルに発展しかねません
  • 相続税の税務調査で厳しく見られる:亡くなる直前・直後の高額な出金は、税務調査で特に注目される項目です。生前贈与の加算期間が「死亡前3年」から「死亡前7年」に延長されたこともあり、資金の動きは以前よりも厳格にチェックされるようになっています